「教育×行政×企業」の力でサイエンス&テクノロジー教育を活発化 Technolab訪問
こんにちは!
この記事では先日訪問させていただいたLeidenにあるTechnolabについてご紹介します。
Technolabではサイエンス&テクノロジーのワークショップを子どもたちに向けて行っています。時に学校へ出向いて出張授業として行ったり、学校側からTechnolabを訪問してもらってワークショップを行うこともあるそうです。また、週末や夏休みなどの長期休暇には、一般向けのワークショップなども開催しています。
Technolabという場所
Technolabが設立されて約10年。これまで多くの子どもたちに授業やワークショップを行ってきました。Technolabは日本でいうところのNPOで、non-profit organizationとしての位置付けにあります。21世紀という時代に必要な教育の中でも「サイエンス」や「テクノロジー」といった分野の教育に力を入れる必要がある。そう判断した教育文化科学省ですが、現場の教師たちはそういった教育をどのように与えれば良いのか...それを模索していました。そこで、Technolabが生まれたのです。
驚くことに約10年前から「学校教育を外からも支えよう」という動きがあったのです。これは日本も見習えるところがあるのではないかと思っています。
Technolabが柱にしていること
Technolabで大切にしている柱は、
・自然環境との融合
・プログラミングやリサーチ
・アートとデザイン
だと、教えてもらいました。
自然環境との融合とは、テクノロジーとサイエンスを自然と融合させていくアイデアです。テクノロジーやサイエンスを「何かを消費するもの」として学ぶのではなく、私たちにとって大切な自然との融合を図るのが目的です。サイエンスやテクノロジーで生み出す、「自然を保護するためのアイデア」も大切にされています。環境問題に対して危機意識を持ったオランダらしい柱とも言えます。
プログラミングやリサーチでは、まさに手を使い、器具を使い、デバイスを使い、実際に仕組みを作っていくことを指します。「どうやったらこのプロジェクトはうまくいくだろう?」リサーチを通してプロジェクトをより成功へと導きます。プログラミングを学ぶことで、実際にPepperくんやロボットを動かすこともします。
アートやデザインは一見サイエンスやテクノロジーとは無縁に見えますが、アート的思考を持って、サイエンスやテクノロジーをもっと魅力的なものにすることを大切にしているとおっしゃっていました。アートは表現を自由にし、人の心を開放してくれる。そういった意味でのアートです。
Technolabで働く人たち
Technolabには「スタッフ」と呼ばれる人たちが働いています。フルタイムで働いている人たちもいれば、パートタイマーとして特定の曜日に働いている人たちもいます。学校とのスケジュール調整や、広報活動など多岐に渡る仕事を支えているスタッフもまた、Technolabの発展を心から願っています。
学校ではない場所から教育を支える。
ここで働くスタッフの方々もまた、違う立場から教育というものを情熱的に支えたいと思っているように感じました。
授業を受ける生徒たち
Technolabで授業を受ける生徒たちは下は小学生から上は中学生まで多岐に渡ります。私たちが訪れたこの日も、lab内はとても賑わっていて、生徒たちがワークショップを受けたりしていました。
lab内はとても賑わっていて、生徒たちの楽しそうな声が聞こえていました。
授業をする側の人たち(高等教育からのインターンシップ)
Technolabで働くスタッフたちは、基本的にlabの運営を行なっています。では、訪れた生徒たちに誰がワークショップやレッスンを行なっているのかというと...実は高等教育からのインターン生が行なっているのです!
この高等教育からのインターン生というのは、日本で言うところの高校卒業後の学生を指します。そこには様々な種類の高等教育からやってきている学生がいます。Technolabのスタッフはインターン生をまとめ、どのようにワークショップやプロジェクトを進めていくかの相談役として存在しています。
では果たして、そのインターン生とはどのような学問を専攻している学生たちなのかと言うと、それはそれは本当に様々でした。例えば、学生の中には心理学を学んでいる学生もいれば、ソーシャルワーカーとしての道を志している学生もいました。つまり「理科の先生」や「教師」というような「教える立場」を仕事と考えている学生だけではなく、もっと広く「人と関わる」という視点でインターン生としてやってきているのです。
実はインターン生がこのTechnolabで過ごした時間は、学校での単位として認められます。また、オランダの多くの高等教育では在籍期間中にある一定期間インターンをすることを義務化している学校も多くあります。学校の中だけにとどまることなく、社会との接点を持つ教育を進めているのです。
Technolabで働くスタッフは、常に高等教育機関と連携を取り、生徒のインターンスケジュールを調整したり、インターンシップを評価する側としても仕事をしています。
Technolabを支える企業や学校
Technolabの運営費は企業からの支援や、インターン生が所属する学校によって支えられています。また、Leiden市役所からの援助もあります。
Technolabの存在意義の一つに、
「労働市場における技術者不足の解消」
というものがありますが、オランダにおいても技術者の養成は急務として考えられているのかもしれません。
また、
「教育と労働市場の間のギャップを埋め、学校と企業の間の仲介者として機能すること」
もTechnolabの大きな役目と言えます。
日本にも子どもたちが課外学習として学校の外の施設を訪れることがありますが、Technolabは時に継続的なワークショップやレッスンを出張授業として学校で行っています。「外の団体が学校の中に入る」という動きが、日本でも盛んに行われて欲しいと感じました。
継続的な教育を、もっと楽しい方法で
実際に外の団体として教育の中に入っているTechnolabですが、そこにはもちろん課題もあります。
日本に比べるとこういった動きが盛んに見えるオランダですが、やはり小学校の教員不足は現場から余裕を奪う原因になっていることは確かのようです。余裕のない教育現場では、学校内のことに業務が集中していまい、外との連携が難しくなることも理解できます。
「機会さえあればいい」もちろん、「機会さえないこと」よりはマシですが、教育というのは単発的なものではなく、継続的な活動の中で染み渡っていくものです。1回や2回のワークショップやレッスンで子どもたちの中に残せるものは限られていることも確かだと思います。
そういった意味でもTechnolabはこれからも教育における可能性を模索をし続けるのだと思いました。
Technolabの夏休みワークショップ
Technolabでは、夏休みに年齢別で様々なワークショップを用意しています。全てオランダ語での開講になりますが、オランダにお住まいの方でお子さんに「サイエンスやテクノロジーの経験を!」と思っていらっしゃる方は参加してみるのも楽しいかもしれません。
今回はLeidenにあるTechnolabの訪問レポートをお届けしました。
オランダの教育の周辺にはTechnolabのように学校教育を支える団体や活動が多く存在します。これからもそれらの団体や施設を訪れてレポートを続けていきます。ご興味がある方は是非ご覧ください!
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