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医療介護現場での笑顔を増やすプロジェクト -スマレポ日記1-

私は在宅医療に関わっている医師です。
在宅医療では患者さんのご自宅や施設に訪問するため、患者さんの生活の中に入って診療を行います。
このため、病院内では起こらない課題に直面することも多く、「こういうものがあったらいいのに」と思うことも多いです。

このため、作りたいものを自分で作れるようになりたいと考えて2021年10月からプログラミングを学び始めました。

これまで、熱中症予防に室温が上がったらブザーがなる仕組みや、運動しない方が足上げ運動を頑張りたくなる仕組み服薬確認や生活リズムの把握に使える仕組みなど、患者さん達に使ってもらいたいものや、自分の診療で日々用いる仕組みなど様々なものをつくってきました。

そして今、これまで蓄積した技術や知識を活かして作ろうとしているのが、スマイルレポートという仕組みです。

スマイルレポートとは何か

最初に考えたのはヒヤリハットレポートのデジタル化

もともと行おうとしていたのはヒヤリハットレポートのデジタル化でした。

これまで紙ベースだったヒヤリハット報告をデジタル化することで、報告と共有をしやすくなれば、同じミスの繰り返しを減らすことができ、さらには重大な事故も減らすことができるという考えです。

ヒヤリハット報告のデジタル化はGoogleフォームの仕組みを使えばわりと簡単に実装できることがわかりました。
しかし、現場での運用を考えた際に、ヒヤリハット報告はミスの報告であり報告者が報告するモチベーションが上がりにくいという課題や、そもそも報告者にヒヤリハット報告を行う明確なメリットがないという課題に気づきました。

サンクスレポートでポジティブな情報を共有する

そこで考えたのが、サンクスレポートです。
職場内で他のスタッフに感謝した出来事をサンクスレポートとして共有し、ポジティブな情報を共有することで職場の笑顔が増えるのではないかと考えました。
また、レポートを報告するという習慣がつくことで、ヒヤリハットレポートの報告も増えるのではないかという考えもあります。

スマイルレポート

サンクスレポートでポジティブな情報を共有して職場に笑顔が増え、ヒヤリハットレポートによってミスの繰り返しが減り職場や患者さん達に笑顔が増えるということを目指しているため、二つのレポートを合わせた仕組みをスマイルレポートと名付けました。

さらなる改善を目指して

サンクスレポートとスマイルレポートをパソコンやスマホから入力できる仕組みのデモサイトがこちらになります。

早速、12月13日から法人内での運用を始めましたが、開始日に3件のサンクスレポートがありましたが、翌日、翌々日は報告がないという状況です。
急にデジタル化したと言われても、どうしていいかわからないから様子をみようと考えているスタッフもいるでしょうし、まだまだ現場で話し合いながら運用法を考えていく必要があると考えています。

ポイント制の導入

さらに報告しやすくする仕組みとしてポイント制の導入を考えています。

↑がデモサイトになるのですが、サンクスレポートもヒヤリハットレポートもクリックするだけの簡易報告で点数が入るし、「レポートなし」を報告しても点数が入るという仕組みです。
もちろん、詳細報告を行えば大きな点数が入ります。
私の法人では、点数の合計を賞与の基準の一つとするか、忘年会での景品をつけるかなど、何らかのインセンティブをつけようと考えています。

現場の聞き取り

今後の改善に向けて聞き取りを行いました。

まずお聞きしたのは、複数の介護事業所を運営している法人の役員の方です。
その法人では、やはり紙ベースでヒヤリハット報告をしているとのことですが、皆で共有した方がいいと上長が判断したものは適宜LINEを使って情報共有をしているとのことでした。
また、利用者さんやご家族ともLINEで情報共有をしているとのことです。
一方で、仕事の関係者とLINEを交換することの抵抗もあるかと考えます。
サンクスレポートであればリンクをお伝えするだけなので、患者さんやご家族からもサンクスレポートをいただくようにしても良いかもしれないと考えました。

次にお話をお聞きしたのは、複数の在宅医療クリニックをもつ法人の看護部長さんです。
ヒヤリハット報告については以前から注目していて、デジタル化したいと思っていたそうです。
特に在宅医療の場合は多職種連携についてと患者さん関係のヒヤリハットが重要だと考えているとのことでした。
ヒヤリハット報告の活用によってミスが減れば患者さんやご家族の満足度向上にもつながるという視点は、この方とのお話で得ることができました。

訪問看護ステーションを運営している方にもお話を伺いました。
この方は元々サンクスレポートのような仕組みに興味があり、サイボウズ株式会社まで見学に行かれたこともあるとのこと。
こちらの訪問看護ステーションでは、ヒヤリハットレポートを書くことを奨励しており、多くのヒヤリハットレポートが上がってくる状況にあるとのこと。
訪問看護で一つ問題になるのが車の事故ですが、保険を使う際などにも情報が必要であり報告を行う重要性を普段から伝え続けているそうです。
ヒヤリハット報告が多い背景には、ミスを報告しても責められないという心理的安全性が醸成されているということもあるのだと思います。
また、実際のヒヤリハット報告書を見せてもらったのですが、左側が一般的な報告書と同じ書式で、右半分にはヒヤリハットの原因として40を超える項目が挙げられチェックするような仕様となっていました。
再発防止という意味でも原因についてよく考えることは重要であり、何からの形で取り入れたいと考えました。

もうお一人、訪問看護ステーションを運営されている方にお話をお聞きしました。
この方は、FISH哲学の観点からスマイルレポートのような仕組みを運用したいと考えて、過去にシステム会社に相談されたことがあったとのこと。
さまざまな制約があり実現に至らなかったということで、今回の仕組みにとても興味を持ってくださっていました。
また、今後の運用として、ヒヤリハット報告によって行われた対策によってミスが減ったことが示せるようにデータを抽出したいということや、ヒヤリハットの原因を考えるときに、どうしても人の要因(その人だからミスが起きた)という発想になりがちだが、報告書を工夫することで環境やシステムが要因だと目を向けられるような仕組みにしたいとという話もありました。
また、今後はクラウドファンディングを行なってプロトタイプを公開し、使用してくれる支援者とともに仕組みを改善し続けていきたいことをお伝えしたところ、ぜひ支援したいとのお言葉をいただけました。

共有範囲について

報告された情報の共有範囲についても今後の検討事項です。
今の時点での仕組みではGoogleスプレッドシートの公開範囲を設定することで共有する人を決めることができます。

サンクスレポートについて、当法人のある新人スタッフからは「まだわからないことが多い中で、サンクスレポートによってこういう行動をすると周囲が助かるのかとわかるのはありがたいし参考にしたい」と反応があった一方、別のスタッフからは、全員にサンクスレポートを共有すると同じ業務をしている人が「あの人は感謝されてるのに私はされてない」と落ち込むこともあるのではないか、という意見もありました。
この辺りも、法人で運用しながら考えていきたいと思いますし、使う事業所ごとに設定を変えても良いと考えています。

クラウドファンディングに向けて

このスマイルレポートの仕組みは、うまく活用できれば職場の笑顔を増やすことができると考えており、良いものを作って多くの現場で使用してもらいたいと考えています。

このため、2022年1月中旬にクラウドファンディングを行うことを計画中です。
クラウドファンディング開始までに、ポイント制を導入したスマイルレポートの仕組みを実装し、支援してくださった事業者の方達と実際に運用しながらフィードバックを受けてより良い仕組みを作り上げていくという計画です。

こちらがクラウドファンディングページになります。

現時点でページはまだデジタルヒヤリハットのアイデアで止まっていますが、公開までにクラウドファンディングページもスマイルレポートの仕組みも作り上げていく予定です。
また、noteやQiita記事、twitterでも経過を報告していくので、ぜひフォローいただければと思います。



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