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藤沢奈緒
2020年8月27日 09:45
もういいよ。信じてくれなくても、感謝なんてしなくても。そんな目で私を見ないで。以前の私を思い出させないで。今の私をありのままに軽蔑してくれたらいい。その方がずっと。今度こそ終わりにしたいと思った。私をまだ尊敬していると、真剣な顔で訴えてくる林野さんの、その言葉がつらくていつもの調子ではぐらかそうとした。それでもと訴えかけてくる姿があんまり汚れなくて、眩しくて、憎らしくさえ感じた。
2020年8月23日 07:29
尊敬する選手は后野《きみの》アリサ先輩です。入部後の初顔合わせ、そう挨拶した時の想いは今も変わっていない。私が中2の時、テレビの向こうで活躍する姿に一発で心を奪われ、この学校まで追いかけてきた。「あ、あん、はっ、いい! すごいのぉ! この体位しゅきぃ!」スマホ画面の中、あられもない格好で奇声を連発する姿。胸も腿も、全身すっかりだぶついている。まだアスリートのイメージはかろうじて保
2020年8月20日 12:06
私ひとりを呼び出すために、監督はわざわざ部員全員のグループチャットを使う。ふたりのスマホが同時に通知を知らせ、同室の瑞穂が息を飲むのが分かった。寮のあちこちでそれぞれに時間を過ごしていただろう仲間たちにも、同様の表情が浮かんでいるのがたやすく想像できる。「あー、ここのところ続くなぁ。き、昨日もあんなにしてあげたのに」精一杯おどけた風に言って立ち上がる。どうせ来るのだろうと練習着から着替