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【読書】波瀾万丈女一代記

こんにちは ナカちゃんです。

夏休みラストスパートで、怒濤の3冊読み!

積ん読だった『チームオベリベリ』も読み終えたので、まとめ記事を書きたいと思います。

今日ご紹介するのは、3冊です。

村山由佳 『風よあらしよ』 

渡辺淳一『花埋み』

乃南アサ 『チーム・オベリベリ』

 この3冊に共通するのは、「波瀾万丈女性の生き方」を歴史を通じて描いているところです。幕末から、明治、大正、昭和と激動の時代を生き抜き、新たな道を切り開いた女性達。

 では、それぞれの作品を紹介していきましょう。


1. 村山由佳 『風よあらしよ』


 明治・大正時代の女性運動の旗手伊藤野枝。激しくも短い一生を、村山由佳が圧倒的な熱量で描き切った大作です。読後は、「読み切った!」感でその味わいに気づきませんでしたが、時間がたつにつれて、その読書体験が熟成され、美味しさがわかるようになりました。伊藤野枝は、男性関係でも奔放であり、子だくさんであったことも知られています。「女としての性」を描かせたら一級品の筆力をもつ村山由佳。彼女の描く伊藤野枝は、自らの信念を貫き通した強さと、愛に生きる女としての側面とを併せ持つ魅力的なヒロインとして圧倒的な存在感を放っています。

 女性の権利や人権が確立するまで、多くの女性の努力と働きかけがありました。女性の生きづらさは、今でも解消したわけではありませんが、私たちの社会は、これまでの先人たちが努力して作り上げてきたものです。

 女性にとって生きやすい社会は、だれにとっても生きやすい社会になるはず。まだ見ぬ未来の女の子たちへ、より良い社会を手渡すために何ができるのか。伊藤野枝の一生を知ることで、改めて考えるきっかけになってくれるのではないかと思います。

2. 渡辺淳一『花埋み』


 私が初めてこの小説を読んだのは、高校生の頃だったと思います。日本で初めての女医、荻野吟子。彼女が、なぜ医者を目指すようになったのか。そして、結婚後、夫と共に北海道へ渡り、瀬棚を開墾し、その地の人々の命を支えたこと、どれをとっても衝撃的でした。

 将来、瀬棚出身の夫と結婚し、荻野吟子と志方が開いた教会で結婚式をするなんて思いもよらなかった高校生の私。

 これも何か不思議な縁を感じさせる本でした。

 渡辺淳一は、札幌出身の医師で小説家。数々の名著を記してきましたが、私はこの作品が一番好きです。

 北海道開拓の厳しい生活を支えたのは、キリスト教の教えでした。命を懸けた越冬、ヒグマや野生動物に襲われるかもしれない恐怖。未開の地での開拓は想像を絶するほどの厳しさだったにちがいありません。

 義理の父は、入植1代目として、瀬棚の地で酪農を始めました。縁もゆかりもない北海道に、母と共にわたってきて、一代で牧場を経営し、今では息子たちが、2つの牧場を経営しています。

 水を引き、家を建て、牛舎を建て、一つずつ積み上げてきた北海道での酪農業。その苦労を支えたのは、キリスト教の信仰であり、仲間の存在だったそうです。

 北海道の歴史を紐解くと、開拓の歴史から始まっていきます。強い信仰を持って、未開の地を開拓した先人たち。強い信念で、あきらめずに、その土地を拓くことができたのは、女性の粘り強さと信念があったから。

 私が結婚式をした教会には、荻野吟子の油絵が飾ってありました。その力強いまなざしを、今でもわすれることはありません。


3. 乃南アサ 『チーム・オベリベリ』


 北海道の帯広といえば、皆さんお馴染みですね。

「六花亭のマルセイバターサンド」

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 あのパッケージのマルセイ、って何のことだかご存じですか?

 マルセイは、帯広の開拓を進めた「晩成社」が手掛けた国産バターのパッケージに描かれたマークなのです。

 その「晩成社」を立ち上げた鈴木銃太郎、依田勉三、渡辺勝。銃太郎の妹カネは、渡辺勝と結婚し、未開の地、北海道へ渡ります。彼らは、キリスト教の信仰で結ばれた「チーム」だ、とカネは言います。明治時代に、先進教育を受け、教師までつとめたカネ。そんな彼女が、なぜこんな苦労をしなければならなかったのか。未開の地での厳しい生活。命を落とすものもいる、脱落していく者もいる。そんな状況でも、あきらめないカネを支えたのは、やはりキリスト教の信仰でした。

 そして、彼らの農業や生活を援助してくれたのは、アイヌの人々でした。銃太郎は、アイヌの娘と結婚するのですが、そこには差別や偏見がありました。貧しい開拓民であっても、依然としてアイヌへの差別的な言動を取るものが多くいたのです。カネは、義理の姉となった常盤(日本名)に対しても、尊敬と愛情をもって接していきます。

 最後、晩成社は、依田と渡辺の亀裂もあり、5年ほどで解散してしまいます。しかし、晩成社から帯広各地に開拓が進み、今では十勝農業の中心地として帯広は知られるようになりました。

 かなりの厚さに驚く本ではありますが、ラストの描き方がもう少し欲しかったな、という感想を持ちました。カネの苦労だけで終わってしまうのではなく、その後の希望や未来を感じさせる最後が欲しかったと感じます。

 「苦労を耐え忍ぶ、夫に仕える妻」として描きとおされたカネ。ラストでは、才女としての気高いカネの姿が描かれますが、そういうカネの姿が、もう少し見てみたかった。開拓者の子弟への教育を行うために私塾を作り、帯広、十勝の教育の基礎を築いたカネ。「帯広教育の母」「十勝開拓の母」と呼ばれるまでのカネのその後を、また読んでみたい。そう思わせるラストシーンでした。


 さて、この3冊で、お気に召したものはありましたでしょうか。

北海道開拓の歴史を知ることのできる2冊は、特におすすめです。

夏休みの最後に、ぜひどうぞ。



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