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「お母さん、それってautisme(自閉症)のこと?」と娘に聞かれて

こんにちは!先日、夕食時に夫婦で自閉症についての話をしていた時でした。

「お母さん、それってautismeのことやんな?日本語で何て言うの?」
「autismeは日本語で"自閉症"って言うんよ。自閉症知ってるん?」
「うん、この間、10 uurtje(10時のスナックタイム)で自閉症のklokhuis観たよ。自閉症がどんなんか、私もう知ってる!」

と言ったのでした。

"het klokhuis"とは?

娘が話してくれた"het klokhuis"とは、国営放送のチャンネルで取り扱われている番組です。1988年から続いているこの番組では、多種多様なジャンルのテーマを取り扱い、子どもたちが社会の様々な事象や問題について真面目に、ポジティブに、明るく学べるような番組になっています。この"klokhuis"という言葉には様々な意味あいがありますが、そのうちの1つが「りんごなどの真ん中にある芯の部分」であり、この番組名もまた「物事の核に迫る」という意味合いを持っているようです。

"het Klokhuis"には一見馬鹿げた内容も多いのですが、それがまた子どもにも面白く、大人にも面白いのです。私と娘のお気に入りは"vragen van kinderen(子どもたちからの質問)"と、"klokko"です。

"vragen van kinderen"では、子どもたちから寄せられた質問の答えを見つけるべく取材班が出かけていきます。例えば「何故、舌は疲れないのか?」とか「茶色いパンと白いパンの違いって何?」など、日常の中の疑問を明らかにするために専門家のところへ行きます。動画は3分程度と短く、サクっと観られるのも良いところです。

"klokko"は本当に馬鹿げたコーナーで(笑)、登場人物が出くわしたちょっと不便な状況に対して「こんな商品いかがですか?」と本当に馬鹿げた商品を紹介するコーナーです。例えば、「AI(人工知能)が家の中でなくなりそうな商品を検知し勝手に注文→配達してくれるサービス」「ビーチバレーで勝てるよう、リモコンでネットのポールを上げ下げできるセット」など、ちょっとドラえもんの世界に出てきそうな製品を紹介します。笑

良心に反する商品もたくさんあるのですが「こんなんいるか〜?!」とか「こんなんで勝ったところで嬉しいんかなぁ」なんて話を娘として楽しんでいます。

"het klokhuis"で"autisme"を観て

さて、本題に入ると、娘は学校で"autisme(自閉症)"というタイトルのklokhuisの番組を観たそうで、家族3人の夕食の時間に、自閉症の人たちの頭の中で何が起きているかを丁寧に教えてくれました。

「自閉症の子はね、頭の中にいっぱい道路を持ってるんやって。それで大変なことがあるねん。例えば、部屋片付けてってお母さんに言われても、どうやって片付けたら良いかたくさんやり方があるやん?本棚に本を綺麗に直すとか、カーペットに掃除機をかけるとか?そういうのがたーくさん頭の中に浮かんで、頭の中の道路が混むねん。頭の中にあっちにもこっちにも道路があって、あっちかな?こっちかな?ってなってしんどいねんて。でもそれは、その人が悪いとかじゃなくて、そういう脳みそやってことなんやって。」

おおよそ娘が説明してくれたことはこんな感じで、「ほぉ〜」となりました。

「そうしたくないのに、そうなっちゃうってこと。ほら、Erika(仮名)も大変やったやろ?」

そう娘が話してくれたのは、かつて同じクラスメイトだったErikaのことでした。彼女は"自分に合う学校"を求めて、去年、娘の学校から別の学校へ転校したのです。

「Erikaは大きい音が苦手やったから、クラスがうるさいとしんどくなってたやん?だから、koptelefoon(雑音除去用のヘッドフォン)をつけてたやろ?自閉症の子はそういう子が多いみたい。私もうるさいの嫌いやから気持ちわかるわ〜。自閉症じゃなくてもうるさいのが嫌いな子もいるってことやな」

と、娘は特に意識することなく、あくまで「ちがい」であるということに言及していました。そして、

「脳が違う動きするんやもん。それは仕方ないよなぁ」と言ったのです。

日本にもそういったコンテンツはあるのか?

娘のこの話を聞いて、私は、
「ところで、娘がこうやって社会にいる人々やクラスメイトの"ちがい"に関してポジティブに理解を深めることができるように、日本の子どもたちにもこういったコンテンツが用意されているのだろうか?」
と思い、夕食後、Youtubeやブラウザでコンテンツを探してみました。

すると、NHK for Schoolでいくつかコンテンツを見つけることができたのですが、魔法使いが喋ったり、花が話をしたり…と、少し現実離れしたものが多いように感じました。例えば、オランダにも複数存在するモンテッソーリ教育などでは「実社会で起きていること」に根ざして教育をしますが、動物は電車に乗らないし、花は人間と言葉を介して話はしないので、こういった日本のコンテンツは喜ばれないかもしれません。かといって、長編のドキュメンタリーのようなものは、時間がかかり過ぎます。

NHK for Schoolにはたくさん良いコンテンツがあるので、自閉症やADHDなどの子どもたちへの理解を広げるためにも、子どもたちが観て惹きつけられ、ポジティブに違いを学ぶためのコンテンツがあれば良いなと思いました。

子どもたちが「友だち」を理解することを助ける

教室という空間の中で「人と違うこと」を子どもたちがどのように判断するかは、周囲の大人がそれをどのように表現しているかによるかもしれません。例えば、娘が学校で観たklokhuisのように「ちがい ≠ 悪い」だと多くの大人が表現し、実際にそういったコンテンツにたくさん触れることができれば、子どもたちの中にも自閉症への正しい理解が広がっていくのかもしれません。

娘がそう言ったように、「でもそれは、その人が悪いとかじゃなくて、そういう脳みそやってことなんやって」と言えるのは、(私たち保護者も含め)彼女に関わる大人や、社会にあるコンテンツが彼女の理解を(今回は良い意味で)誘導している結果だと言えます。

私たちは自分を取り巻く環境の中で「実際に経験したこと」から多くを学びますが、例えば子どもたちの間でちょっとおかしな行動をとった相手に「お前、自閉症ちゃうん?」なんてやり取りを耳にしたら、それをやり過ごさないことが大人にできることかもしれません。その時にklokhuisの動画があれば、それに時間を割いてでも「自閉症」というものの正しい理解を促すべきだと感じます。

他にも、男の子が「ピンクが好き」と言った時に「変なの〜」と揶揄するようなことがあれば、毅然とした態度で子どもたちに伝える必要があります。klokhuisには"ジェンダー(性)とは何か?"という動画もあります。動画の中では「身体と心が一致しないことがあって、それもオッケー」と表現しています。

子どもたちは学校でも家庭でも「間違い」とは知らずに間違いを犯しますが、それは必ずしも「悪」とは決めつけられません。むしろ、それを簡単に見過ごさない「大人の毅然とした姿勢」の中から「学び」を得ていくのだと言えます。

一方で、私たち大人が子どもたちに"学び"を与えたいと思っても、「本当にこの伝え方で合っているのだろうか?」と不安に思うことだってあります。そういった時のために、このようなコンテンツはとても役に立つのではないかと思っています。

日本語字幕でも理解できます

前にもリンクを貼っておきましたが、ここにもこの自閉症のエピソードを紹介しておきます。少し変な翻訳にはなりますが、自動翻訳で日本語字幕をONにすると、おおよその内容がわかると思います(英語だとよりわかりやすいです)。

オランダの子どもたちが「自閉症」をどのように知り、理解しようとしているか、「ちがう」ということに関して、ポジティブなイメージを受け取ってもらえたら良いなと思います!


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