【読書】漫画『あの子の子ども』に感じること

那珂です。

今日は、マンガの話を。

 先日、気になっていた『コウノドリ 新型コロナウイルス編』
ようやく購入して読了しました。

 購入した書店にあるスタバで読んだのですが、途中3回位泣きそうになってヤバかった。
 大好きな四宮先生もラストに出てきてくれたのも、嬉しかったです。

 ぜひ、紙版でも電子書籍でも良いので、読んでみてくださいね。

 

で、今回は この話ではなく。

コウノドリの中に入っていたマンガの広告(?)で見つけたのが
『あの子の子ども』です。

2022年このマンガがすごい 女版 の候補になっているようで。

普段は全く「少女漫画」ジャンルは読まないのですが、1巻の途中まで無料で読めたので、まずは読んでみました。

 現在、3巻まで出ています。
 9月13日に4巻が出る予定だそうです。

 話題になっているマンガでもあり、今回この記事を書くに当たって、3巻の最後まで読んでみました。

 正直なところ、

 手放して、おすすめできない。

 モヤモヤする。

(ここから、若干ネタバレがあります・・・・・)

 高校生カップルの福と宝。
 15歳の夏に初体験をしてから、時間と場所があれば性行為をしています。

 幼馴染カップルだったこともあり、福(彼女)の実家では、宝(彼氏)が家族のように食卓を囲むこともしょっちゅう。

 宝の母は、シングルマザー。家で食事をする場面は一つもありません。

 他の高校生カップルの性体験を面白おかしく話す二人。
 
 性行為=子どもを作ること であることを意識することもなく、コンドーム以外の避妊方法を全く知らずに、「気持ちがいいこと」を楽しむ二人ですが、高校2年の冬、福が妊娠していることが判明します。

 そこから、「産む、産まない」のゴタゴタが始まっていきます。

 10代の妊娠・出産というのは、かなり前から色々な手法で取り上げられるテーマではありました。
 小説、マンガ、ドラマ・・・
 その度に、センセーショナルに取り上げられ、話題にはなりますが、社会的課題として、真面目に世の中が考えてきたのか?というとそうでもない気がします。

 このマンガに「モヤッと」してしまったのは、

 1 高校2年女子の福が、「他力本願」で、自分でどうするのかを決められないフワッとした女子だから。

 2 彼氏の宝は、「できすぎくん」で、「そんな高校2年男子、いないだろー」とツッコミどころ満載なところ。

 3 出てくる大人(女医さんを除く)が、みんな無責任。娘と息子がしょっちゅう性行為をしているのを黙認している。子どもができたと聞いて、これまで自分たちが野放しにしていたことを棚に上げ、好き勝手なことを言い出すところ。
  
 4 性行為がファンタジー的に、「ステキなこと」として描かれ続けること。「愛があれば、何とかなるんじゃね?」みたいな結論につながりそう。

 こんなところでしょうか。

 性行為は、二人でしたことだから。

 福と宝は言いますが、この行為が、どういう結果につながるのかを知った上でできていたのでしょうか。
 
 この漫画を推しているのは、私達のような「親世代」だと思います。
 「保健室においてほしいです。」とか、「娘の部屋にそっと置いておきたい」などというレビューがとても多いですが、子どもたちは果たして読んでくれるのでしょうか。

 作者である蒼井さんも、「中高生に読んでほしいのですが、なかなか読んでくれない」とインタビューで話していたのですが、そうだろうなあ。

 だって、「性」というのは、彼らにとって未知の領域で、ファンタジーで、大人には秘密にしなければならなくて、その先どうなるかなんて、知りたくないと思ってしまうものだからです。

 中学生、高校生でも、性行為まで進んでいる子達も多いと思います。
 私達が思っているよりも、実際に行為に及んでいる子はいるのだろうな、というのが実感です。

 でも、「ちゃんとした性知識」を持っているのか?と言われると、NOだと。
 「性的同意」についてだって、聞いたことすらない。
 性行為はどんなふうにするかはなんとなく知っているけど、避妊具の使い方すら知らない。
 教わるものではないでしょ?
 そうやって、親だっておとなになってきたんだから。
 
 子どももそう思っている。
 親もそう思っている。
 「いやらしいもの」とか「恥ずかしいもの」とか、大人だって隠そうとしています。

 だから、親や先生が、思春期の彼らに向き合って、自分の言葉で性について語ることはタブー視されてきました。
 「寝た子を起こすな」と。

 でも、ちゃんと正しいことを理解した上で、女の子も男の子も、はじめて自分で意志決定ができると思うのです。
 性行為の目的とか、意味とか、責任とか。
 時間をかけて、自分なりに答えを出していくから、性的同意という意志決定ができるのです。

 福も宝も、それが決定的に抜け落ちています。

 上手く伝わらなくても、「正しい知識」を、大人が恥ずかしがらずに、ちゃんと向き合って伝える。言葉で伝える。
 
 この行為があって、はじめてこのマンガの「意義」が伝わるのです。

 このマンガの中の親たちは、その積み上げをやってきませんでした。
 そして、その「結果」=「妊娠したこと」だけを論議し、責任や結論を子どもに投げてしまっている。

 それが、私には納得がいきませんでした。

 少女漫画の「ふわっとした感じ」の「恋愛至上主義」の上に作られた「妊娠」の話は、とても危うい理想論になってしまうのではないでしょうか。

 今月発売の4巻で、どう着地させていくのかにもよりますが、福と宝が母子手帳に互いの名前を書きあったということは「産む」という結論に持っていくのかなとは思います。
 でも、「子どもを産む」ということは、「一生親でいる」覚悟が必要です。
 中絶可能な期間を過ぎてしまい、あとは出産一択になるのかもしれませんが、「産んでからの時間」を描くことができないのであれば、「本当の出産・育児の大変さ」を子どもたちに伝えきることはできないのではないかとも思うのです。

 「性教育の入り口」として このマンガを捉えることはありだとは思うのですが、「へー、こんな感じで、大丈夫なんだー」とか、「愛があるから、ダイジョブっしょ!」みたいな短絡的な印象を子どもたちが持ってしまわないかが引っかかる。
 興味や関心、「ちゃんと考えてみたい」という子どもたちに、大人たちが真摯に向き合えるか、ということを考えておかなくてはならないと思います。

 保健室に置いたあと、これを読んだ生徒と、どんなことを話し合いますか?

 娘の部屋にこのマンガをおいたあと、娘さんと、何を話しますか?

 性について語ることは、生きることについて語ることだと私は思っています。
 このマンガを読んだあと、大人として、子どもと「性」について語り合う覚悟がなければ、このマンガを「子どもたちに委ねる」ことはできないと、私は思うのです。


私の言いたいことは、三島さんの記事に!!!

おすすめです!ぜひ読んでみてください。


 


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