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北欧的価値観?「ヤンテの掟」とは

先日、同じ街に住むシンガポール人ママ(Cさん)とこんな会話をしました。

私:うちの長男、地元のサッカークラブに入ってるんだけど、彼がスタンドプレーっぽいことしたらチームメイトからえらくひんしゅくかったみたい。なんかノルウェーってチームプレーを大事にするよね。

Cさん:北欧では、自分だけ目立とうとしたり活躍したがるのはNGなんだよ。ほら、「Law of Jante」って言葉があるじゃない。冬季オリンピックのドキュメンタリー見たんだけど、個人戦であってもノルウェー選手は個人よりチームを重視してたの。試合で自分がスキー滑った後、すぐにチームに電話かけてコースのコンディションを伝え、彼らが自分よりいいタイムで滑れるようにアドバイスしてたんだよ。ライバルのはずなのにね。だからノルウェーはメダルもたくさん取れたんだよ。

この時まで、Law of Jante が何かを知らなかった私。
夫に聞くと、「ああ、それ、ヤンテの掟だよ。職場でもすごく感じるよ。平等主義が徹底してるからね」と。

「ヤンテの掟」とは

1930年代にデンマーク(のちにノルウェーに移住)の作家アクセル・サンデモーセが書いた小説に由来した言葉で、作中に出る架空の村に存在する10戒のこと。その内容から、平等を強調し、個人の実績や際立った行動を避けるような非公式な社会的規範や態度を指すのだそうです。

ヤンテの掟(Janteloven)
Wikipediaより

「ヤンテの掟」をどう思う?

これを眺めて私が感じたのは、「出る杭は打たれる」の言葉と、同調圧力。なんか日本と似てませんか。

自己肯定感だとか「個」を大切に、といった最近の風潮の逆をいく価値観なので、私的には正直かなり違和感でした。北欧の人、しんどそうだな、と。

一方で、この価値観が根底にあるから「幸福度」の高い平等社会が実現する、といった見方も多いようです。謙虚さと調和を大事にするので、争いは少なくなります。実際、夫の会社内でも、表立った意見のぶつかり合いはほぼ見られないらしいし、波を立てそうな対立意見を言う人も少ない。
(でもそれなら、日本人の幸福度がそんなに高くないのはなぜ?平等意識が社会制度として中途半場なのでしょうか。)

(こちらの記事でもノルウェーのビジネス・カルチャーに少し触れてますhttps://note.com/naotannote/n/nd91c1a61238b

私自身、目立つのが嫌で自己主張が苦手タイプなので、メンタルは日本社会よりなのですが、シンガポールでずっとアメリカの会社で働いていたせいか、価値観はアメリカより。「ヤンテの掟」はアメリカのごりごり資本主義マインドの逆をいくので、自分は違和感を感じるのだろうと思います。

冒頭での会話の続きですが、シンガポール出身のCさんが
「日本も北欧と似てるの?私はちょっと理解できないのよね。知ってるだろうけどシンガポール人は自己主張強いから。人よりも優れていたくてみんな必死でしょ」と。

そうそう、シンガポールでは、人よりも得をしたい!出し抜きたい!という「キアス」気質が有名。競争社会を勝ち残るためのマインドなのかもしれませんが、アグレッシブなのです。

北欧の国でも、「ヤンテの掟」的社会規範への批判はあるようです。個の能力と自由を抑圧するのではなく、個を尊重する価値観にアップデートしようとする動きが見られるとか。

北欧の「ヤンテの掟」的な社会規範がどのように生まれ、どんな背景で強化されて、どう社会に反映されているのか、もっと理解していきたいなと思います。
数年住んだら、私の価値観もまた揺り戻しがくるのかな。

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