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写真に"モノ"としての価値を

蔦屋書店に行った。

その一角でパリの老舗ギャラリー「イヴォン・ランバート」のキュレートするアイテムを販売するポップアップストアが開催されていた。もちろん見たことも聞いたこともないアーティストの作品が並んでいたのだが、そこで一つの本を手に取った。

ベルギー人フォトグラファー Quentin de brieyの『The Other Day』という写真集。

A3ぐらいのサイズ感、中を開くとスクラップブックのようにページいっぱいに写真が貼られている。彼の写真をキュレートして一冊の写真集として編集したのがギャラリーのオーナー、イヴァン・ランパート。

何故かこの無作為に並べられたであろう写真たちを眺めて、「写真集っていいな」としみじみ感じてしまった。

それはたぶん、写真に"モノ"としての価値を改めて感じたから。

紙の質感を感じ、ページをめくり、大きな紙にばらばらとならべられた写真を一つの"モノ”として眺める。それは写真単体としてではなく、何枚もの写真が印刷された重さも触り心地も、何なら匂いまである"モノ"として。そこには写真を携帯やパソコンで見ただけでは確実に感じられない体験がある。

これが「しずる感」とよく言われるものだろうか。細かな意味合いは違えど、感覚的にはおそらく同じ。

ちなみに彼の写真集は約8,000円。
(洋書は大抵高額になるものだけれども)

有名なフォトグラファーの写真が高画質でネットでダウンロードできるような時代に、写真集に1万円近いような金額を払うなんて馬鹿らしいと思う人も恐らくいるだろう。

それでも、自分はこういったものにはお金を払う意味はあると思う。金額に値するかどうかは、個々人の考えでしかないのは当たり前だが。

世の中的にも、電子書籍が売れても紙の書籍は無くならないし、NetflixやAmazonビデオが流行っても映画館はなくならない。

それは、"モノ"には絶対に捨てられない価値があるから。

写真も、デジタル上で全て消費することが主流となっても、フィルムカメラも写真集も絶対になくならない。そこには明らか線引きがあって、どちらかがあればどちらかは不要になるなんてことにはならないはず。


あの写真集を手に取った時のような感覚を大事にしていきたい。


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