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友人・知人と一緒に起業するときの注意点(3)

前回の記事はこちら

なお、本記事は、小職が参加する士業団体「南森町スタートアップ・ラボ」(MSL)が2020/10/20 18:00-に開催した無料ウェビナー「MSL#3_友人・知人と一緒に起業するときの注意点〜創業者間契約ってなに?〜」の共同発表成果に大きく依拠しています。MSLの先生方ありがとうございました。

連載第1回で提示した事例をもとに、株式会社イソノ、カツオ、ワカメ、タラの身に何が起きるのかを解説していきます。

タラが株式会社イソノの株主として居座り続けると、何が起きるのか。。。?

さっそくみていきましょう。


株主総会が機能しなくなるおそれ

タラは、株式を保有し続けるものの、株式会社イソノの運営に一切興味を失い、会社の運営に参加しなくなる可能性があります。

たとえば、会社の最高意思決定機関である、株主総会に参加しなくなる恐れがあります。

株主総会を有効に成立させるためには、発行済株式の過半数を有する株主が出席をする必要があります(会社法309条)。よく「定足数」といったりします。

会社法
(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。


たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。

CASE1
タラ(持株比率20%)は、なんとしても株式会社イソノの事業を妨害しようと考えた。
そこで、タラはワカメ(持株比率31%)に連絡し、カツオが宴席でワカメの悪口をいいふらしていたと告げ口した。
ワカメはカツオに協力する気がなくなり、タラの助言に従い、来週の定時株主総会に出席しないことに決めた。

ワカメもタラも株主総会に出席しない、となると、上記の定足数(発行済株式の過半数をもつ株主の出席)をみたさないことになるため、そもそも株主総会で何も決議をすることができなくなります。

たとえば、どんな会社でも毎年必ずすることになる決算書の承認決議すらできなくなります。


さらに、出席したうえで妨害するということも考えられます。

CASE2
タラ(持株比率20%)は、なんとしても株式会社イソノの事業を妨害しようと考えた。
そこで、タラはワカメ(持株比率31%)に連絡し、カツオが宴席でワカメの悪口をいいふらしていたと告げ口した。
ワカメはカツオに協力する気がなくなり、タラの助言に従い、タラと一緒に来週の定時株主総会に出席して、会社の提案にすべて反対票を投じることにした。

ワカメとタラの議決権をあわせると51%で過半数となりますので、出席したとしても、ふたりが協力すればありとあらゆる議案を否決することができます。株主総会では出席した株主の議決権の過半数の賛同がなければ、何も決めることができないのです。


さらに。。。

CASE3
CASE2の株主総会の席上で、カツオは、ワカメとタラを説得し、マスオキャピタルから5000万円の出資を受け入れるために、第三者割当増資による新株発行を決議したいと懇願した。

スタートアップでよく必要となる、出資を受け入れる際の決議(第三者割当による新株発行の決議)は、普通決議事項ではなく、特別決議事項、すなわち、出席した株主の議決権の2/3以上の賛成がなければ、決議することができません(会社法309条2項)。

(株主総会の決議)
第三百九条 
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。
五 第百九十九条第二項、第二百条第一項、第二百二条第三項第四号、第二百四条第二項及び第二百五条第二項の株主総会

カツオ単独では、普通決議(過半数)すら通せないのですから、もちろん特別決議をできるはずがありません。いくらマスオキャピタルが魅力的な条件で出資をしたいといっても、この出資を受け入れることはできません。


このように、いくらすばらしいプロダクトやサービスができあがっても、創業株主が空中分解してしまうと、会社の機能が完全に麻痺してしまう可能性があるのです。


この話はまだまだ続きます。


今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家の皆さんを応援しています。

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