文句なし! 2021年最高の時代劇超大作  映像・音・ストーリーで楽しむ『信虎』

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武田信玄の実父『信虎』をテーマに

金子修介監督の時代劇大作『信虎』が2021年11月12日より全国公開!!
映画ファンの方なら、「あの金子監督がっ!」、歴史ファンなら「あの信虎をテーマにした映画がっ!」と色めきたつことでしょう。

「なんのことだかさっぱりわからない」という方、安心してくださいね。


作品のあらすじと本作の見どころについて、この記事でネタバレにならない程度に、じっくり解説させていただきます。てなわけで、最後までお付き合いくださいませ。


『歴史はどうも苦手』という方でも、武田信玄はご存じかと思います。そう。あの有名な戦国武将ですね。今回の映画は、武田信玄の父親『信虎』の物語です。
武田信玄は、父親の信虎と仲が悪く(次男坊ばかりかわいがったので、信玄がすねたという説が)信玄は甲斐の国(現在の山梨県)を統一した後、なんと、父親の信虎を駿河の国(現在の静岡県)へ追放してしまいます。

その後、信虎は駿河の国を離れ、京に移り、将軍 足利義輝に仕えていたのですが、安泰な日々は長く続きません。
尾張国(現在の愛知県)から、義輝の弟・義昭を神輿に乗せて、織田信長が天下をひっくり返さんと京へ入り込んできます。


当然、信長を面白く思わない武将たちとの間で交戦状態になるわけですが、「信長を討たん」とその中にいたはずの信玄が危篤に。

そのことを知った信虎は、甲斐の国へ戻って信玄の代わりとなり信長を討とうとするのですが……とかく苦難が絶えない信虎と、その周囲の人間模様を緻密に描いた作品が本作となります。

とにかく隙(スキ)がない映像

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本作のメガホンをとったのは、金子修介監督。デスノート(2006)をはじめ、多数の有名作品のメガホンをとられている監督さんですが、見ほれるような映像です。
時代劇作品というと、どこかしら『アラ』が見えたりして、がっかりすることが多いんですが、とにかく隙(スキ)がないんですよ。
たとえば、これ。信虎の末娘のお直が家臣の謁見に応じるシーンですが、この時代の高貴な既婚女性は、天上眉といって、眉毛を剃って、額に眉毛を書くんですけど、忠実に再現してますよね。

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戦闘シーンもきちんと時代考証されてますね。この時代は、武家だけが戦闘に参加するわけではなく、農民や漁民などのうち、腕に覚えがある者が戦闘員として雇われることも珍しくありませんでした。本作のこのシーンでは、召し抱えられた伊勢(三重県)の海賊が戦闘に参加しています。


ちなみに、槍で果敢に戦う信虎の忠臣・土屋伝助を演じるのは、『影武者』で織田信長を演じて人気を博した隆大介氏。惜しくも本作が遺作となってしまいましたが、実に躍動的で見事な散り際を演じています。

ご覧の通りの豪華俳優陣ですが、それだけでなく、この記事のタイトルのとおり、サウンドも本当に洗練されてますね。効果音や音楽は、映画の見えない主役級俳優と言っても過言ではありません。

本作では、静寂を表す音も、戦闘のような激しい音も、映像とともにしっかりストーリーの柱になっていて、見ていて非常に心地よいです。

主役は、俳優歴60年の寺田農氏

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そして『信虎』を演じるのは、俳優歴60年の寺田農氏。主演は、本作が36年ぶりとなりますが、実に豊かで、所作一つ、表情全てが、いぶし銀の演技。
それもそのはず、岡本喜八監督『肉弾』(68)、実相寺昭雄監督『帝都物語』(88)、相米慎二監督『セーラー服と機関銃』(81)などの有名監督の作品に主演し、また今日まで作品の規模を問わず、多数出演されている俳優さんです。


息子である『信玄』に追われた身でありながら、家の勃興を考える、ある意味めでたくもある『信虎』の等身大の姿を演じながら、周囲の人間と時代に翻弄されていく様を演じきっているのは、見事の一言です。

これ以上書くと、ネタバレになるのでひかえますが、「そりゃあんた、それじゃ息子から追放されるわな」といったシーンが、映画が進むにつれていくつも出てきて、思わず苦笑いすること必至。過酷ながらも、人間臭く生き抜く戦国時代の人々の生きざまに共感できることと思います。

令和3年11月12日より、TOHOシネマズ日本橋ほか全国公開
信虎オフィシャルサイト

出演:寺田農/谷村美月/矢野聖人/荒井敦史/榎木孝明/永島敏行/渡辺裕之/隆大介/石垣佑磨/杉浦太陽/葛山信吾/嘉門ツオ/左伴彩佳(AKB48)/柏原収史 ほか

監督:金子修介

共同監督・脚本・美術・装飾・編集・時代考証・キャスティング:宮下玄覇

日本作品 上映時間:135分

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