共感力の落とし穴
共感力の落とし穴
みなさん、こんにちは。カナダの心理士のナオトです。
今回は、子供の共感力のネガティブな影響についての研究を紹介しようと思います。
共感力のネガティブな影響と聞いて、なんだそれ、共感力って良いもんじゃないの?と思った方もおられるかと思います。で、それは基本合ってます。私たち人間はもともと社会的にも生物学的にも、他人と接して生きていくようにできているので、他の人の気持ちを察したり、痛みを理解する共感力は必須な能力なわけです。
でも、私たちがこの社会で生きていく上で欠かせないこの共感力も、時と場合によっては、私たちの健康に悪影響を与えることがある、ということがこの研究により明らかにされました。
これはペンシルバニア州立大学で行われた研究なんですけど、この研究によると、両親がよく喧嘩をしている家庭環境で育った“共感力の高い子供”は、“共感力が高くない子供”に比べて、慢性的な体の炎症を起こしてしまう確率が上がるとのことです。
ちなみに、慢性的な体の炎症の度合いって色々な研究で使われるんですけど、それには理由があります。私たちが精神的にストレスを感じると、体がストレスホルモンを分泌して、それが体の炎症を引き起こします。なので、体の炎症の度合いをチェックすることによって、心のストレスの度合いをチェックできるんですね。ちなみに、慢性的な体の炎症は、短期的には大きな問題をあまり起こさないんですけど、長期的にみると、心疾患、2型糖尿病、免疫疾患、肥満、うつ病、不安障害などのいわゆる成人病に密接な関係があるとされています。
で、話を戻すと、親の喧嘩を目撃することは、まあどの子供にとってもストレスなんですけど、特に共感力が高い子供にとっては、心と体のダメージはかなり大きいということです。
まあ言われてしまえばそうですよね。共感力が高いからこそ、両親の怒りや悲しみを自分も体感し吸収してしまう。だからといって、そんな苦しみを癒してくれるはずの親は喧嘩で忙しいので、結局はその苦しみをひっそりと自分の心の中に溜め込んでしまう。そりゃあ、慢性的なストレスや炎症になってしまいますよね。しかも子供の時に発症したこの慢性炎症体質は、親元を離れたからといってすぐに回復するものではなく、大人になってからも成人病という形で悩まされることが多いです。
なんだかやるせないですよね。おもいやりがあるとか、人の痛みがわかるということは、その子に授けられた素晴らしい贈り物なはずです。でも、この素晴らしい贈り物も、両親の言動によっては、その子の苦しみの種になるというのは、なかなか悲しい現実ですよね。
ということで、今回は“共感力の落とし穴”というテーマで少し話をさせていただきました。感想・質問等があれば、ご連絡ください。
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