山本尚意

2022年から融民藝店を承継。 写真と民藝。 https://toworu-mingei.studio.site/

山本尚意

2022年から融民藝店を承継。 写真と民藝。 https://toworu-mingei.studio.site/

最近の記事

阿部眞士さんの仕事

北九州国定公園。明治日本の産業革命遺産として世界遺産登録の引き金となった北九州市の河内貯水池があります。八幡製鐵所の工業用水確保のため、1919(大正8)年から8年の歳月をかけて造られた人造湖で、石積みの堰堤が味わい深い。この綺麗な景色を抜けて進むと祐工窯があります。 元々は陶器の仕事もされていましたが、白磁のもつ生活の中で使う安心感や楽しさなどの魅力から、現在では白磁に絞って作陶されています。 阿部さんの白磁の仕事といっても幅は広く、土や釉薬の仕込み、轆轤や型物の成形、

    • 展示会のかたち

      2021年10月、小林融子さんが50年続けた融民藝店最後の展示会は、阿部眞士さんの展示会でした。 そして2023年10月、僕が引き継いだ融民藝店最初の展示会として、阿部眞士さんの展示会を開催させていただくことになりました。 そもそも展示会にどんな意味をつけられるだろうかと、ずっと考えていました。 岡山県民藝振興株式会社在籍中にはたくさんの展示会、催事をさせていただきました。「民藝を振興する」というミッションがあったからです。融民藝店ではどんなミッションをもつのか。 そんな時

      • 引き継がれる民窯の仕事

        「民藝って何ですか?」と聞かれることが度々あります。 僕が聞かれるくらいですから、その言葉を作り出した柳宗悦はどれだけ聞かれたことか。 それについては日本民藝協会のサイトでわかりやすくまとまっています。 そして手元に置いておくならこちらがおすすめです。 タイトル通り本当にわかりやすい。 もちろん柳宗悦の文章(青空文庫でも無料で読めるものも)、志賀直邦さんの「民藝の歴史」などもぜひ。いろいろ知れば知るほどわからなくなる。それはアリストテレスの「知れば知るほど、何も知らな

        • 四方山話

          3月、卒業の季節。うちの娘も高校を卒業します。 出生児に先天性の病気があり、「障がい者」というカテゴリーで育ちました。 今でも毎月病院に通うし、気をつけなければいけないこともあります。ケアも必要ですが、僕としてはそれもこれもこの子の個性だと思っていますし、苦に感じることよりも反対にたくさんの感動を与えてもらったし、学ぶことも多かった。 家族との関わりや時間を大切にしたいと広告撮影の制作会社を辞めてフリーランスになったきっかけでもあるし、今、暮らしや民藝に関わっていることに繋が

          北窯30年

          少し前のことになりますが、 沖縄、読谷山焼北窯の30周年記念式典に参加する機会をいただきました。 読谷山焼北窯とは、松田米司さん・松田共司さん・宮城正享さん・與那原正守さんによって、1992年に共同窯として開窯した窯で、13連房という巨大な登り窯で普段使いの沖縄の焼き物を作り続けています。 融民藝店を開業した小林融子さんは元々沖縄の名工、金城次郎氏と交流があり、次郎さんから「楽しみな若い作り手がいる」と言われたことからご縁が始まったようです。沖縄までの道中、ゆっくり無理せ

          繋ぐ

          2021年12月31日。 倉敷美観地区で50年続けられた小林融子さんの最後の営業でした。 小林融子さんは、1963年に岡山天満屋に入社しました。 すぐに岡山県民藝振興株式会社に配属となり民藝に関わり約8年。当時の奨農土地株式会社(融民藝店の大家さんです。)の社長である原玄太郎氏に、「民藝店を倉敷でやってみないか。」と声を掛けられたそうです。 岡山県民藝振興株式会社社長の杉岡泰氏の大きな支えもあり、1971年、開店に至ります。 それから50年。周りまわって今度は僕に「融民藝店