ユニバーサルタクシーがそんなにユニバーサルデザインじゃなかったという話

膝が痛くて歩けないという父を通院させた日のこと。

入所していた施設から借物の車いすで病院へ。
施設から病院までは歩いて5分強だから、押して歩こうと思い、行きはそうした。

仕事で経験があるので、屋外で車いすを押して歩くこと自体は何とかなるんだけど、路面のわずかな段差や凸凹を通過する振動でさえ父の痛む膝に響くようで、さすがに不憫になり、帰りはタクシーに乗ることにした。

配車アプリを使い、ユニバーサルタクシーのJPN TAXIに車種指定をして来てもらった。

2020のインバウンドを見越して設計されたユニバーサルタクシーは車いすでの乗車も想定されているんだから心強い。

と、信じていた。

が、残念ながら、残念な感想になった。

車いすでの乗車という観点からしたら、全くユニバーサルデザインではないのだ。

到着から発車までの流れを記す。
①到着し、運転手が降りて、運転席を一番前までスライド
②助手席ドアと助手席側後席スライドドアを開け、助手席シートをタンブルで前方に格納
③助手席側後部座席の座面を跳ね上げて後方にスライド
④運転席側後部座席の座面を跳ね上げ
⑤助手席下にあるスロープ1を設置
⑥ハッチバックを開けてスロープ2を取り出し、⑤のスロープ1に連結、各所固定
⑦車いすの乗客を乗せ、車内で前方を向くように方向転換してブレーキをかける
⑧車いすの両車輪と床をそれぞれベルトで固定
⑨車いすの乗客にシートベルトを装着
⑩運転席側後部座席の座面を戻す*同乗者の乗車はここ
(11)運転席を戻して運転手乗車→準備整えて発車

メーカーの説明動画を見たから間違いない。
動画では所用時間約4分半ほどとなっていた。
しかし、路上で他の走行車輌や歩行者、自転車に配慮して、さらにはそこまで慣れない作業を確認しながらだし、客として待っているという心理的な部分も含めれば5分以上に感じた。

晩春の薄曇りだったからよかったけど、灼熱の真夏日や凍える真冬日、あるいは雨降りだったりしたらますます辛かろう。

車いすに配慮することがユニバーサルデザインではないんだけど、モビリティに最も制約があるのが車いすユーザーであることを考えると、ユニバーサルタクシーと呼ぶには余りにもお粗末だ。

もちろん、従来のセダンタイプと比べればマシではある。
しかし、セダンとミニバンの間なサイズ感も、車いすで乗ると狭く感じる(車いすがなければだいぶ広いけど)。

また、歩道から直接アクセスできるようにと側面から乗車するスタイルとしたが、狭い歩道では歩行者や自転車の邪魔になるし、車いすの転回スペース確保のために、場合によっては歩道から離れて停車する必要もあり、そうなると車道でも邪魔になってしまう。
さらに、日本の道交法に合わせて車内で転回して前を向かなければならない。その分行程も増える。

ニューヨークのイエローキャブに採用されたNV200のユニバーサルタクシーは、ミニバンタイプで車いすの乗車は後ろのハッチバックから。
車いす乗車を想定した福祉タイプの車輌としては一般的で、キャリーケースの搭載にも活用できる。

でも、今の日本でのユニバーサルタクシーの主流はJPN TAXIである。
だって、トヨタだから。

NV200が採用されにくいのは日産車だから。

実にくだらない。

本気でユニバーサルタクシーを設計するなら、メーカーのメンツよりも利用者の利便性を優先してほしい。

車いすの方と車での移動をお考えの方、JPN TAXIは避けた方がいい。
かと言ってNV200タクシーは少ない。
福祉タクシーを予約するか、福祉車輌をレンタルする方が確実。
コストはかかるけど、車いすユーザー、介助者双方の精神衛生を考えると、現時点ではその方がベター。

そして、そんなところだけ見ても、やはり日本の社会はまだユニバーサルデザインではないのだ。

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