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【2016松本山雅】2015年度経営情報速報値から見た昨季の山雅

 ご覧頂きましてありがとうございます。と、その前にたまにはうち(TGAスタジオ)でやっているサッカーラジオの宣伝を。

 山雅は勿論国内サッカーについて、「サッカー界のどうでもいい話」を、ときに『重点的に』、飲み屋ではなく、ラジオ(Podcast)上で「大っぴらに」「穏便に」扱う」、『斜め45度のサッカートーク番組(山雅率高め)』を、およそ月1ペースで制作しております。

 番組名は「フットボールchacha!」
MCは「信州在住・松本山雅FCを北信越リーグから熱烈応援も、ガンバ大阪他いろんなチームが気になる『ちゃーさん』(最近は田坂コーチ推し)」と、制作担当兼MCの私です。
よろしければお暇な時にでも。下記リンクが最新回です。リンク先の記事の中に再生ボタンがありますのでそちらから是非。
http://tga.jpn.org/2016/05/28/cha_48/

※今回60分強と長めですが、山雅トークは番組の45分ぐらいからです。
 
 以上宣伝でしたw
 
 
 さて、先日「速報値」ながらJリーグ各クラブ(3月決算クラブを除く)の経営情報が出ましたので、山雅について見てみましょう。
よく、「もっといい選手を獲得して」的な話はファンサポーターの話題として出るのですが、選手獲得の原資は予算であり人件費
知っておいて損はないので、酒の話で山雅を語る際等々の参考にして頂ければ幸いです。

 なお、山雅を含む昨季J1全クラブの営業収益(営収・売上高)と人件費は下記リンクに詳しいので是非ご覧くださいませ。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kawabataakihiko/20160527-00058148/

 ちなみに全クラブの詳細な経営情報については7月か8月くらいには出揃い、Jリーグ公式サイトで発表されます。ちなみに2014年はこちらのリンクから。
http://www.jleague.jp/aboutj/management/club-h26kaiji-j2.html

ここ数年間の推移を見せてくれるサイトがあるのでこちらも参考に。
http://footballgeist.com/team/%E6%9D%BE%E6%9C%AC%E5%B1%B1%E9%9B%85FC&id=keiei

 今年4月の決算発表を報じた信濃毎日新聞(信毎)の記事はこちら。
http://www.shinmai.co.jp/soccer/2016/04/post-1803.html

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●当初予算17億→営業収益21.5億

 J1初年度ということで、広告料金と入場券の大幅な値上げに踏み切り、2014年の11.8億から約5億upの17億という予算を組んで臨んだが、初のJ1ということでどの試合も大入り。入場券収入は大幅にupした。
その他、前述の広告料金、グッズ販売等も好調だった様子(この辺の詳細は夏にJリーグ公式サイトで公表される全クラブの経営情報で)。
ちなみに信毎の報道によれば純利益は2.74億

 ただ、人件費の使い方については堅く、J1実績の豊富な外国人選手・日本人選手の獲得は当初はなかった。
唯一の大物と言えるキム・ボギョンについても、夏移籍かつ、海外移籍が不調に終わり、実戦から遠ざかることを危惧した「代理人サイドからの売り込み」で、「当初から年末までの限定の契約」で安く抑えたというのがもっぱらの噂である。

 よって決算では「2.74億の黒字」
これを見ると「もっと人件費使えたじゃないか」という向きもあろうが、改めての確認で、現状山雅はこういうクラブであるというのを列挙しておきたい。

Jクラブとして4季目の昨季がJ1初年度、プロクラブとしての経験値に乏しい上に、フロントにJ1常連クラブのフロント出身者もいない→J1チームへのコネに乏しい
(ソリさんの人脈も新潟・湘南・北京五輪組&候補・オシム監督時のA代表コーチ時代の代表選手におよそ限られる)
クラブの歴史の中で、外国人選手が年間を通して活躍した実績がほぼない→有力選手を抱える海外エージェントとのコネや獲得予算が乏しい
(山雅加入以前に国内外で実績がある外国人選手で、山雅で年間を通して活躍できたのは昨季のオビナひとりである。)

昨季の山雅にとっては、これが精一杯だったのでは。

●利益は「時間が掛かるがとても必要な」育成に

 ちなみに信毎の報道によると神田社長は純利益について「育成環境の整備などクラブの成長につながる投資」に使うとのこと。
確かに今季、育成部門はコーチングスタッフを大幅にに入れ替え、OBやJのコーチ経験者を含む陣容に様変わりしている。スクールも積極拡充中だ。
山雅の育成部門についてはJ加入前からあるが、本格的に予算を掛け始めたのはJ参入後。今季は予算も本格的に増えた様子だが、育成には時間が掛かるものと認識したい。

 そこで育成組織の実例を見てみよう。京都は2006年から、以前からあった育成部門を「スカラーアスリートプロジェクト」として強化。今季に至るまで数多くのユース出身選手を輩出している。
http://www.sanga-fc.jp/youth/project/index/

 但し、よく知られた京都U18出身選手の宮吉拓実(現広島)がJデビュー&プロ契約したのは2008年久保裕也(現BSCヤングボーイズ)駒井善成(現浦和)のJデビューは2011年である。

 山雅U18からトップデビュー、そしてレギュラー定着まではまだまだ時間が掛かると考えたい。
今季やっと2種登録が3名出たが、彼らがプロ契約を勝ち取り、Jデビューして生き残れるかどうかはわからないので、長い目で見たい。

 ちなみに、最近Jのトップチームの登録条件に於いて、ユースに3年以上在籍した出身者はA契約25名に含まない条項が追加された(下記pdfファイルリンク)。
http://www.jfa.jp/about_jfa/report/PDF/k20141218_01.pdf

「自クラブの第3種又は第2種の育成組織のチームに3年以上在籍した選手は、同クラブのチームに在籍する場合、「25名枠」の対象外とする」
この条項をフル活用すれば、A契約25名枠外でユース出身者をフル活用可能になるので、積極的に活用したいところだ。

●人件費8億という意味

 一般論として「J1で安定して定着するための最低の人件費は10億」という目安はある。昨季のデータで言えばJ1の17クラブ(3月決算の柏を除く)中13クラブが10億を超えている。
山雅の8.2億は14位(実質は柏が上に来るので15位)。その下は甲府・湘南・山形。山形は山雅同様に降格し、甲府・湘南が今季苦しんでいるのはご存知の通り。

 それでも2014年に4.4億だったことを考えれば、経営努力で人件費に8億を出せるようになったことは評価すべきこと。
但し、J1定着を狙うならば人件費10億は狙っていきたいし、そのためには予算が20億以上(一般的なJ1チームの人件費は予算の40〜50%である)必要なので、営収の増加は不可欠と言える。
(近年検討されている山雅の新スタジアム構想は、まさにこの入場券収入増加による増益が目的のひとつである。)
力量や実績のある外国人選手や日本人選手の獲得には、ある程度の金銭やコネや時には運が必要であり(キム・ボギョンのケースはまさに運)、移籍ウィンドウが開いている時期に使える「先立つモノ」をしっかり用意するためにも、いろいろな努力で営収の増加を目指したいところだ。

●コンスタントに20億超える予算を組むためには

 2015年実績で、「J1」でかつ「アルウィンの観客動員が良ければ」「入場券収入は伸びる」ことが確認できた。
但し、2015年が「初J1」だったことを考えれば、次のJ1昇格で同様の入場券収入があると思ってはいけない。山雅初J1だからこそ「一度山雅を見てみたい」「相手の有名選手を見てみたい」と訪れた方も多かったはず。
そこは地味に新規、あるいはご無沙汰だった方々の観客動員を伸ばす工夫や戦略が必要で、今季行われている「キテミテアルウィン」企画のような、積極的な仕掛けによる新規観客の掘り起こしが必要と思う。

 加えて広告収入だが、最近アルウィンに来られた方はお気づきと思うが、最近はスタジアム内の広告だけではなく、入場ゲート、サウスゾーンの総合案内所や当日券売り場のゾーンなど、スタジアム外にも「アド(広告)ボード」がたくさん出現している
隣県のクラブであるヴァンフォーレ甲府のスタジアム内の二重三重と出されたアドボードのように、広告が掲示可能な全てのエリアにアドボードを出すことは、広告収入を得るためには重要で、営業サイドの努力には頭が下がる。

 ちなみにこれは余談だが、昨季末の「ドウグラスケース」(徳島に約3億の違約金収入があった)のような「違約金ビジネス」も将来的には考えたいところ。
但し、まずは足下を固めるのが先と考える。

 20億の予算まであと3億人件費10億まであと2億。そしてたとえ予算が20億に達しても「その上を見る」ならばさらなる営収が必要になる。
正直キリがない中ではあるものの、日々奮闘するフロントの皆さんにエールを送るとともに、ファンサポーターの皆様に於かれましては、ご自身でできる範囲で、山雅の営収に貢献して頂ければ幸いである。

 但し、フロントで働く職員の皆様が、人件費抑制のためにブラック企業の如く長時間労働を強いられるのではなく、相応の賃金と労働時間を得ることに、ご配慮頂ければと思う。
Jの一部クラブでは「ひとり何役とか当たり前」的な風潮が未だにある。
過日の愛媛FCの不祥事も、本来なら分業すべき仕事をひとりで抱え込んだことが背景にあったと聞く。
私もとあるモータースポーツのチームの広報を務めたことがあるが、チームが家賃と一部食費を補助してくれてても、営業廻り等々に労力が掛かり、賃金と労働時間は厳しいものであった。
それ故に、不祥事の防止は勿論、過労や労災の防止のためにも、相応の待遇をお願いしたい。

 幸い、山雅も着々と職員を増やしていると知る。6/1付の「オザレポ」では、松本商工会議所から山雅の営業担当に転職され方を紹介する一文があった。
http://www.matsuaz.biz/yamaga-fc/2016/06/01/1464763128043.html

 実力ある実務者の加入はとても大事で、こういう人事を可能にしたのも、年々身の丈経営で着実に成長してきた証といえる。

 選手ばかりではなく、フロントも少しづつ充実しつつある山雅。できればSNSのキメ細かな情報発信もお願いしたいところだが、まずは成長を見守っていきたい。

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