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実験工房と瀧口修造のこと

アーティゾン美術館「STEPS AHEAD: Recent Acquisitions 新収蔵作品展示」(9月5日まで)で、瀧口修造(1903-79)を中心とする芸術家グループ「実験工房」の作品展示を観られるというので、足を運んでみた。

作曲家の武満徹や湯浅譲二、音楽評論家の秋山邦晴らが参加していた「実験工房」については、音楽好きにとってはもはや歴史上の出来事という感じだが、その雰囲気を知るためにも、このグループの造形作家(山口勝弘、北代省三、福島秀子ら)の作品は大変参考になる。

瀧口修造の詩は、これまでにも読んできたが、かなりシュールで、それよりも今回の作品展示が感覚的にしっくりきた。上記の写真も、瀧口の一連の作品。武満徹の言う「充実した沈黙」が、そこではしなやかに息づいていた。

瀧口は「寸秒夢」という作品のなかに、こんな一行がある。

「自国語に甘えるな。他国語にじゃれるな」

また、瀧口は実験工房の作曲家たちの発表会プログラムにこう書いている。

「新しい芸術を作るためには絶対に実験精神が必要です」

言葉に対して厳しくあること、そして若い芸術家たちに「実験」することを強く推奨し、言葉によって力づけたこと。そういう瀧口の精神的態度にはとても共感する。

瀧口が興味深いのは、彼が美術と音楽の両方をまたぐ芸術全般の精神的な指導者であり、なおかつ詩人・美術家だったという点においてである。
澁澤龍彦によれば、瀧口はとてもみずみずしい、無垢な、好奇心のかたまりのような人だったのだそうだ。
芸術家にはなれなくとも、少しでもそのような存在でありたいものである。

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