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ただ「2人のヒミツ」にうっとりしたいだけ[2024/1/31(水)〜2/6(火)]


2024/1/31(水) しあわせタイム

「マーマーきーてー」娘に呼ばれて寝室へ行き、お布団に入る。娘の体温で温かい。「しあわせタイムだね」我が家では、一緒にお布団に入る朝のひとときをこう呼ぶ。

いつまでも「しあわせタイム」を続けたいが、ようちえんに行く準備をしなければならない。「えいやっ!」と飛び起きる。

娘をようちえんへ送り家へ戻ると、実家から来た母が家の陰からひょっこり現れた。車に乗せて、友達の家へ向かう。

今日は友達何人かと味噌をつくる。母がやっている店から塩やこうじを送ってもらったこと、味噌づくりの指導を何年もやっていることもあって、今日は来てくれた。

私は途中オンライン取材があって、一度家に帰る。戻ると母が味噌を完成させてくれていた。

駅前のお店で買ってきた、Mさんが作ったおいしいタイ料理のお弁当を食べる。リクエストを聞いてもらったので、大きな海老とパクチーがモリモリだ。母とおいしいおいしいと食べる。

食べ終えて、友達の味噌づくりを手伝う。大豆をつぶしたり、味噌玉を丸めたり。友達の家の間もなく2歳の子が、小さな手で大人が固めた味噌玉を運んでくれる。足が痛いとようちえんをおやすみした年少の子が、容器の中にギュッギュと詰めてくれる。子どもたちと作業するのは楽しい。

無事にみんなの味噌ができあがって、母と一緒にようちえんのお迎えへ。はらっぱに行き、私は歌の練習に参加する。母はキックボードをする娘にずっと付き合ってくれていた。

夕方になって、母を駅へ送る。帰宅して夕飯をつくる。娘は、今日おばあちゃんからもらったレターセットで早速手紙を書いていた。

手紙を終えたら今度は折り紙だ。「紙飛行機ってどうやって折るの?」。手が離せない私は「折り紙の本みてみてね」と言う。「これつくりたい!」。折りたいものを見つけたようだが、「わからないからきて!」と度々呼ばれる。絵を見ればわかるだろう、と思ったが、字で補足してあるところも多くて、たしかに絵を見ただけではできなさそう。折り紙本の不親切さがうらめしい。

「ごはんつくってるんだよー」。私はぶつぶつ言いながら折り紙を手伝い、キッチンとダイニングを行ったり来たりした。折り紙は夫が得意だからいつもお任せで、私はほとんど作ったことがない。加えて昨日に引き続き肩が凝っていて頭も痛く、調子はいまいち。

できあがった夕飯を「食べよう」とテーブルに並べていると、折り紙を片付けながら娘が「ありがとうね、ごはんつくりながら教えてくれてくれて」と言う。娘の言葉のあまりの清々しさに、ぶつぶつ言いながらやってしまった私は「え、う、うん、こちらこそ」となんだか戸惑ってしまった。


2024/2/1(木) ただ「2人のヒミツ」にうっとりしたいだけ

布団から飛び起きパジャマの上からコートを着て、フードをかぶり外へ出る。

今朝も呼ばれて娘の布団に入っていたら、空き缶のゴミの日だ!と気づいた。我が町では缶の回収が2週間に一度で、一回前はうっかり忘れたものだから、お正月にじいじと飲んだビールの空き缶などがまだそのままだ。

娘はパジャマのまま、晴れてるのになぜか「長靴履いてく!」と、下駄箱から長靴を取り出した。時間ギリギリ、もう行ってしまったか、と思ったが、ちょうど収集車が止まっていて、「お願いします」と手渡す。

「間に合った!間に合った!」ホクホクしながら家に戻った。よし、と思ったら、キッチンに一つ大きめの缶が残っていた。「あー!」と2人で笑う。

お弁当と朝ごはんの準備をしていたら、キッチンの片隅に菜の花の束が横たわっているのに、娘が気づいた。昨日娘がようちえんで摘んできたものだ。顔をゆがめたかと思うと、「きれいに飾ってほしかったのにー」と声をあげて泣いている。しまった!あとで、と思いながらしおれてしまったので処分するか迷っていたのだ。

すぐに適当な空き瓶を探して花を挿れて、「これでどう?」と聞くと、「うん」となんとか泣き止んだ。

ようちえんが終わり、遊んだ帰り道。車の後ろで娘が「今日どこかにご飯食べに行きたい」と言う。ここ数日夫が出張で不在なので、どこかに食べに行く日があってもいいね、と話していたのだ。

2人で近所の食堂へ行く。食堂を切り盛りするおばちゃんが、私には熱々の、娘には少しぬるめの麦茶を出してくれた。

「きれいなコップだね」。麦茶が入った白い器を愛でながら、カウンター席に並んでご飯の到着を待つ。

「なんだか楽しいね」「お父さんにはヒミツだね!」

夫の名誉のために付け加えると、彼は私たちが外食していたからといって怒ることはない。ただ「2人のヒミツ」という響きに私たちがうっとりしたいだけなのだ。

そんなことを話していたら、出張中のその「お父さん」からテレビ電話がかかってきた。

「今外でご飯食べてるんだ」

かくして早速ヒミツはバレた。

ほどなくしてご飯が到着。今日はカレーとお惣菜。娘は鼻唄を歌いながら、気持ちよさそうに食べている。

「お子さんがもっと食べたいものあったら、サービスしますよ」。おばちゃんが言ってくれて、娘に何かおかわりする?と聞いてみる。「パリパリもっと食べたい」。ターメリックで色付けされた大根の漬物のお代わりをリクエストした。

「この味がわかるの!いくらでもあげちゃう!」とおばちゃんは喜んでたくさん出してくれた。

2人でお腹いっぱい食べられた。子どもの米は無料、おかずは大人の取り分けだから、と大人ひとり分の料金だけでいいと言ってもらう。いいんですか!?と言うと「たくさんおいしそうに食べてもらって、嬉しいじゃない」とおばちゃんは微笑んだ。

ごちそうさまを告げて、店を出る。

「楽しかったね!」「また来ようね」。明るい大通りを歩いて帰った。

寝かしつけで一緒に寝ると、3時間で目が覚めて仕事をする。

あとちょっとで区切りが付くところで「ママーママー」と呼ぶ声がする。でもここで一緒に寝たら仕事が終わらないまま朝になる。それは避けたい。

寝室に顔を出し、「あと少しで寝るからね、おやすみ」と声をかけ、再びパソコンに向かう。15分ほどすると「ママーママー」とまた呼ばれた。仕事を終わらせて寝室へ向かう。「ママ、いっしょに」。夢うつつなか細い声で言う娘の隣で寝た。


2024/2/2(金) 黄色いパンツは鬼の証

ようちえんに鬼が来る日。鬼こわいかなぁ、でも〇〇ちゃんはもうお姉ちゃんだから小さい子たちを守ってあげられるかもね、と話をする。「そうだね!」と娘は意気揚々とようちえんへ向かった。

お迎えに行くと、チラシで折った小さな袋に入った炒り豆を食べながら娘はいた。今日は保育中に大豆をフライパンで炒って、みんなで袋に詰めたようだ。私を見つけると、「Sくんがね、ブランコに座ってたら、鬼が背中トントンして、持ってた海苔巻き投げつけたんだよ」と興奮気味に話しかけてきた。鬼に背中トントンされるなんて夢に出てきそうだ。

お当番だったお母さんに、鬼が来て娘は大泣きだったと教えてもらう。

バレエの後家に帰って、今日の鬼の話をする。「Iくんのお父さんが海苔巻き食べに来てたから、Iくんのお父さんが鬼なの?と思ったけど...」ドキッ。「でも違うと思う。鬼が黄色いパンツ履いてて、黄色のパンツは鬼じゃないと持ってなくて、売ってないから」。パンツが鬼の信憑性を高めてくれたらしい。

その日撮影された動画を見たら、全身青に身を包み、黄色い虎柄のパンツを履いて、赤いお面を付けた鬼が、デッキブラシを持って迫ってきていた。動きはやさしいのだけれど、これは近づいてきたらこわいかもしれない。年少も含む男の子たちが勇敢に豆まきをして、娘は鬼が近づいてくると、逃げ惑い大きな口を開けて泣き、園長にしがみついていた。

もらってきた豆の残りを夕飯後に「おにはーそと、ふくはーうち」と言いながら、娘が自分の口と私の口の中に交互に豆まきする。たっぷりあったから豆ご飯にしようと思っていたのに、気がついたら空っぽになっていた。


2024/2/3(土) いろんなものの命と手触り

娘と二人、電車に乗って隣町へ。先週に引き続き、仕事でシニアの演劇を鑑賞する。

ホールに行く途中の道端で河津桜を発見した。濃いピンクの花がチラホラと咲き始めている。「きれい!」娘は地面に落ちている花のひとつを拾って、大事そうに持った。

先週紫色のドレスを着ていた娘は、今週はピンク色のドレスを着ている。我が家には私の母が娘に作ってくれたドレスがたくさんあるのだ。

会場に着くと、入り口の近くに立っていたお仕事相手の方が「あら〜今日もドレス!すてき!」と言ってれた。娘は「ドレスってわかってたね」と嬉しそうだった。

芝居は筋を理解する必要があるから、ダンス以上に難しいかもしれない。最後まで静かに見ていてくれたが、芝居後のトークショーではさすがに退屈したのか、「暑い」と言って、客席から滑り降りて、床にペタっと座っていた。

終演後に、ホールの近くにあるカフェに向かう。「終わったらお茶して帰ろうね」と約束していた。時間は14時過ぎだったが、遅めの朝ごはんを食べたために、昼ごはんはまだだった。コーヒーやジュースと一緒に、プリンとアップルパイも注文する。

娘は「うまい!」と言いながら、プリンを小さな木のスプーンにもりもり乗せて食べていた。

食べ終わると、「ごはんも食べたいなー」という。おやつを2つも食べたのに!と思う。ちらっと横を見ると、隣の隣の席に座っていたおばあちゃんが、ピザカッターでピザを切り分けていた。「ピザ食べたくなっちゃったんでしょう?」小声で聞くと、にこりとしながら頷いた。

奮発しておやつを頼んだのに、これからピザかぁと思ったけれど、仕事に付き合ってもらったお礼だ、仕方ない。再びレジへ向かう。

娘はピザカッターを使いたがって、食べやすいサイズに切り分けると、地元産の玉ねぎとコンビーフが乗ったクリームソースのピザを、おいしそうに頬張っていた。

食後に本屋さんへ。小さいけれど、いつもセンスある面白い書籍が並べられている本屋さんで、近くに来たので寄って行きたいと思っていた。

私は隅から隅まで書棚を眺めて、気になる本を手に取る。

娘は早速古本の棚から絵本を取り出す。宮川ひろさん・作、林明子さん・絵の『びゅんびゅんごまがまわったら』だった。

「これ図書館で借りたことあるよ」「〇〇ちゃんは忘れちゃったから、読んで!」。備え付けられていた椅子に座って読ませてもらった。

絵本に登場する、あまのじゃく、と自称する校長先生が魅力的な人で、子どもたちと先生の遊びを通じた交流が描かれている。いい絵本だなぁ。

読み終えて「これ買う!」と娘が言う。お年玉でもらった100円玉を財布から取り出し、少し高めのレジに手を伸ばして、お兄さんに渡した。

駅に向かうお堀端の並木道、両脇には桜が植えられている。「春になったらここは桜がきれいかもね」「桜が咲く日になったら来ようね」。

お堀の中に鯉がいて、足を止める。娘が手を伸ばすから、鯉が集まってきて、こちらを向いて口をパクパクさせていた。「パクパクしてもらうとやわらかくて気持ちいいんだよ。歯もないの」。ようちえんのお散歩中に、鯉の口に手を入れたことがあるらしい。

しばらく手を伸ばしていたが、お堀は高さがあるため鯉には届かず、手を引っ込めて歩き始めた。「〇〇ちゃんエサくれないんだと思って、しょんぼりしちゃったかな」。鯉たちがしょんぼり頭を垂れながら解散していくさまを想像するとなんだかおかしい。

もしも今日ここにひとりで来ていたら、足早に行き帰りの道を歩いていたに違いない。娘といると、匂いや音や色や感触、いろんなものの命と手触りを感じる。


2024/2/4(日) 菜の花で視界がぼやける

お友達夫婦のKくんとCちゃんがわが町に遊びに来てくれた。実に4年ぶりだ。

夫と娘が駅まで迎えに行ってくれたので、私はランチをする予定のお店へ向かう。キックボードで迎えに行った娘が、みんなを先導しながら駆けてくるのが見えた。

魚がおいしいお店でランチをして、A山へ登る。坂道が続くけれど、一番距離が短いルートを選んで登った。ようちえんで山道を登り慣れている娘は、ひょいひょいひょいと先を行く。大人たちがはぁはぁと息をつきながら追いかける格好となった。

久しぶりに冷えて、小雨も降っている。一番分厚いコートを着て、手袋までしてきたが、登っているうちにポカポカと温かくなってきた。

一年で一番の観光シーズンを迎えたA山だが、あいにくのお天気とあって、ほとんど人がいなかった。山頂を彩る名物の菜の花は、くもり空でよりキラキラと輝いて見える。

写真撮影をして、展望台の望遠鏡から遠くを眺める。望遠鏡に目を当てていた娘が「見て!きれい!」と向きを固定したまま覗き口を譲ってくれる。足元の菜の花がクローズアップされすぎていて、視界が黄色くぼやけた。

行きとは別のルートで下山する。

車に乗って、お友達夫婦とEコーヒーに向かった。ちょうどライブの時間と重なり、聴こえてくる生演奏に身体を揺らしながら、Kくんと夫と話をする。バリバリ稼ぐことと生活と、本当の豊かさってなんだろうというような話だったと思う。

娘はCちゃんとお絵かきをしたり、アプリでゲームをさせてもらったり、たくさん遊んでもらってご機嫌だった。

KくんとCちゃんを駅まで送る。家に戻ると、実家に行く準備をして、電車に乗った。3駅ほど過ぎたところでトロンとし始めた娘は「眠い」という。「倒す?」グリーン車の座席を少し倒す。そのまま1時間ちょっと電車に乗って実家近くの駅までよく眠った。


2024/2/5(月) ちょっと高級なビニール傘

朝から雨模様。今日は雪になるようだ。娘は「雪だるまつくりたい!」とはしゃいでいる。

私は実家の部屋で朝から仕事をさせてもらう。娘はリビングでおばあちゃんと遊んでいる。

お昼ごはんに母が作ってくれたラーメンを食べた。野菜炒めとつまみ海苔が乗ったラーメン。お腹の中が温まる。

昼食を食べて私はすぐに取材へ出かける。傘立てからなるべく大きめなビニール傘を取り出し、実家を出る。開いてみると、紀伊国屋のマークが付いていた。今私は、ちょっと高級なビニール傘をさして歩いている。その事実にむふふとなりながら、駅に向かう。

電車に乗って取材先の最寄り駅に到着すると、雨はすでに雪になっていた。

取材が終わって外へ出る。雪はさらに強まっていた。駅のホームから、黒いビルを背景に雪がしんしんと降る様が見えて、思わず立ち止まり写真を撮る。

実家の最寄り駅に着く。駅の前にずらりと並んだレンタサイクルの椅子に、同じ高さで雪が積もっている。駅前の公園では、小学生ぐらいの男の子が雪を捕まえようとしているのだろうか、空を仰いで素早く手を動かしている。

私はまだ誰も歩いてなさそうな道を選んで、うっすら積もったばかりの雪に足跡をつけながら歩いた。

お腹が空いたな...と実家近くのスーパーに吸い込まれていくと、レジに人が並んでいる。ちょうど夕方の買い出しで混んでいる時間帯のようだ。と、並んでいる列に娘と母を発見。近づいていくと、目が合った娘の顔がほころんだ。「これ買ってもらったの!」雪遊び用にと買ってもらったらしい、スキー用の手袋を見せてくれる。

母と娘と、スーパーから外に出る。すっかり暗くなっていた。雪はどんどん降ってくる。娘は道端の雪を両手で集めて持って歩く。スキー用の手袋をしているから無敵だ。と思ったら滑って転び、雪玉はどこかに消えた。また雪をかき集め、歩く娘の頭を白いものが飾る。

実家マンションの前の広場にも、雪が積もっていた。娘は雪を踏みしめながら歌い、はしゃいでいる。小さな雪だるまがあった。娘もつくる!と雪を集めた。母が雪玉を転がしてみせる。「〇〇ちゃんも!」と雪玉を転がし、雪だるまができた。近くにあった枝を両脇にさす。

私のちょっと高級なビニール傘にも、随分雪が積もった。娘はまだまだ遊んでいたそうであったが、大人は寒くて帰りたい。おばあちゃんと明日雪遊びをする約束をして、家に入った。


2024/2/6(火) ゆきっ、ゆきっ、ゆきゆき

起きてくつろいでいると、「ママ、ママ」と娘の声。実家だと、娘は私が布団から居なくなったことにすぐ気づいて目を覚ます。「一緒に起きたかったのに」。昨日も言われたのだが、よく寝ているように見える娘を起こしたくない。

栄養も品数もたっぷりな実家の朝食を食べて、私は朝からパソコンに向かう。娘はおばあちゃんと雪だるまをつくりに行ったようだ。

やがて戻ってきた両親と娘に、外へお昼ごはんを食べに行こう、と誘われて外へ出る。

「ゆきっ、ゆきっ、ゆきゆき」。娘は歌いながら、道路の脇に積まれた雪を見つけては踏みに行く。ところ構わず足を突っ込んでいたら、「なんか入った!冷たい!」。とうとう長靴の中にまで雪が入ったようだ。片足立ちで私に掴まって長靴を脱ぎ、おじいちゃんに雪を出してもらった。

焼肉屋さんに入る。入り口に塗り絵と色鉛筆が置いてあって、着席するとすぐに娘はプリンセスのドレスの色塗りに熱中し始めた。紙を固定させ、右に左に身体を動かして色を塗る。

食後に娘と母はお茶していくという。「ママも一緒!」と娘は私にしがみついて離れようとしなかった。仕事の続きがしたい私は、大きな道路に出るまで一緒に行って「待ってるね」と離れて実家に先に戻った。

仕事をしていたら娘と母が戻ってきて、自宅に帰る準備をする。娘の白いコートは、おばあちゃんに洗ってもらったばかりなのに茶色いシミができていた。「茶色くなってるよ」と言うと、「ココア飲みました、って書いてあるでしょ」とちょっと得意気だ。

「ココアいいな」「クッキーも食べた」「え!いいなぁ。食べたかった」「食べたかったなら一緒に来たらよかったでしょ」その通りすぎてグーの音も出ない。

駅まで車で送ってもらう。ココアココアと聞いていたら飲みたくなって、ホームでココアを買った。

グリーン車で2人で分け合って飲む。娘の唇の上に茶色いヒゲが現れた。最後の一口を飲んだ娘が「星が出てきた」と言うからペットボトルの口を覗き込むと、たしかに底には、円を囲んで透明な5つの突起が浮き上がっていた。

実家でもらってきたりんごを切り分けて食べる。出先でりんごを食べるのは、なんだか外国にいるみたいで好きだ。

私はパソコンを取り出し、娘は座席を倒すと寝始めた。

ふと横を見ると、抱っこ紐で胸に抱えているぬいぐるみのライオンとキスしたような格好になっている。苦しくないだろうか。ライオンを動かすと、同じ方向へ娘の首も動き、ライオンに顔を埋めるような体制になった。

小さい文字を追うのに目が疲れて、パソコンを閉じ、本を読む。娘の口から垂れたよだれをハンカチでぬぐう。

最寄駅の一つ前で名前を呼んで体を揺する。なかなか起きず、抱っこして降りようかと一瞬思うが、パソコンや着替えの入った荷物に加えて5歳を抱えるのはさすがに重い。

「もう着くよ!」より気合いを入れて呼びかけ、赤い頬をして目を開けた娘の手を引いて電車を降りた。

家に着いて、娘と夫がお風呂に入る。呼び出しボタンで呼ばれて、なんだろうとお風呂に向かう。ドアを開けながら「ぱお」と言う。ハロー、みたいなイメージだ。「思ってたのと違ったね」「ぱお、は意外だった」と夫と娘が言い合っている。「ひとりであがれるでしょ」か「なんで呼んだの?」と言われると予想していたらしい。予想の斜め上行く答えを出せて嬉しい。

夕飯を食べた後に、私はお風呂に入る。娘は夫と一緒に寝ていると思ったが、お風呂を出ると「マーマーきーーてー」と呼ぶ声がした。布団に入ってから30分以上寝付けていないらしい。

寝室へ行くと、娘が起きていた。「ママ、くっついて寝よ」という娘と、同じ布団に入ってくっつく。「〇〇ちゃんはさみしいタイプなんだ」。私と離れておばあちゃんと遊んでもらってた娘は、それ以外の時間でいつも以上に私を欲することがある。そんな時間を埋めるように、ギュッとくっついてしゃべりながら、気がついたら寝ていた。


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