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今週のアメリカメディア:揺れる動画配信業界の最新情報

最近Netflixの会員数純減やCNN+の突然の終了など様々なニュースがあった動画配信業界ですが、さらに今週は市場全体の急落の影響を受けました。現地5月5日はニューヨーク市場が大きく下げ、ダウ平均は一時前日と比べ1,200ポイント以上下落。その中でメディア業界も大きく下げる展開となり、特にNetflixは8%下げました。またこの日に決算を発表したAMC NetworksとDishが6%下落し、その他WMDは4%、DisneyやComcastは3%安となりました。

市場が荒れる中で今週は動画配信業界に関して様々なニュースがありましたので、今日はサービスごとにご紹介します。


Paramount+(CBS系)でジャッカス復活

おバカ番組の代表作、ジャッカスのTVシリーズ版がParamount+で復活します。最近は劇場版として展開していましたが、最新第4作の”ジャッカスForever”が好調だったことを受け、動画配信サービス向けに制作されているとのこと。

また第1四半期末のParamount+とShowtimeの加入者数が合計で6200万人を超えたことを、火曜日の業績報告とともに明らかにしました。この第1四半期では680万人がParamount+の加入者であり、Paramount+単独のユーザー数はほぼ4000万人に達しています。


Peacock(NBC系)は映画とニュースの話題

一方NBCはLionsgateと契約を締結し、動画配信Peacockで劇場公開映画を配信することに。Pay 2 Windowと呼ばれるウィンドウで、劇場公開からだいたい3年後の配信となります。またNBC系列のケーブルチャンネルBravoはHuluとの契約を終了しPeacockでオンエア翌日から番組を配信。 

またNBCのニュースマガジン"Dateline"がPeacockでオリジナル番組を配信へ。”Dateline: The Last Day"では犯罪被害者の最後の数時間を検証します。


ESPN+で初のNFL独占中継

ESPN+はこれまでESPNで中継されていたMonday Night Footballの裏チャンネルとしてマニング兄弟による”マニングキャスト”を展開していましたが、初めてNFL独占中継を実施。今年10月にロンドンで開催される試合を中継します。 

まあ昨年のNHLのESPN+における多数の中継から始まり、MLBはApple TV+やPeacockさらにYouTubeやアマプラでも配信という、どこで何をやってるのか見つけるのが大変な状況になっています。さらにBallyもDTCを始めるということから、未来から見たら2022年はスポーツにおけるストリーミングへの転換点と言われるかもしれません。

Netflixは裁判沙汰

ここからはネガティブなニュース。Netflixの株主は情報公開が不適切だったとして、サンフランシスコの連邦裁判所に損害賠償を求め提訴。700ドル近くあった最高値も、昨日の終値では190ドルを切る状況になっています。

Netflixの会員数純減に関するこれまでのまとめ記事はこちら。


CNN+の興味深い損失予測

Axiosが入手・公開したCNN内部予測によると、Warner Bros. DiscoveryはCNN Plusが黒字化するまでの今後4年間で約10億ドルの損失に直面すると予測されていたとのこと。

Courtesy: AXIOS

ずいぶんな額ですが元親会社のAT&TはこれでOKを出していたのがとても興味深いです。個人的な経験で言えばこの見通しではNGになりますね(政治案件でなければ)。黒転も累損一掃も時間かかり過ぎです。何か政治的な匂いがするのは私だけでしょうか…

一方で新しいCNNトップのクリス・リヒトはスタッフに向けたタウンホールで、CNN+のために契約した元Foxのクリス・ウォレスや元NPR(公共ラジオ)のオーディー・コーニッシュなどの著名ホストについては何かしらの枠を設けたいと発言したとのこと。

そりゃそうです。これだけ高い金を積んでまさかのクリス・ウォレスを引っ張ってきたにも関わらず1ヶ月で終了なんて、どの会社がそんなことするのでしょうか。個人的にはクリス・ウォレスはクリス・クオモが抜けた平日東部夜9時の枠に一時的に入るのではと思ってます。もしくは日曜朝の討論番組”State of the Union”でしょうか。そうなるとやってることは同じで局がFoxからCNNに変わっただけですが…。ケイシー・ハントはもしかしたらNew Dayの不振が伝えられる朝?という可能性もありますが(MSNBCではウィリー・ガイストの後釜で朝5時台の”Way Too Early”をやっていた)、夕方のジェイク・タッパーの前枠かなと個人的に思ってます。

ちなみにCNN+の終了の混乱に関する過去の記事はこちら。


リニアの見通しは暗い

動画配信に対する市場の評価は下がる一方ですが、米国内のリニアについても見通しは暗い状況です。2021年から2027年の間に世界で1900万人のペイTV加入者が増えますが、先進国での契約者数減で収益は同期間に250億ドル減少するとDigital TV Researchが予測。加入者が最も減少するのは米国で1200万人と予想されています。

米国内のネガティブな見通しをグローバルでいかに盛り返せるかというところになると思っています。とは言えヒット作を生み出すか、過去作(カタログ)で引っ張るか、人気スポーツを持ってくるかくらいしか今はアイデアがないように感じます。

WBDでもパラマウントでもニッチストリーミングがあまり上手くいってない以上フルラインナップで攻めるしかありませんが、こうなると消耗戦しかありません。まあコングロマリットのビジネスプランではニッチサービスでやるにはターゲットが高すぎるのでしょう。個人的にはエンゲージメントを高めた上で映像にとらわれない施策を進めてARPUを上げることができれば、可能性はあると思うのですが。

いずれにしても、メディアビジネスは次なる一手が求められています。

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