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最近の出会い/『CURE キュア』『エロティシズム』ほか

コロナの影響でまだまだ家に閉じこもる時間が多い中、本格的な梅雨入りも合わさって一人時間が増え続けてる。一人で過ごす時間が多いと、自然と映画と本に向き合う時間が増える。

特に印象に残ったものを書き留める。

【映画】『CURE キュア』黒沢清

以前『ミッドサマー』アリ・アスター監督のインタビューを聞いた時に、影響を受けた日本人監督の中に黒沢清さんの名前が挙がっていて、今までほとんど観ていなかったことに気づき選んだ作品。

役所広司さん演じる刑事が、街で次々に起こる不可解な殺人事件を追い、すべての事件の裏にいる一人の青年と出会うサスペンス。

ロングショットの長回しで殺人を切り取るシークエンスなんかは本当に痺れた。青年が催眠術を使って殺人を教唆しているのがこの映画の肝になるのだけれど、この青年の得体の知れない不穏さに終始心を持っていかれる。ヨルゴス・ランティモス監督『聖なる鹿殺し』で、バリー・コーガンが正体不明の青年を演じていたが、それと近しい作風を感じた。ランティモスもこの作品を観たのだろうか。

【映画】『南極料理人』 沖田修一 

沖田修一監督の作品はいつも疲れた時に観る。心地いい映像とセリフのテンポ、ストーリーテリングばかりをしないで要所要所で外した表現を入れてくれる独特の緩さ、他の監督には創れない世界がいつも展開されるから。


『南極料理人』はタイトルの通り、料理人を主人公にした映画。南極で調査を行う南極観測隊の料理人の毎日を描いている。

この映画、最後のカットが本当に素敵すぎて、そこを観るためだけに何度でもリピートしたくなる。食べることが人の心と体をつくるということを程よい感動と小さな笑いで教えてくれる優しい映画。『遊星からの物体X』と一緒に観るのもオススメ。

【映画】『その男、凶暴につき』北野武

この前90年代に発売された「SWITCH」を神保町で買った。その特集が『北野武の映画術』。デビュー作をずっと観たいと思ってたけど、近所のTSUTAYAはずっとレンタル中(盗難された?)だったのでAmazonで購入してしまった。

もうデビュー作から最高。北野監督の映画が好きな理由は「役者が無駄なセリフをべらべらと喋らない」「カットとカットの編集で見せる映画らしい表現で魅せてくれる」から。いつも思うけど、ロベール・ブレッソンとかと同じ感じがする。

【本】『フィンランドの幸せメソッド SISU(シス)』/カトヤ・パンツァル 

知人が翻訳をしていた本著。北欧は、ずっと興味があった文化圏。昔アイスランドに一人旅をして、世界最大の露天風呂に一人ではいって、人生最大の虚無感に襲われたことが懐かしい。

幸福度ランキングで常に世界上位にいるフィンランド。意外と知っているようで知らなかった文化と国民性が良くわかる本だった。サウナや寒中水泳で心身を整えることや、食べるものがすべてだということ、森と接する時間の長さとストレスの関係、すぐにでも実践できそうな知識が満載でとても勉強になった。

一つとても印象に残ってるのは、「フィンランドは憂鬱であるということを許容する文化であるということ」。日本だといつも明るく!元気に!が良しとされる風潮があるければ、それが自分にとっては昔から苦痛だったから、そういう文化があるということを知れただけで少し救われた気持ちになった。

本を読んでから定期的に冷水シャワーを浴びてる。これだけでも副交感神経が刺激されて、体がリラックスできるのだとか。

【本】『エロティシズム』/澁澤龍彦

人間が他の動物と違って唯一持っている「エロティシズム」。この世のあらゆるものは「エロティシズム」に通ずると澁澤さんが語る本著。神保町の古本屋にて出会った。

ナルシシズム、オナニズム、フェティシズム、両性具有、モチーフ、ありとあらゆる観点から哲学や心理学、宗教のフィルターを通して語ってくれる本著は、大学で哲学・心理学の成績が最低だった自分でも一気に読めた。

澁澤さんの文章に惚れ惚れする一冊。

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