<<創作大賞 恋愛小説部門>>連載小説「憂鬱」- 23 S嬢は簡単ではない?
「前にSM嬢をやってた人から話を聞いたことがあるのだけど、肉体的よりも精神的なほうが大変そうなのよね。」美里は、ユリアの友人を紹介してもらう前に、SM嬢に、どういったリスクがあるのかを話した。
「S嬢はプレイ中に相手に対して厳しい態度や行為を示す必要があるのだけど、一方で相手の精神的にも、肉体的な限界も超えない程度に、安全を確保しなければならないの。このバランスを取ることってプロフェッショナルじゃないと難しいのよね。」
「たとえば、どんなことですか?」
「お尻に、フィストを入れてほしいって客はわりと多いのだけど、まずは入口にも、こちらの手にもオイルをしっかりつけて入れてあげないと、切れちゃったりするから。あと、挿入のときの速度や、入れる角度とかも大切なのよね。」
「初っ端から、かなりキツいですね、美里さん。そんな話をしたら、バレリーナの友人ひいちゃうかもです。。。」
「M女よりもS女のほうが、自己認識や自己理解を深めるきっかけにはなるのだけど。相手あっての自分というのは、どちらかといえばS女のほうなのよね。素人であれば、M女のほうが尽くしてるってイメージあるのだけど、プロの場合は、サービス精神が必要なのは、M女よりS女に求められる。
そのためなのかわからないけど、S女のほうが、自分自身の内面と向き合うことが時に辛く感じたりするみたい。」
「メンタルもキツいなんて、S女のほうが大変なのですね。」
「プレイの内容によって、S女もかなりの体力を使うことがあるし、縄で縛ったりっていうのも、案外、簡単じゃないのよね。鞭打ちも、見てるより体力的な負担も多い。
だから、安全にプレイを行うためトレーニングが必要かもしれない。」
「どういう勉強をすれば?」
「やはりS女のプロに手ほどきしてもらうのが一番って思ってて、知り合いが通っている店のS女の方にレクチャーのため来てもらうようにするつもり。」
「それがいいですね。プロのアドバイスが一番ですよね。」
「クライアントとの秘密保持も役割の一つだから、どれだけ権威のあるクライアントと知り合っても、ぜったいに口外できないし。その辺のメンタルもかなりタフじゃないとダメだから。案外、著名人とかにもSM嗜好の人は多いみたい。」
「ハリウッド映画に出てるセレブとかも来るってことですか?」
「映画だけじゃなくて、ビジネスや政治の部門での著名人も来ると思うわ。」
「私は美里さんとSMプレイしたいって思わないけど、仕事として男性に対して、S女のプレイならできるかもしれません。」
「ユリアにはやってほしくないけど、やはりビジネスとして友人を紹介するわけだから、知っておくべきかもしれないわよね。とはいえ、まずはS女もM女のほうのお仕事から学ぶのよ。」
「そうなのですか?」
「そうじゃないと、基本の力の加減がわからないから。」
「自動車学校でまずは急ブレーキ踏んで、どのくらいの勢いで車が止まるのかを知るみたいな感じですかね。」
「そうね。」
#創作大賞2024
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