出席簿＃04「つながるきっかけ、新しい席」
【月曜更新】「おしゃべりな出席簿」
４月15日、月曜日。
桜の季節が一瞬で過ぎ去ったかと思えば、
もう初夏を感じさせる日差しが注ぐようになりました。
うちは先日慌てて半袖を出し、ようやく冬物をしまったところ。
寒暖差の大きな先週でしたが、皆さまお元気でしょうか？
さて、今月の「おしゃべりな出席簿」は、席替えのお話。
皆さんは席替えって好きでしたか？
あるいはもし現役学生の方がいらっしゃるなら、
席替えって好きですか？楽しみですか？
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（品薄・品切れになりがちですが、数日で補充されます。ご了承ください。）
「つながるきっかけ、新しい席」
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入学式から半月も立つと、ある要望が届き始めた。ことの起こりは学級日誌に登場した一文。「先生、そろそろ席替えがしたいです」。すると翌日の日誌にも「席替えしたいです」。とたんにクラス中から席替えを求める声が上がり出す。男女も席の前後もなく、誰も彼もが何かにつけて「先生、席替えは？」なんでなんで。席替えって放課後の時間取っちゃうし、移動が大変じゃないの？
「えっと、近くの人とはもう充分仲良くなった気がするけど、席遠い人とはそうでもないんで」と、これはクラスで１、２を争う元気男子の声。「実は、まだ話せていない人がいて」と言ったのはちょっと控えめな女の子。そうか。彼らはつながるきっかけを求めていたんだ。
違う中学から集まってきて、手探りで関係を築いていく日々。まだよくわからない世界でめいっぱい手を伸ばすのは勇気がいるものだ。だからこそ、の「席替えしましょう」。それは特定の「誰か」を意識して出た言葉ではなく、新しく「誰か」と話したいという願いの結晶みたい。入学式から席は出席番号順。日直も出席番号順。連日学級日誌に「席替えしましょう」が登場するなんて、いい信頼関係を築けた証だろうと勝手に安心してみる。隣近所の席同士、「席替えしたいね」と話す裏には、「私たちはもういっぱい話したし席遠くなっても大丈夫だよね」が見え隠れしていた。
ここはやっぱりくじがいいかな。番号が書かれた紙をお菓子の箱に入れて教室へ持っていくと、シンプルこのうえないくじに大盛り上がりの生徒たち。小さな紙箱の中に運命を感じたり希望を抱いたり、そんな彼らがまぶしく見えた。明日からは念願の新しい席。くじを引いたその手で、これからまたたくさんの絆が結ばれていくのだろう。
（2011/5/25 朝日新聞島根版掲載）
作品に寄せて
冒頭で席替えって好きですか？と投げかけてみましたが、
私が担任したクラスは席替えを楽しみにしている生徒が
思いのほか多かったように感じています。
実は私、教員になってしばらくは「席替え」って
あまり歓迎されないイベントではないかと思っていました。
「思いのほか」と書いたのは、このため。
私のクラスでは席替えを終礼時にすることが多かったのですが、
終礼って早い方が嬉しくないですか？
部活の準備もしたいし、隣のクラスの子とおしゃべりもしたいし、
塾に直行の子もいるし、バスと列車を乗り継いで帰る子もいる。
私が話すの苦手、というのもあるのですが、
うちのクラスの終礼って短かったんです（たぶん）
ところが席替えをしようとなると、
たとえばクジだったら全員が引いた上で、
座席表を確認して、席を移動して……
もちろんやり方にも依るんでしょうけれど、
これ、まあまあ時間がかかるんですよね。
机や椅子ごと移動するスタイルと、人だけ引っ越すスタイル、
こちらも生徒の好みや教員の方針によって違うのですが、
前者だと席移動がこれまた大変。
私が担任したクラスで一番多かったのは45人学級。
この規模になると、全員が机と椅子を運んで異動するなんて、
交通整理係が必要になってくるほどの、もう一大行事なんです。
そんなわけで、席替えって「大変」と思っていた私でした。
そのイメージを180度変えてくれたのがこのときの生徒たちです。
隣の席の人と「席替えしたいね」って話せるなんて、
とっても安心安全な関係性だと思いませんか？
そのことに気づかされて以来、席替えをいかに楽しくやるか、
私の関心はそちらの方に向いていきました。
まあ、私が盛り上げようが盛り上げまいが、
楽しみ上手な生徒たちはいつだって大盛り上がりなのですが……。
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