アメリカTVメディアの最も大事な1日 (パート2)
今年のラインナップを紹介する「アップフロント」特集第2弾、今回はパラマウントグローバル、NBCユニバーサル、FoxさらにCWをご紹介します。
パラマウントグローバル
2019年12月にViacomとCBSが合併し、今年2月にパラマウントグローバルに社名変更しました。そのため今回が名称変更後初めてのアップフロントとなります。
60ミニッツをテーマに展開
今年のアップフロントはいつもと違う展開となりました。アドセールスのトップ、ジョー・アン・ロスはCBSの長寿番組”60ミニッツ”のように今年のラインナップを紹介したのです。60ミニッツは20分ほどのレポートを3つ放送する”ニュースマガジン”の先駆け。この番組に出演するスコット・ペリーやレスリー・スタールがパラマウントのドラマからリアリティ番組、さらにスポーツまでレポートに見立てて紹介しました。
ジェームス・コーデンが登場
その後、人気のレイトショー”The Late Late Show”のホストであるジェームス・コーデンが登場。実はジョー・アン・ロスが60ミニッツのプレゼンテーションということで1時間に抑えるという予定が実際は1時間20分かかってしまったためコーデンは早速いじります。
そしてコーデンは今シーズンをもってThe Late Late Showを降板します。降板については残念としながらも「もうアメリカの大統領選を取材する必要はないのだから、笑顔でいなさい」とジョーク。最後はパラマウントを持ち上げます。
NBCユニバーサル
NBCユニバーサルは単一チャンネルのアップフロントを廃止した最初の大手テレビネットワークで、数年前からNBCに加えてBravoなどのケーブルチャンネルも一緒に紹介しています。今年はさらにチャンネルブランドの区切りが薄まったプレゼンテーションとなりました。
ケリー・クラークソンの独壇場
NBCユニバーサルのアップフロントは、ケリー・クラークソンの”Queen of the Night”で幕を開けました。クラークソンは今やNBCで様々な番組に携わっています。"The Voice"の審査員や"American Song Contest "のホストとしてだけでなく、この秋からNBC傘下の放送局でデイタイムからプライムタイムに昇格する"The Kelly Clarkson Show"のホストとして、NBCUを代表するパーソナリティになりました。
セス・マイヤーズのジョーク
Late Night with Seth Meyersのホスト、セス・マイヤーズも登場。彼のジョークを2つほどご紹介します。まずは変わると言いつつ何も変わってない現状。
そしてリブート頼みのNBCをいじる。
Foxは衝撃の事前収録
Foxは月曜日、ほとんど事前収録された番組で先行発表会を行い、業界を驚かせました。他社はほとんどがライブでプレゼンテーションを行なっていたにも関わらずです。
Foxのアップフロントで注目されたのはNFL中継です。"Fox NFL Sunday"の司会マイケル・ストラハンは、同番組がスポンサー・メッセージを表示するための新しいハイテク・セットを導入することを明らかにしました。
また、NFLのトム・ブレイディがFox Sportsと10年契約を結び、NFLのタンパベイ・バッカニアーズの選手としての引退した翌年から放送ブースに立つという発表が大きな話題になりました。ブレイディは短い挨拶の中で、「2月のスーパーボウルで皆さんと一緒に戦えることを楽しみにしている」と述べましたが、今度こそ本当に引退するつもりだと解釈されました(ブレイディは今年初めに引退を表明しましたが、3月に撤回しています)。
Foxのアップフロントは秋のスケジュール発表も具体的に行わなかったということでも異例でした。ドラマ"9-1-1"と"The Resident"の6シーズン目の契約締結に予想以上に時間がかかりアップフロントに間に合わなかったためとのこと。ちなみに両番組とも2022-23年シーズンの放送は既に決定しています。
CWは売却間近?作品キャンセルの嵐
アップフロントが始まる前週、4大ネットワークに続く第5のネットワークCWは多くの番組をキャンセルしました。
もともとCWはその名の通り、CBSとワーナーが共同所有するネットワークで、2006年に前身のUPNとWBが合併する形で誕生します。ここで視聴率を取るというより、その先の番組販売(いわゆる番販)で稼ぐという仕組みでした。しかし現在CWを放送局運営会社のNexstarに売却する交渉が続いており、これまでのビジネスモデルが売却先にフィットしないため今回の大量キャンセルが起きたと見られています。ちなみにNexstarは1995年のWBのデビュー以来、CWも含めて中核的な系列局グループとして展開してきました。
CWのCEOマーク・ペドウィッツは近年テレビ界を覆っている業界の大きな変化を引き合いに出して、「CWがちょっとした転換期を迎えていることはご存じかもしれません」と述べています。「CWは単なるネットワークではなく、単なるメディア企業でもありません。CWは"パワフルな新興ブランド"です」とも発言。果たしてCWはどのように生き残っていくのでしょうか?
今年のテレビ業界に覆う暗雲
以上、各社のアップフロントをご紹介しました。今年のトレンドについて、2つ感じたことがありました。
ネームバリューに頼る戦略
今年は名前が特定できるスピンオフやリブートを頼りる傾向がさらに強まったように感じます。Netflixに対抗する方法として過去の栄光を使わない手はありません。NBCの"Quantum Leap"と"Night Court"はどれだけの人が覚えているかわかりませんが…。そしてシットコムがドラマやリアリティ番組に押され気味で、CBSとABCはそれぞれコメディの時間を減らしました。
テレビでもビンジウォッチ(連続視聴)
動画配信では”Binge-watching”が当たり前になりました。この流れを受けてか、CBSは火曜日に"FBI"シリーズを3本、NBCは水曜日に"Chicago"シリーズを3本、木曜日に"Law & Order"シリーズを放送します。これまでも「段積み」戦略はよくありましたが、3時間連続がここまで多いのはあまり無かった印象です。
ちなみにこれら9つのシリーズはすべてプロデューサーのディック・ウルフによるもの。
もともと地上波番組で成功する確率は2割と言われています。それがストリーミング戦争によりさらに下がっている今、地上波でチャレンジする覚悟はほとんどないというのが今回のアップフロントでハッキリしました。果たして1年後、地上波はどのくらい影響力を保ち続けているか、注目したいと思います。
(Image courtesy: NBCUniversal)
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