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書き出しのネタは、ありふれた生活の中にこそ埋もれている【今日のつかまれたつかみ #4】

毎回、何を書こうか迷ってしまう文章のつかみ(=書き出し)。

「今日のつかまれたつかみ」では、私(ライター杉山)が心をつかまれた事例を通じて、つかみ・書き出しを発想するヒントをお伝えします。

今日の事例は、2つあります。

まずは、大塚たくまさんの
「バスマジックリン最大のタブー「実はこすってる」問題を花王に聞いてみた」。以下をご覧ください。

お風呂にバスマジックリンを噴射し、ゴシゴシこする。お風呂掃除って面倒くさいですよね。浴槽にお風呂掃除機能がついたお風呂とか開発されないのかな。

そういえば、バスマジックリンって「泡の力でこすらず落とす」って謳っているな。でも、みんなこすっているんじゃないの?

『となりのカインズ 』 「バスマジックリン最大のタブー「実はこすってる」問題を花王に聞いてみた」大塚たくま

確かに、バスマジックリン、「こすらず落とす」と分かっていても、こすっちゃうんだよなぁ…。バリバリこすっている派の私は、この5行のつかみを読んで、記事に引き込まれてしまいました。

「こすらず」のネタは、疑問を解消するためにメーカーへの取材が必要なので、個人のnoteやブログには向きませんが、
掃除や洗濯、料理など「家事のあるあるネタ」は老若男女に共通しているので、多くの人の心をつかみやすいですよね。

以下の北大路公子さんの「よねー予想」のネタも、「家事のあるある」といっても良いかもしれません。

 数年前から我が家で繰り広げられている「次に何が壊れるか選手権」が、いよいよ混沌としてきた。これは文字通り「家の中で次に壊れそうな物」を予想する大会で、開催地は例によって私の脳内だ。
 きっかけは立て続けに起きた家電の故障である。むろん、それ自体は仕方のないことだ。時は流れ、人は歳を取り、万物は流転する。物は古くなり、やがて壊れ、販売店に問い合わせると、電話の向こうで顔も知らぬ相手が切々と諸行無常を説いてくるのが常だ。曰く、
「部品はもう製造中止になっちゃってるんですよねー」
 この「よねー」が切ない。物が壊れるのはいいとして、こんな無慈悲な「よねー」があろうかと思うのだ。

「よねー予想」(『ベスト・エッセイ2021』収録)北大路公子/光村図書出版

こちらも誰でも一度は経験のあるネタですよね。この後、何が壊れるのか、無慈悲な「よねー」が繰り返されるのかが気になり、ついつい読み進めてしまいました。

「製造中止で腹が立った」というのではなく、選手権にしたり「よねー」に目をつけたりして、面白いエッセイに仕立てているのが上手いですね。

この2つのネタに共通しているのは、ありふれた日常のネタであること。誰でも見つけようと思えば見つけられるんですよね。

書き出しや文章のネタに困ったら、自分の家の中を見回してみると、良いネタが見つかるかもしれません。


※このつかみはライターの竹中唯さんから教えてもらいました。ありがとうございます!

※なぜ「今日のつかまれたつかみ」を始めたのかは、以下の経緯をどうぞ。

※その他の「つかみ」の話は、拙著『文章は「つかみ」で9割決まる』にもありますので、よかったらご覧ください。




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