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【Concert】リリア開館30周年記念 埼玉ゆかりの名歌手たちによるニューイヤー・コンサート

 前後してしまいましたが、川口リリア・メインホールで行われたニューイヤー・コンサートのレビューです。こちらは、埼玉ゆかりの歌手総勢12名(澤畑恵美さんは体調不良のため当日欠席)がそれぞれ得意のアリアを2曲ずつ歌う、というなかなかに豪華な内容のコンサートでした。個別のパフォーマンスについてあれこれいうのは、こういうコンサートの場合は「野暮」というものでしょう。イタリア、フランス、ドイツ、チェコ、ロシア、そしてオペラにオペレッタ、選曲も実にバラエティ豊かで、しかも通常のオペラの舞台と違って「2曲入魂」ですから、みなさん、それぞれに濃密な歌唱でした。披露された曲は最後に書いておきますのでご覧ください。

 この手のガラコンサートの場合、注目は女性陣のドレスです…って、え、違う?いや、私はすごーく注目しますよ。だって衣裳じゃないからその人のセンスが出るじゃないですか。その点、今回の歌手の皆さま、歌以上に個性が出てましたね。藤田美奈子さんは品の良いエロスを感じさせるもの。小川里美さんはスリムなお体にあったシルエットで優雅。光岡暁恵さんは正統的なお姫様スタイル。林美智子さんはパッと大輪の花が咲いたよう。小川明子さんは大人の朱赤ですっきりと。増田のり子さんも大人らしい上品な華やかさ。坂本朱さんは個性的でゴージャス。これ、歌われた曲にも合っていて、こういうところできちんと「自分」を表現できるということは歌い手にとってとても大切だなと改めて感じた次第です。男性陣はみなさん黒燕尾もしくはタキシードなので、特に感想ないです(笑)

 指揮の大井剛史さんは、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団を手堅くまとめ上げ、また歌を盛り上げる手腕にも長けていたと思います(小川里美さんが歌った「山はわが故郷」では指揮台を飛び降りて飛び跳ねながら手拍子をする場面も!)。それぞれに個性の違う歌手、曲に合わせていくのは簡単なようでいてなかなかに大変なこと。良いお仕事をされてました。司会の大林奈津子さんの上品な進行も嫌味がなくてよかったです。

 川口リリアは30周年だそうですが、場所柄なかなか行く機会がなく、音楽ホールの方は何回か行ったことがあるのですが、メインホールは今回が初めてでした。お客様はおそらくいつも足を運んでいる方々なのでしょう、音楽をゆっくりと楽しんでいる様子で、また休憩時間にもロビーで大声でおしゃべりする人などもなく、このホールがたくさんのお客様に支えられているのだなと感じました。機会があれば、またコンサートを聴きに来てみたいと思います。

2021年1月16日、川口リリア・メインホール。


藤田美奈子:グノー『ロメオとジュリエット』から「私は夢に生きたい」

大槻孝志:チレア『アルルの女』から「フェデリーコの嘆き」

小川里美:グノー『ファウスト』から「宝石の歌」

原田勇雅:ジョルダーノ『アンドレア・シェニエ』から「祖国の敵」

光岡暁恵:ドニゼッティ『ルチア』から「あたりは沈黙にとざされ」

林美智子:トマ『ミニョン』から「君よ知るや南の国」

高橋淳:プッチーニ『トスカ』から「星は光リぬ」

小川明子:ビゼー『カルメン』から「セギディーリア」

増田のり子:ドヴォルザーク『ルサルカ』から「月に寄せる歌」

坂本朱:サン=サーンス『サムソンとデリラ』から「あなたの声に心は開く」

友清崇:モーツァルト『フィガロの結婚』から「もうあんたの勝ちだと言ったな」

    休憩

増田のり子:レハール『ジュディッタ』から「熱き口づけ」

高橋淳:レハール『微笑みの国』から「君こそ我が心のすべて」

藤田美奈子:ヴェルディ『椿姫』から「ああ、そはかの人か〜花から花へ」

小川里美:カールマン『チャールダーシュの女王』から「山はわが故郷」

小川明子:サン=サーンス『サムソンとデリラ』から「愛の神よ、私に力を与え給え」

光岡暁恵:ヴェルディ『リゴレット』から「慕わしき人の名は」

大槻孝志:チャイコフスキー『エフゲニー・オネーギン』から「青春は遠く過ぎ去り」

坂本朱:グノー『ファウスト』から「花の歌」

友清崇:ベートーヴェン『フィデリオ』から「これはいい機会だ」

林美智子:ビゼー『カルメン』から「ハバネラ」

原田勇雅:ビゼー『カルメン』から「闘牛士の歌」

アンコール ヴェルディ『椿姫』から「乾杯の歌」


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