プライベートパーティに勝手に忍び込んだ

ウチのアパートのグランドフロアは全部レストランで、アパートのエントランスの隣には怪しい雰囲気の小さなクラブがあり、週末になると明け方まで爆音が鳴り響いている。深夜はヒップスターどもで賑わい、朝になるとエントランスの前は吸い殻ジャングルとなり、たまに酒の入ったグラスがエントランスの隅に置き去りになってたりする。
その日私はルームメイトのマシューに誘われ、彼の同僚と友人とバーで飲んでいた。その行きしな、アパートの階段を降りると、普段締め切っていて誰も住んでない二階のドアが開いていた。レイブとかでよく皆が振り回してる蛍光灯のあの棒の巨大バージョンがドアの横に置かれ、その棒が下の階まで飛び飛びで設置されていた。エントランスにはドアマンらしき人がスタンバイしていて、イベント?と聞いたら、どうやら誰かの誕生日らしく、完全プライベートのパーティが行われるらしい。

バーで一通り飲んだ後、私とマシューとマシューの友達のドイツ人ドクター(イラン人のハーフでおしゃべり)は無謀にもそのパーティに忍び込むことにした。
怪しまれた時のために、一応それぞれの設定を決めておいた。私とマシューは、日本人✖️フランス人DJデュオ「Onyva Kentaro」としてパーティに参加しており、ドクターはまあ適当に誰かの友達、という程でいる事にした。(ちなみにユニット名は、お互いに唯一知ってるお互いの言葉を合わせた。”Let's go 健太郎”)

さてパーティはなんとマジで一瞬で怪しまれそうなくらいプライベート感満載だった。なにせ若者より、40代50代のドレスアップした年配の方が多い。マシューとドクターはカジュアルすぎて浮いてるし、私はチビなアジア人だし、とにかく下手をこかぬよう3人で隅にあるテーブル上のシャンパンをこそこそ勝手に飲んでいた。

すると大胆不敵パリジャンマシューはさらなる一手を打つ決意をする。人で賑わう隣の部屋に移りオシャレ女子の隣に座りテーブルのご飯をいただくと言いだした。(めっちゃお腹空いてたらしい)彼はまずキッチンに忍び込み、余り物のアラカルトとかあるか聞きにいき、食べ物の匂いを嗅ぎ回った。その間ドクターはドリンク係から当然のようにワインをオーダーして丸一本開けていた。

ドクターもさらなる行動に出る。窓際に立っていたダンディーな年配男性にタバコを一本もらって世間話をし出した。ドイツ語だったため、終始会話の内容は不明だったが、ドクター曰く、このおじさんがパーティのオーガナイザーで、パーティは弟の誕生日会らしい。おじさんも相当酔っ払ってたらしく、私たちの事などなんの疑問も持たず、楽しくドクターとおしゃべりしていた。

パーティも終わりに近づき、人が少しずつ席を立つ中、マシューは笑顔でお皿いっぱいのタルトを運んできた。それを私のコートで隠し、右手にはシャンパン入りグラスでさあお家に帰ろうとしたところスタッフの人に止められていた。(そりゃそうだ)
それでもうまいことドアマン、スタッフもかわして4階の部屋に到着。他のルームメイトへのお土産もゲットできたし、タダ酒を好きなだけ飲んでなんともハラハラドキドキな金晩だった。

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