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クロアチア戦を前に、1分46秒ください。

キックオフまで、残り1時間21分の22:39。
ふと、僕に記憶の中で、最も古いワールドカップを振り返る。

ワールドカップを、というより、
「グループリーグ敗退」が決まった直後に、
グランドに数分横たわり、天を見上げたライオンの姿を、思い出す。

中田英寿は、当時の僕の全てだった。

幼少期、僕は彼に彩られた。

保育園の頃の写真は、大体ソフトモヒカンだし、
「7」に憧れたし、
もちろんユニホームも買った。

勝っても負けても、
プレーも立ち居振る舞いも、ライオンであり続けた彼の姿に惹かれた。


「サッカー日本代表 中田英寿選手が現役引退を発表」
と、楽しく見ていたはずのバラエティ番組で、速報テロップが上部に映されたとき、
もう、どうしていいかわからなくて泣きじゃくった。
(その日、父も母も出張で、遠方から祖母が来てくれていた。サッカーを全く知らない祖母のそば、泣けるはずもない番組で、突然孫が大号泣をするのだ。驚いたってもんじゃなかっただろう。笑)

さあ、
僕が伝えたいのは、ここからだ。


別に、僕のヒデへの愛を語りたい訳じゃない。

僕がその時に思ったことは、
「ヒデ自身が、『こいつと一緒にプレーしたかった』と、
引退したことを後悔するくらい、スーパーな選手になってやる。」
だった。


小学3年生の時、
初めて、具体的なイメージを持った夢を抱いた。

おそらく、本当の意味で「夢のために」出発したのが、
その日だった、気がする。


ただ、25歳になった僕の現在地を確認して、
どうやら残念ながら、その夢は叶わなかった。

うん。

叶わなかったんだ。

2018年ロシア大会までは、
いや、めちゃむずいけど、サッカーを続けている限り、可能性は0じゃないと、信じていた、21歳だった。

でも、なんだか初めて、
「『当事者』でない自分を認めて観ているワールドカップ」であるに気づくと、
強烈に寂しさを感じる。


時間は早い。
とにかく早い。

待ち遠しいはずの1ヶ月先までの長さよりも、
中田英寿の引退から今日までの「16年」という道のりの方が、はるかに短く感じる。

もっとやるべきことがあったはずだ。
もっと、求められたはずだ、いろんなことに。

やめてしまったストレッチの習慣。
逃げ続けた球際。
メッシよりも守備をする気がなかった、勘違い。
早めに始めておけば良かった筋トレ。
先輩にビビって萎縮したトレーニング、試合。
たくさんやってしまった、「今日はいいや」

今大会の、ドイツ戦、スペイン戦で抱いた、その鮮明な夢へのイメージは、ずっと抱き続けていい、忘れてはダメだ。

ただそれは、簡単な道のりではなく、中途半端に「没入」してしまうほど、
儚く「アルバムのたった1ページ」へとなってしまう。

その道のりは、決して無駄ではないよ、間違いなく。
素晴らしいチャンス、出会いに、巡り合った。
そしてそれらは、僕の人生を今でも豊かにしてくれている。

でも、「あの日抱いた夢」を叶えられたか、という基準には、
達することはできなかった、ということだ。

もし、当時の僕と同じようなレベルの夢を抱いたのなら、
僕みたいな失敗はしないでほしい。

君たちが、その夢を叶えたいというならば、
いつでも「僕の失敗談」を語って差し上げよう。
正直、これまで行ってきたどんなトレーニングよりも、
「僕の失敗談」を君たちに話す方が、君たちの夢への貢献度は高いかもしれない。
(トレーニングを疎かにしていると言う訳じゃない、至って全力です。)

もう一度言う。

「あの日」からの時間は、
今日から1ヶ月前よりも
あっという間だった。

さあ、もうキックオフまで40分。
今から目の当たりにする姿になるためには、どんな日常を積み上げることで成し得るのか、それを想像することで、道のりが少しでも鮮明に見ることができたら、、、。


僕は、いろんな後悔を噛み締めて、今夜の歓喜を祈る。


頑張れ、日本。

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