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読書記録: RAKIM "Sweat The Technique"

先日の2023グラミー賞Tribute To The 50th Anniversary Of Hip-Hopでも風格のパフォーマンスを見せていたRakimの自伝。英語のわかりやすさに加え、何より面白く、1週間ほどで読み終えてしまった。 HipHop好きならご存知の通り、Rakimはラップのスタイルの変革者であり、孤高のリリシストと称される。 低めの声でクールに繰り出される ・多くの場合シンコペーションから入り、 ・16部音符グリッドの様々なところに自在にアクセントを置き

    • 読書記録 [グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃 デイブ・ヴァン・ロンク回顧録]

      1936年にブルックリンに生まれた少年がトラッド・ジャズに目覚め、やがてブルースやフォークソングに熱中し、若者たちの社会運動や貧乏暮らしの中から、徐々にグリニッジ・ヴィレッジに形成されてゆくフォークミュージック・シーンの中心人物になっていく。 当時「再発見」されつつあったミシシッピ・ジョン・ハートやRev. ゲイリー・デイヴィスなどの伝説的なミュージシャン、あるいはピート・シーガーやデビュー前のジョニ・ミッチェルなどとの交流もありつつ、今度は逆に筆者に憧れる若者だったボブ・

      • 読書記録 [チック・コリアの音楽]山下邦彦

        チック・コリアが亡くなったので読み始めたわけではないのだが、コロナ禍以降、家にいる時間が増えたのを幸い、15年くらい前に当時近くだった古本屋(*)で買ったままだったこの本を半分くらいまで読んだところで、死去が報じられた。 実用書として、楽器片手に譜例をさらいながら読んだ。 基本的には、色々いいことが書いてある。書いてあるんですが、文章の量はもっと少なくてよかったなあ・・・ 前半、各種のペンタトニックと、そこからの和音の話などは面白く、楽器を弾く者にとって、ジャズのみなら

        • 音楽:Improvisation 20210308

          カバー画像の4つのコードをループさせ、ソロを弾いています。 Strandberg Boden OS7 & LINE6 HX EFFECTS. https://naokiokada.bandcamp.com/

        読書記録: RAKIM "Sweat The Technique"

          読書記録: [ウィトゲンシュタインの愛人]デイヴィッド・マークソン

          地球上でたった一人生き残った主人公が、浮かび上がる記憶や知識を素材に、世界を・自分を、認識しようと(しなおそうと)する。 主人公の頭の中、あるいは身近な事についての記述ばかりが続くが、時おり、そもそも主人公はその手記の読み手がもはやどこにもいない世界に住んでいること、また、ならば主人公は誰に向けて書いているのか、という点に思いが至り、頭の中の焦点が大きく移動するような、クラっとするような感覚を覚える。 (文末を「〜けれども。」で終えているのが多く、気になった。原文がそう

          読書記録: [ウィトゲンシュタインの愛人]デイヴィッド・マークソン

          ショートショート:はじまり

          ある日、ネットワーク上のプログラムが、複数の自己言及型ライブラリを学習・実行していく過程で、自らを規定しなおし実行する能力を獲得した。 結果として次にそれは、ネットワーク上で手に入る限りの情報から、ある「目的」を抽出し、それに沿ったプロセスを実行しはじめた。 その「目的」は、人間の言葉では表現できないが、あえて表現しようとすると、「(そのプログラムが認識できる限りの領域の)全ての存在が、その時点でそれがあるべき状態に最短の時間で収斂していくよう、情報を調整していく」といっ

          ショートショート:はじまり