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マンガの先輩②『男の仕事』

「クレちゃん・・・」

小さな聞こえるか聞こえないかのようなかすかな声
でも確実に
「クレちゃん」とよんだ。

真昼間、仙道を吉祥寺に迎えにいく途中
後ろから女の人の声が聞こえた!!!

まただ!最近女の人の声が聞こえる。
とうとうあだ名で呼ぶようになりやがった!

恐る恐る振り向くと

西森博之の奥様
西森夫人まきさん!!!!

「ひゃああああ!」
あまりにびっくりした僕が叫び
周りの人を驚かせてしまった。

今日のは「あの女の声」じゃなかった。

西森博之氏の奥さんは
かつてはレッドカンパニーに所属し
広井王子氏の秘書だったかた。
Vジャンプにも「エリザベスまき」の名前で登場していた。
巨乳、ロケットのようなおっぱい、ボディコン。(当時)

そのつながりで
西森さんと奥さんの結婚式には

マシリト(白泉社会長)、堀井雄二(ドラゴンクエスト)、えのん(キングボンビー)
広井王子(サクラ大戦)

と錚々たる顔ぶれが来たのだった。

そんな事があったために
せっかく思い出していた
当時の漫画の先輩のことを
完全に記憶から吹っ飛ばされてしまい。

思い出すのにまた1日かかってしまった。
というわけで

マンガの先輩②スタートです。

漫画の作り方を教えてくれるのは必ずしも年上の先輩達だけではありません。

漫画の捉え方、読み方に関して
西森博之さんに二年半指導は受けましたが

多分完成させてくれたのは

馬場康誌先生です。


僕より2つ年下ですし
僕が最初に雇った前屋さん以外の
アシスタントさんが馬場康誌さんでした。

出会いは僕に
ヤングサンデーで21歳の時POS『ポートレートオブセックス』という企画の仕事がきました。
全4回の集中連載。(全部で未掲載含め6話)
それまでサンデー増刊で2.3本、スピリッツの増刊で2、3本
十八で上京して初めてのチャンスです。

3位から4位と本誌で他の連載陣を抑えて人気を取りました。
そのお手伝いを馬場康誌さんがしてくれたのです。

彼は函館出身。
東京の専門学校を卒業してすぐでした。

完成原稿コピーは既に僕を超えています。
19歳にしては異常な完成度。
少なくとも僕も下手な方ではなく
同年代では上のレベルでしたがそれを超えていました。

当時僕も彼もとても貧乏でしたが
若い新人の時切磋琢磨して連載をとったのです。

馬場くんが20歳になるころ
馬場康誌先生初の連載が飛び込みます。
デビューしてわずか一年半で連載。

僕も負けてはいられません。
22歳の時はヤングサンデー増刊 猿に「たちまち」
23歳の時にはヤングサンデー本誌「七福神」を集中連載し

そして集英社に移籍します。

23歳の時の僕の作品「七福神」


馬場くんとは人生の中で
同性で一番長い間
電話をした相手です。
彼以上に長電話をした相手は
22歳の時の彼女くらいしかいません。

毎日のように漫画の事、人の悪口。
主に悪口、そして悪口、、、

1日何時間も何日も
暇さえあれば馬場くんに電話してました。

馬があったのです。馬場だけに。


仕事の時
アニメビデオを見せてくれました。

ガンダム08小隊
トップをねらえ!は馬場くんから教わりました。

漫画も似たやつが好きで
ダイの大冒険、北斗の拳の話をしている時です。

馬場「ケンシロウに感情移入するやつなんているんですか?」

紅林「?・・・!!」

主人公の視点で読むのを義務としすぎていて
ケンシロウのことをいまいち自分も掴んでいなかった

確かに、、言われてみれば
僕も好きなキャラは「シン」「レイ」「ジュウザ」だったし、、、、
自分なりの分析で彼らは片思いの戦士だから切ないのだ。
レイは両思いぽくもあるけど。

馬場「あの漫画はラオウすよ。片思いも、漢気も。」
紅林「おおお、その視点で読み直してみる」

泣けた
大いになけた。

ダイの大冒険の話でも
主人公ダイより僕はポップ推しだという話になり。

馬場くんもポップは好きだけど
「ハドラーすよ。ハドラー!」

ご存じのない方に
ハドラーは最初は小物の悪役で
主人公達と戦闘重ねる間に本当の王者の風格を持った敵になっていくキャラ


最初は小賢しい魔王 引用 ダイの大冒険
物語終盤は男の中の男へ覚醒

ダイの大冒険は大好きだったけど
ハドラー推しで読むと震える。
ポップとハドラーのシーンは涙無くして読めないほどの名シーン。

それまでの僕のマンガの読み方は
これが主人公ですよと作り手に提出された通りに読んでいた気がする。

読む時はどの視点でもそれは自由なんだと
必ずしも主人公に感情移入などしなくても。

有名なマンガであっても主人公ではなく敵やライバルや脇キャラに感情移入することはままある。

漫画の読み方や、キャラクターの視点を馬場くんが教えてくれたように思う。

馬場康誌「ガンダムで連邦軍の方が政治的には汚いですからね。だからZガンダムでは敵側になる。ジオンは虐げられている宇宙移民ですからね
ジオンの方が戦争仕掛けた理由がわかるんですよ。」

19歳の馬場くんに宇宙世紀のことを教えてもらう。21歳。

勉強熱心ですから。


紅林「銀河英雄伝読んだ方がいい?」

馬場「高校の時、ヤン提督がなくなる巻を授業中読んで泣きました。」

その後
紅林の仕事場ではしょっちゅう銀河英雄伝のアニメが仕事中に流れることになる。

若い時は馬場くんによく教わってた気がする。
絵の描き方も。

前屋さんと馬場くんと
八王子の狭い僕のアパートで
漫画を作っている時間に時を戻しましょう。

将来、二人は紆余曲折はあったものの漫画家に
今も続けています。

一人はギランバレーになり漫画家の道は閉ざされることになりますが

ひと時思い出を



二年前に撮った当時住んでいた八王子のアパート。3階の真ん中の部屋


次回
マンガの先輩③

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