見出し画像

【2016松本山雅】5月後半の振り返り(13節 vs讃岐〜15節 vs金沢)

 ご覧頂きましてありがとうございます。13節讃岐戦〜前節金沢戦までの山雅の戦いぶりを振り返ってみましょう。概ねなかなか良くなってきたのではないでしょうか。

●1点が取れなかった13節讃岐戦

 ヴェルディ戦で攻守に目処が立ったかと思ったが、やはりJ2は甘くはない。サンフレ界隈で言うところの「安い失点未満」のビルドアップミスもあったし、讃岐はビルドアップミスを執拗に狙っていた。
但し、それ以外で守備を崩された場面は少なく、凱旋試合となった木島兄弟にもあまりいいところを出させなかった。決定機に身体を張る守備もできてる。
相手ボールになったときの守備への切り替え(ネガティブトランジション)も概ね良好。守備はいよいよ計算できるレベルに達した印象。

 1点を取れず引き分けにはなったが、基本的にチャンスは作れてはいる。但し、しっかりリトリート守備を構築されて守られると、崩し切る力は今ひとつ足らないか。
長いリーグ戦、どうしても攻撃が噛み合わない試合はある。こういう試合で勝ち切る力はつけたい。
あと、本来アタッカー陣が交代出場しなければいけない終盤に鐡戸裕史が出るというのは、ちょっとアタッカー陣にとっては危機感を持つべきところでは。

 なお、主審のジャッジが物議を醸したが、以前からソリさんが言うように「年間を通せばジャッジによる利益不利益は50-50」。向上は願いたいがこんなときもあると考えるべき。



*****

●予想通りのウノゼロ…サイドチェンジで崩した14節町田戦

 町田の442をどう壊すのか。それに対する山雅の回答は「正確なサイドチェンジによる大きな揺さぶりからの崩し」
その作戦をしっかり遂行する力が、今の山雅には付いてきた。

 この「正確なサイドチェンジによる大きな揺さぶり」は、442でかつボールサイドに選手を集めて小さく守る町田にとっては、何度も何度も逆サイドへの守備ゾーンのスライドが必要になり、結果として、スライドで脚を使わせるので、消耗を誘える。

 讃岐戦まではちょっとした守備の寄せなどに淡白さも見られたが、守備が整わないときに守備に戻る時間を稼ぐ寄せ(しかも余計なファウルをしない)も、かなり出来てきている。
相手のキープレイヤー(この試合だとSHの鈴木崇文と谷澤達也)に気持よくプレイさせない厳しい守備もあり、相手にサッカーをさせない時間を長く作れていたのでは。

●攻撃の連動性向上中

 攻撃の連動性が増した印象がある。勿論ヴェルディ戦でも連動はしていたが、讃岐戦では、チャンスは作っても相手守備を崩しきれてはいなかった。
ただこの日は、左ワイドで石原が突破すれば山本がランニングコースを工夫して相手守備を釣り、石原が使うスペースを開けようとしたりとか、積極的かつ工夫されたフリーラン・パス&ゴーで相手守備の混乱を誘っていた。

●CKからの流れで崩しきる

 後半の先取点は鮮やか。CKが二転三転しながらもマイボールになり、その間に相手のCK守備のマンマークが左右(ニアとファー)の揺さぶりでずれてくるところを、工藤浩平が見逃さなかった
ファーにクロス。フリーになっていたのは飯田真輝。GKの逆を突くヘッド。もうお見事としか言いようが無い

 以前は選手の配置の工夫や、CKが蹴られた瞬間の相手守備やGKのミスマッチを狙っていたが、最近はショートコーナー含めて「崩す」ことも意識できてる。

 2014年と比べてもJ2は攻守ともにレベルは上がり、CK守備もゾーンあり、マンツーあり。守備のいいチームも多い。
そんな中でどう点を取るか。J1含めても有数のCKバリエーションを持つ山雅だけに、均衡した試合はCKやFKから取り切りたい。

●懸念解消に向かう飯尾竜太朗と山本大貴

 前半終了間際(多分)に石原が傷み、後半アタマから(飯尾)竜太朗を入れたが、ヴェルディ戦で見えた懸念は思った以上に改善している様子。
ミスも少ないし、ぼやっとしないで攻守に絡めてきてる
ただ、この後の金沢戦含めて、稀に抜けたプレイがあるのは少し気になる。あともう少し。

 あと、震災以降元気がない山本だが、この試合を精査する限りにおいては、黒子として攻守に丁寧な仕事ができてる印象。
フリーランはサボらないし、周囲へのサポートもいい。あとはきっかけだけ。

●小さなこともコツコツと

 勿論、気になるところもあった。時折小さなことを怠る姿。相手陣から守備をしてDF相手にいい追い方ができてるのに、例えば山本が「予測できたはずのDFの縦フィードコースを切り損ねる」とか。
後半の決定機も、今まで何度も見た「あっさり守備」。攻守に粘って欲しい。
クロスを簡単には上げさせない、ヘディングでいいジャンプをさせずに防ぐ等、90分しっかり粘りたい

追試は合格

 ゲームプラン通りに町田を崩せたし、町田の崩し方をあまり許さず、ろくにサッカーをさせなかった。
セレッソ戦で攻めきれずに「あっさり守備」で失点して負け、「これは町田戦で追試」と感じたが、追試は合格。難しい相手に勝ち切ったことは、チーム全体の自信になるだろう。
 但し「あっさり守備」はこの試合も出た。そこは依然懸念材料である。

 今季の狙いである攻撃面が、ようやく血となり肉となってきたのでは。
ヴェルディ戦は正直相手に助けられた部分もあったが、讃岐戦の消化不良や課題を町田戦ではかなり解消できたように思う。この流れで「挑戦進化」したい。



*****

●雨の中しっかり勝ち切った15節金沢戦

 そんな中で迎えた金沢戦。ウィリアンスと竜太朗が先発起用。石原はどうやら負傷したようで、若干の心配と、若干の期待で見た。

 この試合でも大きなサイドチェンジは質良く行ってきた
J2他クラブに比べても山雅のサイドチェンジの質は高い
キャンプから崩しや縦パスを磨いてきたが、サイドチェンジもしっかり高いクオリティでこなせるようになってきた。「ヘタで売ってきた」山雅なのに(苦笑)。

 あと、最後に点に結びついたが、金沢の右サイド(山雅から見たら左サイド)は徹底して裏を狙っていた
ああいう徹底は、ソリさんがデザインしてても、選手がキッチリ遂行できなければ机上の話で終わってしまうものだが、サイドチェンジにしても、左狙いにしても、選手はしっかり遂行できていたと思う。

●最初はぎこちなかったが、攻守に貢献し先取点のきっかけになったウィリアンス

 最初5分10分は試合に入れてない印象だったウィリアンスだが、先取点では、今季の山雅の崩しを象徴するように、高い連動性から、隼磨がつくった前のスペースを使い、いいクロスを上げた。
これを高崎が落として最後は工藤浩平の冷静な個人技。切り返しでDFを外すフェイントは流石姉崎のマラドーナ
前節町田戦の前半終了間際と似たようなシーンだったが、今度はファーではなくニアをぶち抜いた。

 得点シーンが象徴的だったが、ウィリアンスは時間を追うごとに攻守に躍動した。
特に守備。「プレスバックで余計なハンドワークを使わない=ファウルを取られるような止め方をしない」守備は、昨季天皇杯で「追っかけては倒してファウルの山を築いた」姿とは真逆。それができればソリさんは使うということ。
攻撃面でも連動性は抜群に良かったし、スルーパス等でDFと五分五分の場面も抜け出し、マイボールにできる加速力もある。
試合勘なのか「そこは行ってもいいのに」という場面で若干消極さはあったが、本人も必死だったはず。山本や石原の影で完全に3番手だった男の台頭は非常に喜ばしい。

●時々やらかすも向上している飯尾竜太朗

 前半は丁寧なプレイで攻守に貢献。後半、フリーの場面で前方向にトラップすればシュートコースをつくれたところを内側にトラップして、シュートチャンスを活かせない場面や、ゴール前守備で「岩間の位置を把握できてなかった」が故に岩間と守備が重なって、フリーの選手をつくり決定機を作られた場面など、相変わらず落ち着かない一面も見せたが、多分それ以外は上出来。
ヴェルディ戦→町田戦→この試合と、クオリティは上がっている

 ひとつだけ気になったのは57分のファウル貰ったシーン。J1のワイドならもろにタックルされる前に軸足を抜いて衝撃を緩和する技術がある(例えば山岸智(広島→大分)とかはその辺が抜群に上手い)。いわゆる「ファウルを貰う技術」。
ケガの防止のためにも覚えてくれれば。
安藤や那須川のクオリティを考えるとレギュラー奪取にはまだという印象だが、3バックのワイドの選手は長いシーズンを考えると何枚も必要。期待したい。

●山本大貴渾身の一発

 ウィリアンスの台頭は山本にとっては大きな危機感になったはず。ラスト15分とはいえ、点を取る気は満々。それが結びついたのがAT突入直前の「左突破」
自慢のスピードでDFをぶっちぎって、GKとの1対1を股間抜きで制する。キャンプで再三練習していたサイドアタックが実を結んだ。
ゴール後の隼磨との抱擁にぐっと来たサポーターも多かったはず。

●山口戦に学んだ前田大然のいい仕事ぶり

 2点差のATに3人目の交代で大然が入る。山口戦では同じようなシーン(1点差)で「時間を消費するプレイをせず」同点の遠因となってしまっただけに、しっかりとクローズさせたい。
 勿論2点差なだけに「狙える場面は狙っていい」のだが、まずはしっかり相手コーナーで体幹の良さを活かしてキープする。
守備でも「余計なハンドワーク等をせずに」プレスバックする。いい仕事ぶりである。
その後の裏への抜け出しでは、勢い余って相手GKと接触するなど、まだまだ粗い部分はあるものの、ウィリアンス同様瞬発力は魅力であり、成長に期待している。



*****

●少し見えてくるのか「2016年型松本山雅」

 懸念の「あっさり守備」も金沢戦では露呈せず、しっかり90分戦い切った印象。
集中して粘れれば、そう簡単には失点しない守備になってきたと感じる。

 攻撃の連動性はときに唸るほどの良さが出ている。この先は当然ながら研究されるだろうし、特に攻撃の起点になる工藤や宮阪への守備はもっと厳しくなる
しかし、厳しい場面でも「90分の中で数回決定機をつくれる技術」をこのふたりは持っている

 いい連動性から、モノにできたチャンスを逃さず仕留める。粘る守備で相手に気持よくサッカーさせない。そういうサッカーが出来てくると、いよいよ待望の「2016年型山雅」が少し「見えた」と感じるのでは。

●再び中3日の3連戦

 ホーム2連戦を含んで、中3日、ミッドウィークありの3連戦
しかも、今季スタートダッシュ失敗も、もともとクオリティはある北九州、首位でもあり今J2で一番攻守のバランスがいい札幌、そして毎回難しい岡山アウェイ
GW3連戦並に厳しい相手に、どれだけのサッカーができるか。

 夏の気温に近くなった今、今季、躓きながらも培ってきた山雅の新しいクオリティを試す時である。勝利も求めたいが、まずは内容。
次々節で対戦する首位札幌とは6差だが、順位を焦る必要はない。ひとつひとつでいいクオリティを出せば、結果は付いてくるし、内容は良くなってきている。肝心なのは夏の過ごし方である。
「山雅の夏」に向けて、いい6月の入りを迎えたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?