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なぜ僕がこうなったのかについての2、3の理由(11)

 店内に入ると、個室のように壁で仕切られている一区画に、見慣れたPの後ろ姿を見つけた。一瞬、大勢いるような雰囲気と笑い声を感じて、人違いかとほかの場所を見回してみたが、近づくにつれそこが正解とわかった。今日はいつもの面子P、U、Yだけのはずが、女の子が3人加わっている。知らない顔だ。
 おもむろに座に上がりこみ、ジャケットを脱ぎながらビールを注文した。Pは僕に気づくとそれまで熱中して話していたのをやめ、女の子たちに紹介してくれた。彼女たちは僕の予想どおり、たまたまとなりのテーブルに居合わせたのをPに声をかけられたのだ。歳は少し上ですでに働いていて、短大時代の同級生であり、それぞれ看護婦/証券会社/デパート勤務、東京都杉並区/世田谷区/調布市在住、たばこは吸わない/吸わない/吸っていた、酒は飲める/飲めない/酒豪、出身は青森/東京/高知、彼氏はいない/いない/いない、という布陣である。プロフィールめいた会話をひととおり終えたらしい彼らは、Pの特技のひとつである兄弟姉妹あてに没頭している。Pはすでに看護婦には兄と弟がいるというのを当てていた。
 

 僕はとりわけいいと思う子はいなかったので料理を注文したり、酒をぐいぐい飲んでみたり、Uにわざと彼女と最近どう?と聞いてみたり、Yに就職活動はどう?と探りを入れてみたりする。僕以外の3人はそろそろ就職活動に本腰をいれなきゃならない人たちだ。Pはといえば、女を目の前にしたとたん、根は農耕民族のくせに狩猟民族に早変わりしている。彼女は別にいるくせに、この日の獲物を逃がすまいと今や必死の形相である。今日はデパート勤務が気に入ったようだ。トイレから帰ると彼女のとなりに席を変え、あとはそっちでどうぞやってくださいよといわんばかりに僕に視線を送ってくる。彼のそんな一途なところを、僕も見習いたいとつねづね思っている。
 

 UとYは話のちょっと面白い証券会社に気を取られていた。というのも彼らは金融機関へ就職希望で、彼女の勤める会社にもできればすべりこみたいと思っていたからだ。社風や女性の扱い方、昇進における男女の機会均等などをお姉さん的にレクチャーする彼女はときに知的に、ときにヒステリックに思いのたけをぶちまけた。彼女の口もとはよく見ると上唇右あたりの口紅がはみ出していて、前歯にはそのショッキングピンクの口紅がついてしまっており、横すわりしたタイトスカートからレーシーなスリップのすそがちらりとのぞいている。ああ、と僕は舌打ちした。このような女とうっかりデートでもしたもんなら、奈落のそこまで追いかけられるぞ。U、Y、グッドラック、と心中で親指を天に向けて立てておいた。
 そして、やっぱりというか人間の社交性がなせるわざというか、残された看護婦に僕は話しかけた。まずは、サンタをいつまで信じていたか、と聞いてみた。

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