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文章はあきらめた方が上手くいく

「まずあきらめることによってどうにか筆がすべりはじめるのだ」

小説家の島尾敏雄がこんな言葉を残している。

原稿を書こうとしても良いアイデアが出てこないので、なかなか書き進められない。けれども、良い物を書こうとしないで、あきらめた方が書けるようになる、という話だ。

矛盾するような話だが、これはすごく身に覚えがある。

良い原稿を書きたいと力めば力むほど、1行目から前に進まないし、やっと進んでもあまり良い感じにならない。机の上で、散歩しながら、風呂の中で、考え続けても、名案は出ない。

しかし、ついに〆切が迫ってきて、「大したアイデアも浮かばないけど、俺なんて所詮そんなもん。とりあえずありふれた感じで書いてみるか…」とあきらめる。才能のかけらも見えない、ありふれた文章を連ねていく。

すると、意外なことに、書き出しや構成に関しても良いアイデアが生まれることが多いのだ。

考えてみると、これは理にかなった話だ。よほどの天才でない限り、最初から名案が浮かぶことなんてまずない。しかし、書いてみることで、これも違うあれも違う今度は良さそうだがやっぱり違う、と思考をグルグル回転させていると、いくらかマシな発想がふっと浮かんでくる。

しかし、名文を書こうとすると、この書くことによる思考のサイクルになかなか入れない。だから良い案も浮かばず無為な時間を過ごす…という悪循環に陥ってしまうのだろう。

明日からも名文をあきらめていこう。

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