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由々しき事態、当たり前に感謝。

「オットさーん、開かないよー」
ジャムの蓋ではない。私は生まれたままの姿。
そう、お風呂の入り口のドアが開かないのだ。

「えーっ!」
そこから格闘1時間。状況は全く変わらない。
すでに時間は11時を過ぎている。
このままでは眠れない。
汗を流したい。
身体が洗えるだけでいい。

「洗面所があるじゃないか!」
私は洗面所の床一面に新聞を敷いた。
ニャチにこを洗うタライをその上に置いた。
その中に入った私は洗面所に頭を入れて髪を濡らした。

追い込まれるほど手持ちのカードが輝いてみえる。
これをどうすればいいのか、脳が高速で動く。
自分は天才か?と、よぎる。
湯船には浸かれなくても、上手く汗を流せたことに満足した。

身体を拭きながらふと思った。
世の中当たり前のことはひとつもなく、お風呂の戸が開くのもありがたい事なのだ。

普段、猫ズはお風呂場にも置いてある水を飲みに行く。
(飲む場所は何箇所もある)
猫ズがお風呂場に閉じ込められなかったこと。
お湯を溜めている最中じゃなかったこと。
それだけでも本当にありがたかった。

万が一の時は戸をぶち破りますもちろん。

そして3日が過ぎた。
タライでの行水生活も今日で終わる。
本日、鍵を直しに来ていただけるのだ。

仕事へ行く前からお風呂のことを考えている。
お気に入りの入浴剤で自分をまるごと解そうか、
酒と塩で身体を清めようか。

今日は金曜日。
どちらにしろ長風呂になりそうだ。

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