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【数学】√3+√11と√5+√8はどちらが大きいか.(後編)

今回は,以下の記事の続きになります.
まだ読まれてない方には,下の記事を先に読むことをお勧めします.

はじめに,問題の確認です.

〈問題〉
二数√3+√11と√5+√8は等しいか.等しくないなら,どちらが大きいか.

前回の記事は,それぞれ根号のついた数のおおよその値を考えてみる,という方法を試しましたが,上手く求まらなさそうだから他の方法を考えてみよう,という提起で終わりました.

今回は他の方法について考えていきます.
どのような考え方が良いでしょうか.

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我々のすべきことは,「二数の大きさを比較すること」であり,
我々の望みは,「二数の大きさが比較できること」だが,
その願望を阻んでいるのは,何といっても”√”だ.憎き根号.

なら,根号を外してみよう.
そうすれば,二数は,整数同士だから比較できるようになるはず.
根号を外すには...二乗すればいい!

(√3+√11)^2=14+2√33
(√5+√8)^2=13+2√40

さあ比較しよう!...と思ったけれども,また”√”がある.この考え方では無理なのか?

いやいや,よく見てみよう.
14+2√33=13+(1+2√33)
13+2√40=13+(2√40)
なのだから,今度は,1+2√33と2√40を比較すれば分かるのでは?

(1+2√33)^2=133+4√33
(2√40)^2=160=133+27
先ほど同じように変形してみたら,今度は4√33と27の比較か.

(4√33)^2=528
(27)^2=729
やっと比較できるようになった!これは明らかに528<729だ.


ところで,”528<729”は何を示しているのか.
一つ前の操作に戻ってみると,(4√33)^2<(27)^2,つまり,
4√33<27
を示しているのに他ならない.

同じように”4√33<27”について考えると,
1+2√33<2√40
を示していたことに気づく.
さらに,”1+2√33<2√40”から,
√3+√11<√5+√8
であることが分かる.


あれ? 我々が知りたかった,

√3+√11<√5+√8

が求まっているではないか!ナンダッテ-(迫真)

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今回の振り返りをしましょう.鍵となる考え方は,
1.A^2<B^2⇄A<B(A,Bは正数.)
2.解法の方向(前向きと逆向き)

1.は二数が正数であれば,大小関係を保存しつつ,変換することができるというものです.今回の問題では,ほぼ全ての場面で出てきました.数学の知識といえば,それまでですが,局所的な鍵と言えるかもしれません.


対して,2.は大局的な鍵と言えるでしょう.私たちは,
「知っていること→求めたいこと」
を解決の過程として,見ています.

しかし今回は,
X(求めたいこと)から始まり,Xから,局所的な鍵によって,
Y(わからないこと)が明らかになり,Yから,局所的な鍵によって,
Z(知っていること)がわかりました.

そして,Zから,局所的な鍵によって,
Yが(わからないもの)から,(わかるもの)に変わり,それによって,
Xがわかるようになりました.

整理すると,
X(求めたいこと)→Y(わからないもの)→Z(知っていること),
X(求めたいこと)←Y(わかるもの)  ←Z(知っていること)
という流れを経ています.

これは我々が考えている「知っていること→求めたいこと」という流れではなく,
(求めたいこと)から逆向きに考えて,
自分の手の届く範囲(知っていること)に帰着させ,
そこから前向きに(求めたいこと)に向かって実行していく,
という流れになっています.


要は,「解決の過程は単純ではない」とか,「いきなり手持ちからスタートするのは難しくて,実際は願望みたいなところからスタートするのでは?」って話ですが,こんな中学生でもわかる数学の内容でも,一般的な内容に通ずることを考えることができるわけです.
ただ,参考書とか,問題の解説みたいなものは,「これがこうだから,こうしてこう!」みたいな前向きな解説しかしていない場合が多くて,それじゃあ,数学の問題も解けないし,(数学であれ一般的なものであれ)問題を解決するための考え方みたいなものも身につかないのだろうなぁと思っています.

こういうのは知識ではあるけれども,「生きた知識」にするには,経験が必要だと考えているので,できるだけ体験してもらえるように,記事を前半,後半に分けてみました.一人でも体験してくれていたら嬉しいです.

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