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毎晩1ヶ月「子どもニュース」を娘と観ていたら見えてきたこと

こんにちは!夏休みにヨーロッパ周遊旅行から帰国後、毎晩娘と続けていることがあります。それが、オランダのNOS(日本で言うNHKのようなもの)が毎日放映している"jeugdjournaal(子どもニュース)"を観ることです。

jeugdjournaal(子どもニュース)は毎晩19時から放映されるのですが、娘の就寝時間は20時…ということで、オンデマンドを利用して前日のニュースを一緒に観るというのが食後の日課になりつつあります。番組は20分程度のニュース番組ですが、オランダ国内のことから海外、時には日本のことまで取り上げ、子どもが理解できるようなかたちで世界のニュースをまとめてくれています。

学校でも観ているjeugdjournaal(子どもニュース)

これまで30校以上の小学校や中高一貫校、教員養成大学などを見学してきた私ですが、小学校では10時のスナックタイムやランチ時に、jeugdjournaal(子どもニュース)を流している小学校も多く存在します。昼食時にテレビを流すことについては賛否両論ありますが、学校によってはニュースの内容をランチ時に議論しているような学校/学年もありました。

いずれにせよjeugdjournaal(子どもニュース)は子どもたちにとって馴染みのある番組で、子ども向けに編集してあり、クスっと笑ってしまうようなニュースや、tiktok、twitter、instagramなどのSNSから得た動画なども多く紹介され、子どもたちの関心を引くように作られているだけあって、7歳の娘にも面白いようです。

国内のニュースと海外のニュースがバランスよく

jeugdjournaal(子どもニュース)を観ていて感じるのはそのバランスの良さです。国内ニュースの数も多いですが、同様に海外のニュースもきちんと取り上げられています。ロシアとウクライナの戦争については継続的に取り上げられ、日本に台風が来ていることやパキスタンで洪水が起きていること、トランプ氏の家が家宅捜査されたことや中国の子どもたちがやっと学校に通えるようになったことなど、「今世界で何が起きているか」を子どもの視点でニュースにまとめてくれています。

Youtubeにあるjeugdjournaal(子どもニュース)の「ニュース」をチェックしてみると、その動画の数約3,000本!1つづつは2分程度にまとめられていることが多く、上手に編集されていることに気付かされます。

大人も子どもも"同じ情報"を共有していると感じられる

NOS(日本で言うNHK)のjeugdjournaal(子どもニュース)では海外のニュースを取り上げる訳ですが、現地に住んでいるNOSレポーターが現地から話をする場面が何度もあります。彼らはいわゆるNHKの海外特派員のような存在な訳ですが、基本的には大人向けのニュースでも話をする人たちです。そんな彼らが子どもたち向けにも現地からレポートをするというのは、情報において大人と子どもの境界線がないことを知らせているように感じられます。

大人向けのニュース番組で報じられるパキスタンの洪水のニュースは、子どもたちにとっても同じだけ重要な報道なのです。だからこそ、大人向けのニュースで伝えるのと同じように、現地のNOSレポーターが子どもたち向けに伝えます。ここに「子ども用」「大人用」と、情報を分けない雰囲気を感じました。

世界や国内で起きていることを「他人ごと」ではなく「自分ごと」にすること

jeugdjournaal(子どもニュース)を観ていると、世界で起きていることは地球上でつながっているんだということを強く感じます。特に環境問題に関しては、山火事のニュースや、洪水などが多く報道され、オーストラリアの山火事、アメリカの山火事、トルコの山火事…ときて、オランダでも平野でが起きたとなれば「こんなに火事が起きているのか」と気付かされずにはいられません。

また、jeugdjournaal(子どもニュース)では国内で起きている貧困などについてもしっかり取り上げます。例えば、コロナや戦争の影響で資金的に夏休みに旅行に行けない家庭があり、そういった子どもたちに向けて特別なキャンプを開催すること。その子どもたちは顔出しでインタビューされ「夏休みに旅行に行けない悲しさ」について語っています。オランダにも貧困は存在します。でも、それを隠さないことで、少なからずニュースを観ている子どもたちは「この国にもそういった家庭や子どもたちがいるんだ」ということを知ります。隠しておけば気づくことのない事実をきちんと目の当たりにすることが、子どもたちが社会課題に開眼するきっかけになっているように思うのです。他にもLGBTQ+について子どもである当事者が語ったり、社会においてマイノリティとされている人たちがきちんと顔を出して自分の意見を主張する様子を目の当たりにします。

"話し合いにくいこと"をきちんとテーブルの上に出すこと

お金の話や性の話、ドラッグやアルコールなど、子どもたちと話し合いにくいとされるようなこともjeugdjournaal(子どもニュース)では非常にオープンに報道されています。そして、事実だけを伝え、子どもたちがそれぞれ考える"機会"だけを与えられているのは非常にフェアだなと感じました。社会課題には明確な「こたえ」は存在しません。でも、その事実に目を背けず、子どもたちが「自分なりのこたえ」を考えるチャンスを与えているように感じます。また、大人のミスやドジなところも報道されることが多く、「人間はみんな完璧じゃないんだな〜」と思わせてくれるところも好感が持てます。

もちろん、このjeugdjournaal(子どもニュース)を観ていない家庭も多いでしょう。しかし、学校ではこの番組を有効活用しようとしている風潮を感じると同時に、家庭でニュースを観ることを習慣づけるようになってから娘の世界がどんどん広がっているように感じます。先日、世界地図にあるパキスタンを指差し「今ここでは洪水が大変なんやね」と言った時は、彼女が少しずつglobal citizen(世界市民)に近づいていると感じました。

毎日20分、子どもとゆったりとニュース番組を見るためには生活に余裕が必要です。でも、忙しい日々の中で何とかその時間を捻出することで、子どもが社会課題を「自分ごと」と捉えられるようになるのであれば、それは率先して捻出したい時間だと感じるようになりました。

慌ただしく過ぎていく子育ての日々の中で、子どもを真ん中にしながら、家族として成長していく時間を大切にする。そんなオランダの文化を応援してくれるjeugdjournaal(子どもニュース)を、これからも娘と一緒に観ていこうと思います。

jeugdjournaal(子どもニュース)
https://jeugdjournaal.nl/

NHK NEWS WEB EASY
https://www3.nhk.or.jp/news/easy/

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