ノルウェー、電動スクーターと共存する街
ノルウェーに来て印象的だったことのひとつ。
街で電動スクーターをよく見かけること。
スタバンゲルは一日観光するのにちょうどよい大きさで、港からタウンを散策し、ショッピングや飲食するくらいであれば徒歩でも可能。でも、坂が多い街でもあり、ちょっと入り組んだ通りを長く歩く場合、スクーターという選択肢があるのはすごく便利。観光客が利用している姿もよく見かけます。
電動スクーターに優しい街?
基本怖がりな私は、電動スクーター絶対乗りたい!派ではないのですが、ここではスクーター乗れなかったら生活できないよ、という夫の(嘘の)アドバイスを受け恐る恐るトライしました。
私用したのはシェア電動スクーター。まずは主要な数社のアプリをダウンロード。電動スクーターは、観光客が歩いていそうな道路わきや駐輪所で簡単に見つかります。家族4人なので数台必要な時もありますが、グループライド機能があり、1アカウントで複数借りることも可能です。
実際に乗ってみると、親指で操作するアクセルの力加減さえ気を付ければ、ゆっくりと安定して進むことも、スピード感を楽しむこともできます。歩行者と車に絶対に気を付けよう、という気合のもとで運転します。
スクーターを運転して驚いたのが、自動車がすごく気を使ってくれること。基本、歩行者にめちゃくちゃ優しいノルウェーの道路事情ですが、電動スクーターにも優しいとは。すれ違う際にスピードを緩めてくれるのはもちろん、曲がりたいそぶりを見せると、止まって待っていてくれます。待つのはこっちの方じゃないんだ、とびっくり。
電動スクーターって、自動車から見るとちょっと迷惑な存在ではと思っていたのですが、こちらはスクーターにも寛容な様子です。
電動スクーター、熾烈なスタートアップ間競争
次に印象的だったのが、ノルウェーでもシェアスクーター間でのシェア争いが激しそうだということ。シェアスクーターが何種類かあるなかで、どれを使えばいいんだ?と初心者はまず悩みます。使いたいときに一番近くにあるスクーターを使えるよう、複数のアプリを結局使用することになると思いますが。競争原理が働いて価格や性能が良くなるのはいいけど、使う側はちょっと管理が大変かも。
スタバンゲルでよく見かけるのはスタートアップ3社のスクーター。↓
Ryde : ノルウェー・オスロが本社のスタートアップ。自国が本拠地のせいか、台数的に一番よく見かけるし、実際に乗ってみると石畳でもクッションが効いて安定して走れました。
TIER : ドイツ・ベルリンが本社。ソフトバンクのビジョンファンドやゴールドマン・サックスの投資を受けている欧州のビッグプレイヤー。ヨーロッパの観光客は利用しやすいかも。
voi : お隣、スェーデンに本社があるユニコーン企業。AIを使ったテクノロジーを積極的に活用しているそう。
シェアエコノミーでも、ライド系(タクシー、自転車、スクーター)の競争は熾烈。マーケットシェアの取り合いで消耗戦になる例は世界中どこでも見られるけれど、ノルウェーも例外ではなさそうです。
ノルウェーのように、車社会と平和に共存できていれば伸びしろありそうですが、長くて寒い冬にどれだけ需要があるのかな、と思わないでもありません。電気バッテリーや耐用年数が環境に負荷がかからないかも気になるところ。どこのスタートアップが勝ち抜いていくか、もですが、業界としての持続性も今後の展開を見ていきたいところです。
電動スクーターへの規制でどう変わるのか
ノルウェーは電動スクーターと共存できている印象はあるのですが、問題がないわけではありません。接触事故は起きているし、歩道を共有する歩行者にとって危険であることに間違いありません。そんな背景もあり、ついに政府の規制が今年6月に導入されました。
アルコール摂取後の運転は禁止となり、違反者は自動車免許が停止され罰金が課されます。12歳未満の利用は禁止で、15歳未満はヘルメット着用義務が課されました。また、保険の加入も義務化されます。
一方、歩行者用道路での使用は引き続き許可されています。
政府の規制といって思い出すのはシンガポールの電動スクーター事情。シンガポールでも2018年ごろだったでしょうか、一時期電動スクーターが人気となり、利用者が増えました。特にGrabFood やFoodPandaなど、フードデリバリーの配達では重宝されました。
しかし、交通事故が増えたこと、スクーターの発火事故などが続き、安全性の危険から2019年、電動スクーターは全面禁止となりました。シンガポールは日本と比べるとスタートアップの挑戦に寛容な社会ではありますが、政府の判断が早くて厳しいのも特徴。シンガポール社会とはうまく共存できなかったのです。
人口でいえばほぼ同じ規模のノルウェー。運転マナーが良いという長所があり、そこが他国と違うところでもあります。規制の厳しさによって業界の勢いは変わってくると思うので、政府、業界のプレイヤー、利用者、それぞれの対応と変化が今後のキーとなりそうです。
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