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秋の味覚に

馴染みの飲み屋へ出かけたら、品書きに
さんまの文字が載っていた。刺身に塩焼き、
いつも、安い値で肴を提供してくれるこの店にしては、
少々高い。
昨年に引き続き、今年もさんまの水揚げがよろしくないと
うかがえたのだった。
日をおいて再び顔を出したら、すこし安くなっていた。
ご主人曰く、さんま、出始めより値段が下がったものの、
昔より身が細く、脂ののりも少ないんですよねえと言う。
言われてみれば確かに。塩焼きを突っつきながら、
ここ最近のおかしな気候のせいかなあと、
うなずいたのだった。
県外に暮らす幼なじみがいる。毎年この時期になると、
自宅の庭で採れたすだちを送ってきてくれて、
今年も、艶やかな緑の実がたくさん届いた。
ひとりでは使い切れないほどで、飲食店を営む友だちに
おすそ分けをして、すぐに使う分を冷蔵庫へ、
残りを冷凍庫へ保管した。晩酌の折りに、肉野菜、
豆腐に油揚げに搾ったり、焼酎のロックに搾ったり、
飲み屋でさんまを食する際に持参したり、
ひととき、爽やかな酸っぱい秋を過ごすのだった。
上田の町が好きで、月に2,3回訪ねている。上田駅から
電車で30分の別所温泉は、秋になると松茸が豊富に
採れるのだった。この夏、飲み友だちと一献交わした
翌日、ラインが届いた。
昨日話した、秋の上田松茸行こう。覚えてますか?
ぜひ企画お願いします。
どうやら酔っぱらって気が大きくなって、
松茸詣でを持ち掛けたらしい。
酩酊して、ぜんぜん記憶にないぞ。
9月になって、そろそろ予定を立てようと、
別所温泉に在る、目当ての料理屋のホームページを
開いたら、すでにぜんぶ日にちが埋まっていた。
一泊で出かける予定で、目当ての上田駅前の老舗の
旅館に電話をしたところ、感じの良い女将さんに、
うちでも松茸料理やっていますと言われ、
おっ、ありがたい、それではと、
お昼に松茸料理もお願いをしたのだった。
昼に贅沢をするから、夜は上田の飲み屋で、
軽いつまみで一杯と、段取りがついて安心した。
松茸を食するのいつ以来だ?
久しぶりに、贅沢な秋になることだった。

香りたつ幼馴染みのすだちかな。





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