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「先生」の呼称をやめてみよう

久しぶりの投稿です

ほぼ1年ぶりです。投稿をしなかった理由は、2年前からビジネススクールに通っていたからです。社会人向けなので、基本は夜か週末に授業があり、その予復習が結構量が多くて忙しい毎日でした。でも、自分としては、これまでずっと狭い医療の世界にいたので、違う世界を垣間見ることができて、とても視野が広がった気がします。

また、時間を見つけて時々書いていきたいと思います。ということで、久しぶりの投稿です。


本題;「先生」という呼称をやめてみる件について

さて、先週末はそのビジネススクールのイベントがあり、さらにその中でも医療関係者の集まりがあり参加してきた。せっかくビジネススクールに行ってるのに、そこでまた医療関係者通しで集まるの?と思われるかもしれないけど、いろんな職種(医師だけじゃなく、歯科医師、ナース、技師、薬剤師、病院事務など)もいる会だ。何しろ22時までイベントがあったので、その後23時スタートというすごいスケジュールだったけど、今回は多分20人ぐらいで集まって受賞した仲間のお祝いをしたり、いろんな話をしたりした。で、この会では、医師も誰も「先生」という呼称を使わない。「さん」づけか、あるいは「呼び名」または「あだ名」で呼び合っている。


「先生」という呼称の是非

私たち医師は普段お互いを「先生」と言って呼び合うけど、私自身はこの「先生」という呼び名には尊敬の念は1ミリも含まれていない、と思っている。習慣的に「さん」の代わりに使っているだけで、なんなら「名前忘れても、先生って言っとけば話ができるから便利」ぐらいの感覚だ。その証拠に、年長の人にはもちろん「先生」というが、後輩にも「先生」をつけるし、ひどい時には実習に来た学生さんにも「先生」と言っている。条件反射としか思えない。もう30年もそう思って過ごしてきた。

だから、「先生」と呼んでいることに弊害はないだろう、と思っていた。でも、今回、この会でいろんな年代、いろんな職種の人と交流するにつれて、もしかしてこの「先生」という呼称は実はヒエラルキーの一端を担うものなのではないか、という気がしてきた。


縦横の絆とヒエラルキー

思えば、私たち医師は、学部に入った時からかなり囲われた青春を送る。医学部はどこの大学も1学年100〜120人だが、入学すると先輩たちがやってきて、いろいろ学生生活の指南をしてくれるとともに強い縦の絆が築かれる。100人前後の同じメンバーで6年間、座学も実習もずーっと一緒にやる上、時にはハードな試験を協力して乗り越えたりもするので、横の絆も強い。私の学生時代は、カリキュラムが6年間もあるのは医学部だけだったし、授業や実習や試験のスケジュールも(運動神経も)違うので、クラブ活動も医学部だけで行われていることが多かった。しかも東西の医学生体育大会というのもあって、それに行くと他大学の医学生とも知り合いになる。でも、ここでも「君は何年生?」というのが結構な重要情報で、ご飯を食べに行っても先輩が後輩に奢る文化がある。つまり、その頃は意識していなかったけど、学生時代から「学年」というガチガチのヒエラルキーで固められる。

さらに仕事を始めると、それはますます強くなる。最初の頃などは1年間仕事をしてきた先輩と自分との知識や経験の差は凄くて、先輩に助けてもらう代わりに後輩は先輩の雑用をするというのが通常の関係である。ここでも先輩は後輩に奢る。もっと学年が離れた人との間では、この格差はさらに開く。もちろん年月が経つにつれて、素晴らしいスーパードクターになる人とそうでもない人の差は出てくる。しかし、この「学年による序列」はかなり大きくて、例えば「誰それは優秀だけど、上の学年がいるから昇進させにくい」というような話はいまだに時々聞く。もちろん最近は少しずつそうでもなくなってきたところもあると思うが、一般企業に比べると、まだだいぶん残っていると思う。

つまり、医療の世界では、医師を頂点とした職種によるヒエラルキーがあり、さらに医師の世界の中では学年によるヒエラルキーがあるということだ。ヒエラルキーだらけだ。


「先生」を使わないとお互い自由になれるのでは?

それで、今回の医療関係者の会の写真など見ながら、楽しかったな〜とぼんやり思い出しているうちに、このヒエラルキーの一端を担うものが、もしかしたら「先生」という呼称なのではないか、という気がしてきた。もちろん今回の会は全然違う組織に属している人たちの集まりで、「あいつが仕事をしないから俺にとばっちりが来た」などの軋轢がないから、お互いに良い顔だけを見せていられるのかもしれない。責任や実力・経験の差がわからないからこそ、相手の話にも素直に耳を傾けることができるのかもしれない。でも、自分より20歳も年下の人と「さん」で呼び合って対等に話をするなんて、普段だとなかなかない経験だな、と思った。明らかに彼らは、普段職場で若者が私たちに話すのと違って、自分の考えを素直に表明していたし、私たちの方も無意識に「若者に常識を教えなくては」と構えてしまう呪縛から解放されていた気がした。

そして、医師同士もさることながら、医師以外の職種の人たちと話すときに、この「先生なし」がさらに実力を発揮する気がする。普段、他職種の人たちは、病院内で私たち医師にとても気を使ってくれているから。

というわけで、まずは試しに「先生」で呼び合うのをやめてみたらどうだろう。少し職場の雰囲気も変わったりするんじゃないだろうか。職場で他の人から「先生」ではなく名字や下の名前で呼ばれている場面を想像してみると、結構面白いかもしれないし、みんな、少し遠慮しなくなってくれて、ヒエラルキーが減るんじゃないか、という気がする。


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