《GBA》パズルバトルRPG『妖怪道』
個人的評価「人間と妖怪の微妙な距離感」
★★★☆☆ (3.7)
ストーリーは単純で薄いながら、妖怪のデザインや戦闘システムなどが非常に個性的で深い味わいのあるゲーム。
しかし、普通にプレイするにしても難易度が高く、せっかくの収集要素などを堪能しようとすると修羅道と化す……。
――好きな部分も多いのだが、おすすめするのは躊躇してしまう、もったいない作品。隠れた名作ソゲー。
あらすじ
パズルとRPGがドッキング!!
パズルバトルRPG誕生!!
◎個性豊かな妖怪たち
『妖怪道』は、妖怪たちを仲間にして戦うRPGゲームです。
いわゆる「ポケモン式RPG」ですね。
となると、まず気になるのはどんな妖怪が登場するのかでしょう。
登場する妖怪は100種類以上で、「カッパ」や「ろくろくび」など、どれも昔から日本で語り継がれてきた妖怪たちです。
しかし、そのデザインがとっても個性的。
今日の妖怪のデザインは、“鳥山石燕”さんや“水木しげる”さんの影響を色濃く受け継いだものがほとんどだと思いますが。
この世界の妖怪たちは、大本の特徴を最低限はおさえつつも、かなりオリジナリティーの高いものとなっているように感じられます。
こんなビジュアルの「ろくろくび」も珍しいのではないでしょうか?
なので、「こんなの●●じゃない!」と感じる妖怪好きの方もいらっしゃるとは思われます。好みの大きく分かれるところかもしれません。
しかし、私は思うのです。
「妖怪」という存在は、ヒトの“恐怖”や“願望”、“畏敬の念”など「人間の思い」が生み出すものだと言えるのではないかと。
であれば、時代や地域によって、その姿かたちが違っても不思議ではないんじゃないでしょうか。
どこか現代チックな『妖怪道』の妖怪たちは、そんなことを考えさせてくれる姿かたちをしていて、これはこれで私は好きです。
また、妖怪たちはそれぞれ「まほう」を使えるのですが……。
……(そこは“ようじゅつ”とかではないんかい! と思ったり、それも時代なのかなと思ったり……)。
そちらも妖怪が使うものとして独特なものが多く、エフェクトも凝っていて個性豊かです。
さらに、道中で遭遇する妖怪たちは道具を駆使して戦うものもおり、その戦い方にも個性が見え隠れしています。
◎特徴的なバトルシステム
前述の通り、『妖怪道』は「ポケモン式のRPG」です。
しかし、そのバトルシステムもまた、かなり特徴的です。
この手のRPGゲームは、ターン毎に「たたかう」などの選択肢(コマンド)から行動を選択し、あらかじめ装備した武器や体得した技、道具などを駆使して戦う“ターン制コマンドバトル”が主流だと思います。
しかし、このゲームはその中核に「パズル」要素が盛り込まれています。
ざっくり説明すると――。
あらかじめ「こうげき」や「ぼうぎょ」などの“札”の比率を決めておき、バトルではランダムで出てくる“札”の中から毎ターン行動を選びます。
そして、隣接した同種の“札”は同時に消費され、その数に応じて攻撃の威力が増減したり、“まほう”を使うためのMPがタメられたりします。
「パズルバトルRPG」という意味では、スマートフォン向けアプリゲームの『パズル&ドラゴンズ』に近いかなと思います。
あちらが2012年にリリースされたのに対し、こちらは2002年発売です。
10年越しに流行った「パズルバトルRPG」……。
感慨深いですね……。
◎独特な世界観
『妖怪道』というゲームタイトルやパッケージデザイン、妖怪の種類からは“和風”な世界観に思えますが……。
このゲームは大正や昭和を彷彿とさせる、「近代日本」的な世界が舞台となっています。
戦争の足音が近づいてくる、どこか不穏な空気が漂う近代を舞台に生きる、「人間と妖怪の微妙な距離感」が好きです。
後、なぜかヒロイン的な女の子が多数登場し、どことなくギャルゲーチックな雰囲気も漂っています。
そして、無駄に豪華なエフェクトが“ある部分”に集中しています……。
よくも悪くもひと昔前といった空気感でしょうか……(笑)。
ストーリーそのものはとても単純で、「薄く単調」な感が否めませんが……。
臭わせる程度の重いテーマ性や、妖怪や登場人物の個性的なデザイン、それらが織り成す独特な雰囲気に「深い味わい」があるタイプのゲームです。
ストーリーの進行に合わせて、町の住人などのセリフが頻繁に変わる作り込みも個人的には好きなところです。
「MOTHER」シリーズのような、言葉にし難い魅力の溢れるセリフや小ネタが満載といった感じではありませんが、むしろ普通の人たちの純粋な声という感じがあって、あれはあれで好きです。
×妖怪を仲間にする困難さ
100種類以上もの個性豊かな妖怪たちを仲間にすることが出来る、というのはこのゲームの大きな魅力の一つだと思います。
しかし、その妖怪がなかなか仲間になりません。
このゲームでは、ポケモンのようにプレイヤーが能動的に捕獲するのではなく、道中に出てくる妖怪を倒すと低確率で仲間になりたがるという受動的なシステムを採っています。
しかし、その確率が非常に低い!
――1つのマップで2~4時間ねばったりしたレベル(孵化厳選かな?)。
集めるためには妖怪と何度も戦うことになるのですが、このゲームは1回の戦闘に時間がかかりがちなので、苦行と化します(詳しくは後述)。
その上、かなりのマップではボスを倒すと妖怪が出現しなくなります!
なので、とりあえず先に進んで、クリアー後にゆっくり妖怪を集めるということも出来ません。
にもかかわらず、妖怪の種類は非常に多いので、必然的に一つのマップに出てくる妖怪の種類も多くなります。
ボスまで一直線に行っていたら、遭遇しない妖怪もたくさんいることでしょう。
――今回は再プレイだったのですが、各所で「ここにこの妖怪が出るの?!」とびっくりしました。
また、ゲーム内には妖怪を交換してくれる場所があるのですが、妖怪ごとに交換して貰える妖怪が決まっています。
そして、おそらくこの交換でしか手に入らないレアな妖怪も存在します。
なので、ネットが発達している昨今のゲームならいざ知らず、攻略本もないマイナーレトロゲームでは、どの妖怪は見逃していいのかまずわかりません。
さらに、交換に出す妖怪のレベルによって貰える妖怪が変わるパターンもあり、レアな妖怪ほど交換に出す妖怪のレベルが高くないと別の妖怪と交換されてしまいます。
にもかかわらず、このゲームはレベル上げが非常に大変です(後述)。
ただ、これだけなら「コレクションはやり込み要素」と考えて、もったいないなぁで済ませられる気はします……。
あくまで“相手は妖怪”だし、そんな簡単に仲間になってはくれないというのも頷けます……。
×煩わしくなるパズルバトル
パズル要素が中核を成すという斬新なバトルシステムも、このゲームの大きな魅力の一つでしょう。
しかし、パズルを用いたRPGが『パズル&ドラゴンズ』の登場まで流行らなかったのは、そのゲームバランスの調整が非常に困難だったからなのかもしれません。
そんな風に思わせられる要素が、このゲームにはあるのです。
まず、パズルで戦うので、どうしても1回の戦闘が長引きやすい傾向にあります。
運によっては戦闘が短く済むこともありますが、その逆もしかり。
しかし、マップ上でランダムに遭遇する妖怪の出現率は高めです。
そうなると、必然的にバトルが煩わしくなり逃げたくなります。
すると当然、レベルが低いまま進むことになってしまいます。
それでも運が絡むパズルゲームなので、よほどのレベル差でない限り粘ればボスを倒して進めてしまいます。
小学生の頃の私はそうやって終盤まで行き、クリアすることを諦めました……。
×育成は修羅道、終盤は鬼
このゲームに登場する個性豊かな妖怪たちには、何種類もの属性があります。
つまり、「ポケモンのタイプ相性」のように「相性ゲー」の要素があるのです(ぶっちゃけ属性関係ない通常攻撃で戦う方が楽だけど……)。
そんな多種多様な妖怪たちを、集めるだけでなく育てるというのも、このゲームの魅力の一つだと思います。
しかし、このゲームは妖怪の育成に非常に手間がかかります。
前述の通り、1回の戦闘が長引きやすいというのが大きな要因ですが、その割に経験値があまり貰えないのもつらいところです。
当然、バトルシステムの都合上、ながらプレイも面倒です。
また、“札”の組み合わせによって、戦闘中にランダムで出てくる“札”の確率に補正がかかるようなので(たぶん)、組み合わせには注意が必要です。
――ざっくり言うと、ほかのゲーム以上にパーティーの組み合わせに注意が必要。確率補正について特に説明はないので、プレイヤー側の運悪すぎない? と勘違いして沼にハマる可能性がある。
また、終盤のある地点から格段に敵が強くなります。
新しいマップで出てくる妖怪はもちろん、最初の村付近のマップに出てくる妖怪のレベルも格段に上がり、全体的にレベルが底上げされます。
このため、逃げてばかりいてレベル上げを怠っていると、詰んだと言っても過言ではないレベルの苦行へと落とされます。
その強さは、妖怪の種類とパズルの運によっては、レベル差が大きく開いていても一撃で倒されてしまうことがあるほど。
その上、道具を使って妨害や回復までしてくるので、煩わしいことこの上ないです。
こちらも道具をたくさん使えればいいのですが、持てるアイテム数が非常に少ないので(昔のゲームにありがち)、何度もある戦闘でいくつも使えるほどではありません。
道具の種類もまあまあ豊富で面白いので、もう少したくさん持てるだけでもだいぶ違ったと思います……。
総評(最初と同じ)
個人的評価 ★★★☆☆ (3.7)
「人間と妖怪の微妙な距離感」
ストーリーは単純で薄いながら、妖怪のデザインや戦闘システムなどが非常に個性的で深い味わいのあるゲーム。
しかし、普通にプレイするにしても難易度が高く、せっかくの収集要素などを堪能しようとすると修羅道と化す……。
――好きな部分も多いのだが、おすすめするのは躊躇してしまう、もったいない作品。隠れた名作ソゲー。
感想(ネタバレ注意)
【⚠ネタバレ注意⚠】
このゲームは、小学生の頃にプレイして、終盤で挫折した思い出深いゲームです。
「レトロフリーク」を手に入れてセーブデータを複数作れるようになったので、ついに再挑戦してみました。
……(データを消してやり直すのが好きではないタイプ)。
せっかくなので妖怪コンプリートを目指そうと思いましたが、予想以上の難易度でした……。
何時間かけたんだろう……。プレイ時間が見てみたい……。
(つららおんなには、交換で無事仲間になって貰えました)。
そして、念願のクリア。
積年の雪辱を果たすことが出来ました。
ネタバレになるかと思って伏せていた感想を少少……。
ストーリーは「単純で薄い」と記していたのを覚えているでしょうか?
最後はちょっと熱い感じの展開になるだけに、多彩なキャラクターたちの掘り下げがないのは残念でした……。
このゲームをもとに小説とか書いて丁寧に掘り下げたら、ぐっと面白くなりそうだなと思ってしまいます。
……(構想が溜まってるのに、また新しいものを書きたくなってしまう)。
主人公のデフォルトネームが意味深、と思いましたが……。
どちらかというと、こういうことみたいですね。
とはいえ、ここもしっかり掘り下げられそうですが……。
薄いと言えば、作中で悪さをしていた妖怪たちは、ほとんどその目的が不明でキャラも適当だったように思います。
ただ、それについては、そんな妖怪たちのよくわからなさがこの世界の妖怪っぽいなと感じさせてくれる部分もあって……。
「人間と妖怪の微妙な距離感」を感じた一因にもなっています。
「人間と妖怪の微妙な距離感」と言えば、妖怪を仲間にしづらく、育成も難しいゲームシステムもそれですね。
まあ、プレイした感触としては、狙ったというよりゲームバランスの粗の一つに思えてしまいますが(笑)……。
せっかく通信での対戦や交換もできるので、収集や育成のゲームバランスにも気を使って欲しかったですね。もったいない。
ただ、クリアー後にセーブされない仕様や、最終局面まで行くと敵が出現する全マップのBGMが同じになってしまう仕様(バグ?)とかを考えると、あのゲームは「終わるもの」として作られていたのかもしれませんね。
とすると……。
個性豊かな妖怪たちに愛着を持って育てるのではなく、とっかえひっかえ仲間になった妖怪にその場だけ力を借りて進んでいくのが、世界観に合ったプレイスタイルなのかもしれません(ポケモンレンジャーみたいな?)。
レベルの高い妖怪をお寺で交換するというシステムも、正にそれとぴったりですね。
「人間と妖怪の微妙な距離感」……。
なんだかんだ私も、最初から相棒だった“かわうそ”以外は基本育てず編成せずでクリアしましたし……。
で、妖怪収集の話なんですが――。
残念ながら妖怪コンプリートは叶いませんでした……。
新たなる雪辱を胸に、年月を積み重ねることになってしまいました。
【攻略】お寺の交換リスト
最後に、妖怪コンプリートを目指して作成したリストを置いておきます。
汚い手書きで申し訳ないのですが、折角なので……。
需要あるかな(笑)?
最後になりますが、この場をお借りして――。
株式会社フウキ様をはじめとする『妖怪道』制作関係者の皆様。
素敵なゲームを、ありがとうございます。
そして、この記事を読んで下さった貴方様。
ありがとうございます。
不快にしてしまっていたら、申し訳ございません。
皆様の人生が幸せなものでありますように――。