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あの花の咲く丘で君とまた出会えたら

2023年12月8日に映画「あの花の咲く丘で君とまた出会えたら」が公開された。主題歌は勿論私の推しの福山雅治さん。

公開初日に観に行ってきました。(ネタバレありです)

映画を観るのは沈黙のパレード以来で、ウキウキした気分で劇場に足を運びました。

現代の女子高生百合が1945年の終戦2ヶ月前にタイムスリップして、軍人さんがよく来る食堂に住み込み日々を送り特攻隊の彰と出逢い恋に落ちるというストーリー。

原作は途中までしか読んでいなかったのですが、最初はなるほど原作は主人公が中学生の設定だったけど、
高校生の設定なのね、これは本とは違う物として観ようと思っていたのだけれど、ストーリーの展開が原作に忠実で、また本には描かれていても通常は映画では描ききれない心理描写も福原さんの演技力で伝わってきて、原作と同じ物として観ても違和感を感じる事はありませんでした。

タイムスリップという非現実的な展開に違和感が無く、むしろ、タイムスリップしたという設定だからこそ現代の日本人の感覚と戦時中の日本人の感覚の違いが浮き彫りにされ、戦争という物の恐ろしさや愚かさがより深く伝わってくる内容でした。

1945年の日本の人々は日本が第二次世界大戦に勝つと信じて疑わず、負けたら奴隷にされると思い込み、
彰を始めとする特攻隊員は家族や大切な人を守る為に自分の命を犠牲にしてでも、小さな飛行機でアメリカの大きな艦隊に突っ込む事を誇りに思い自ら志願した物ばかりだ。自ら志願したという事が信じられない百合。戦時下での正義感は立派だと思うが、そんな事が無い現代に産まれてよかったと心から思う。

現代の日本人には無い考えで、現代人の百合は、自分が未来から来たという事を言いこそはしないが、
戦争には負けるんだよ、もうすぐ戦争は終わるんだよ、そんな事に何の意味があるの?と疑問を呈する。

気が強い百合は警官に非国民と罵られようと、
何の意味があるの?と言い放つ。

私は恐ろしくてそんな事は出来ないけれども、
同じ思いだ。

現代人の百合が空襲に巻き込まれ間一髪で彰に助けられる事で、まるで自分が空襲を体験したかの様な錯覚に陥り、涙なくしては観れない映画だ。

特攻隊員は生き神様と崇められ、食堂のツルさんも、
食糧が満足に手に入らない状態でも無理をしてでも特攻隊員にはご馳走を振る舞う。
また検閲を逃れる為に特攻隊員はツルさんに家族や大切な人への手紙を託し、ツルさんが手紙を出す。
これは映画を観なければ知らなかった話だった。
戦争の事をよく調べ尽くしていると関心しました。

また彰は百合に惹かれながらも、百合の事を妹の様な存在だと言ったまま、飛び立つが、百合への手紙に愛していると書いてあった事が、ちゃんと彰の思いが百合に伝わってよかったと思いました。

彰が飛び立つ日、彰から自分宛の手紙を見つけたゆりは、読まずに飛行場まで彰を見送りに駆けつける。
彰は百合の花を胸ポケットからのぞかせて飛び立ちました。

他の特攻隊員も家族の写真や恋人から貰った恋人の形をした形見の人形と一緒に飛び立っていきました。

仲間の特攻隊員が千代から、千代の形をした人形を貰った時に、彼が腹話術を真似て「私も連れて行って。一緒に行こう。」と言う所に、今の日本なら本来なら、デートや新天地に行く時の会話で、それが死の世界という事にいい様の無い暗い気持ちと恋人達の和やかな会話との狭間で複雑な心境になりました。

飛び立つ前日に、いいなずけが1人では歩けない身体になり、生きたいと願い逃げる者もいて。
まさに生と死との狭間に揺らぎあう若者達。
そんな時代だったのだと思うしかない。
まさに主題歌の想望の歌詞の「変わる時代止められない僕ら大河の一粒」が言い表している事だと思いました。

彰が飛行機に乗って出撃する所で百合は現代に戻り、
社会科見学で観に行った、特攻隊の資料館で彰の手紙を読み「彰、会いたいよ」と泣き崩れる。ここで映画は終わる。

原作者の汐見先生はこの映画を観て、『戦時中の人達は可哀想、現代は恵まれている、現代に生まれてよかった、感謝しなきゃ』で終わりにさせては絶対にいけないとSNSで言っていて、この言葉の意味を映画を観終わってからずっと考えていました。

なぜなら戦争の話をニュースやドキュメンタリーで見聞きした時、私が最終的に行き着く結論は「悩みは尽きないけれど、毎日お風呂に入れる事、温かい布団で眠れる事、3食食事が出来る事、今に感しよう」という思いだからです。
想望を聴いてこれに加えて「大切な家族と過ごすかけがえのない時間は尊く、感謝すべきもの」という思いも加わりました。

元教師の読書好きで色々な活動をしている伯母に感想を伝えてから、その疑問を聞いた所、「まずは率直な感想が大切。そこから自分に出来る事を考えて、次の世代に伝える事でいいと思うよ。」とアドバイスを頂き、私はまた書く事を始めようと思いました。

戦争の話はニュースで見るより、ドキュメンタリーで見るより、映画で見るほうが感情に訴えるものがあると私は感じました。それは人によるのかも知れませんが。

今なおウクライナやパレスチナで戦争が起きている。
過去の話ではなく、この現代に空爆に怯え逃げまどう人々がいる。悲惨な殺戮も起きている。考えるだけで恐ろしいけれど、万が一日本で起きたらどうすべきかと思ってしまう。

私は何かと一人になりたい、早く家に帰りたいと思いがちで、空爆のシーンでは、そんな私はなんてワガママなんだろうと涙が出た。

非常時には人は助け合わなくてはならない。
一人になりたいなんて言っていられないし、
そもそも家も自分の部屋も無いかもしれない。

そんな事を考えた映画でした。

エンドロールでは福山さんの想望の歌詞の中で、
一緒に寝よう、ご飯を食べよう
と彰と百合の2人が幸せに過ごしているシーンを作ってくれて、また涙が出ました。

とにかくこんなに泣いた映画も、
こんなに戦争という物がダイレクトに伝わって来た映画も初めてでした。







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