見出し画像

文章レビューの健全なやりかた

文章を書くときに限りませんが、何かを作るときには「成果物のレビュー」というプロセスを必ず通すと思います。誰もが経験する、大事なプロセス。

ただ、レビューってけっこう難しいと思うんですよね。やりかたを誤ると、納得感無くただレビュアーのフィードバックを反映するだけになったり、否定的なフィードバックに落ち込んだりということが起こります。そうなると、いい文章にならないだけでなく、チームのモチベーション低下にも繋がったりします。

私はプロダクトのUIやヘルプを書くライターチームで仕事をしています。その関係で、人が書いたコピーや文章をレビューする機会が多くあります。もちろん私自身も、何かを書いたら関係者やほかのライターにレビューしてもらいます。なので、レビューを「受ける側」と「する側」の両方の立場になります。

その経験をもとに、「文章のレビュー」を健全で効果的なものにするための要素について、私が考えていることを書きます。

レビューは成果物の間違いを正す場ではない

まず、レビューの目的について。
レビューの目的を「成果物の不備や間違いをレビュアーが正す場」と捉えると、非建設的なレビューになりがちです。

一般的にレビューは、経験のある人、スキルのある人など、先輩格の人が担うことが多いでしょう。それが影響してか、レビューが「レビュアーがその豊富な経験をもって成果物の間違いを正してあげる場」と捉えられてしまうことがあります。最悪の場合、叱責のような攻撃行為が行われたり。そういう経験、ありません?

レビューを受ける側の人も、なかなか一発OKが出ずに悩んだり、自信を失ってしまったりする人がいたりする。

そんな必要はまったくない。「レビュアーに指摘されたことに気付けなかった私はダメなやつだ」と思う必要もない。別に、レビュアーのほうが能力が優れているわけじゃない。私はレビュアーの立場になることが多いですが、自分が書いた文章をほかのメンバーにレビューしてもらうと、やはり多くの指摘を受けます。

レビュアーは優位な立場にあるんですよね。レビュアーは、レビュイー(レビューを受ける人)が考えたことと、その成果物(文章)を引き継いで、それに自分の思考をプラスするのだから。思考のスタート地点が違います。企画を作るときに、あらかじめ叩き台が用意されていたほうがアイデアが出やすいのと同じこと。

レビューの目的は「レビュアーと協力して成果物をブラッシュアップすること」。そのように位置付けて行ったほうが良いです。レビューに出すコピーや文章は、完璧である必要はなくて、あくまで叩き台。

レビューで他者視点を得る

レビューで他者の視点を得ることで、文章はブラッシュアップされます。

「知の呪縛」と呼ばれたりしますが、ライターは書いている内容について自分が詳しいために、相手も同じくらいに知っていると勘違いして書いてしまうことがあります。つい、相手がわからない表現や説明を書いてしまう。呪縛という表現のとおり、そのことにライター自身ではなかなか気付けません。

レビュアーの視点を借りることで、知の呪縛から逃れます。「この文章は本来言いたいことと別の意味にも受け取れるよ」「今回の想定読者には、この言葉は伝わらないんじゃないか」など、他者視点で文章を眺めてもらいます。

より良いレビューにするための工夫(レビュイーの立場から)

レビューをより効率的で効果的なものにするために、私が普段意識していることを書きます。まずは、レビュイー(レビューを受ける人)の立場から。

早めにレビューに出す
仕事は80点を100点に仕上げるのに時間がかかります。100点にするために多くの時間をかけてウンウン唸って、レビューでまったく別のアイデアが出たりしたら、時間のロスが多すぎます。80点を意識して、早めにレビューで意見を出し合ったほうが効率的。

記事のような長い文章を書くときは、アウトライン(見出しの構成)が出来た段階で一度レビューに出したほうがいいでしょう。記事全体を書いたあとで構成から変えるのは大変。

前提を伝える
コピーや文章の土台となる前提をレビュアーと共有します。
前提とは、次のもの。
・コンセプト(どんな人に何を伝えたいか)
・書くにあたって調べた情報

この前提についての認識がレビュアーとレビュイーでズレていると、噛み合わない議論になってしまいます。

考えたことを伝える
どういう理由でその文章や表現を選んだのか、どんなことに迷ったか、他にどんな案があったかなど、執筆中に考えたことをレビュアーに伝えます。レビュアーは、その考えを引き継いでアイデアを出すことができるようになります。
良くないのは、レビュアーの意見に対して「いやいや、ここは、これこれこういう理由でこの言葉を選んでるんですよね」と、あとから伝えること。それ早く言ってよ。。となってしまう。

より良いレビューにするための工夫(レビュアーの立場から)

ロジカルに理由を言えることだけをフィードバックする
ロジカルに理由を説明できないような指摘は、第三者から見たらどちらでも良いレベルなことが多いです。「この記事のターゲットは初心者なので、製品用語の補足説明が必要じゃないか」など、理由を添えてフィードバックします。

代案も添える
NGを出すときは、「こういう文章はどうだろう?」と代案をも添えます。レビューは、レビュイーとレビュアーが互いにアイデアを出し合って、文章をブラッシュアップしていく場です。レビュイーが一方的に考えるのではなく、互いに案を出し合いながら、より良い文章を探っていくのが良いレビューだと思います。

フィードバックを反映するかどうかはライターに任せる
レビュー時のコメントを反映するかどうかはライターの判断に任せて、反映の有無をレビュアーに知らせる必要もなくしたほうが良いと思います。そうでないと、「あまりいいアイデアとは思えないけど断りづらいから」という理由で反映するという、生産性のない作業になりがち。

いいね!と思ったこともフィードバックする
否定的なフィードバックしかないレビューは、それがどんなに正しいフィードバックであっても、ネガティブな感情を招きます。小さなことでもいいので、いいなと思ったこともコメントしましょう。ポジティブなフィードバックも重要。

言われたほうは単純に嬉しいし、学びにもなります。その後のレビューのコミュニケーションも滑らかになります。また、フィードバックを反映した結果、良かった要素まで削ってしまう、という事態も防げます。

おわりに

レビューのやりかた次第で、成果物は目に見えて変わります。チームのモチベーションにも大きく関わってくると思います。

レビューの悩みはライターにとって「あるあるネタ」だと思いますし、私もより良いレビューのやりかたを探っているので、このnoteを読んでいただいた方がレビューで工夫していることがあれば、シェアしていただけると嬉しいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?