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【PT日記】矢状面の崩壊は前額面として代償される

変形性膝関節症の方や股関節疾患の方々は、左右に揺れるような歩容を呈します。デュシャンヌ様破行やトレンデレンブルグ破行などと表現されることもあります。

この左右の動揺は、前額面上で起こっているものですが、多くは矢状面上の機能不全の代償として起こってきています。

これを前額面上の問題として対応してしまうと、支離滅裂な運動指導になってしまいます。

例えば、中殿筋が弱いから鍛えようとか、内転筋が効いていないので鍛えようとかです。または、足の問題だからインソールで外側ウェッジを入れようとか内側ウェッジを入れようとかです。

どれも前額面の問題に前額面で対応してしまっていますね、、、。

脚長差などは前額面上にダイレクトに影響を与えますので、補高は必須ですが、それ以外のことで前額面上の対応は大体的外れになります。

私達のロコモーションは前方移動です。横に移動するのが得意な蟹じゃありません、、、。基本的に前方に移動するように体はできています。左右に揺れるというのは、その前方推進の破綻を意味しています。

前方に推進するというのは、前に転がっていると言い換えることもできます。前に倒れている物体が左右にわざわざ揺れるというのは変ですね。左右に揺れるということは前に倒れていないということを意味します。

つまり後方重心で、止まっているように歩いているのです。

多くの原因は股関節の屈曲位保持が困難になっている場合です。もっと直接的にいうと腸腰筋が機能不全を起こしている状態です。

人は進化の中で股関節を伸展してきました。これはヒトの独壇場です。しかし、逆に伸展しすぎている人も出てきてしまいました。それが骨盤の前方偏位(sway back)です。こうなると腸腰筋は引き伸ばされ、収縮が困難になってしまいます。

股関節の伸展は、同時に股関節外転、外旋を連鎖として起こします。つまり、矢状面上の問題が前額面上に影響を起こすということです。

Sway backは矢状面上ですが、結果的に股関節の外転という前額面上の問題として表出するのです。O脚の方の膝が開いているのは概ねこのメカニズムです。

海外ではO脚が少なく、日本では多いのは、日本では骨盤後傾姿勢が多いからです。

姿勢制御の中での股関節の屈伸制御は、内外転や内外旋に比べて優先順位が圧倒的に高いと思っています。多くの機能低下が先祖返りを呈していることを考えると、我々の祖先はおそらく左右に揺れて歩き始めたのでしょう。

そこから、いかに効率よく前方移動を可能にするかといった時に、現在の我々の特徴である腰椎の前弯股関節の伸展、母趾の発達と他の指の退化、足のアーチの形成、前捻角の増大、頚体角の増大、体幹の回旋、腰椎の可動性の向上、頭位の垂直化などを成し遂げてきたのだと思います。

つまり前方へ推進するような機能を追加してきたということです。だから前方推進機能が低下すると、非効率的な先祖返り状態(骨盤後傾、円背、O脚、扁平足など)になってしまうのです。そして、それが先祖返りした左右に揺れる歩容なのです。

ちなみに、前方推進機能の追加と同じく、左右同様の減少化も重要で、それが、骨盤の左右への動揺、つまりは腰椎の側屈機能、股関節の内転機能です。頭部を左右に振らなくてもいいように、腰で干渉するメカニズムです。

特に腰椎前弯、股関節の伸展とその制御に関わる腸腰筋が、歩行の要なのです。矢状面で大きな役割を担っています。この機能低下が代償としての前額面に現れたものが多くの前額面上の障害と考えるととってもスッキリするのです。

対症療法の蔓延する中で、予防運動や比較解剖学の視点から、もっとシンプルに評価ができ、的確な運動療法が広まることを願っています。



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