福島民報サロン6/26掲載

「海外生活」

私には約一年ドイツで過ごした経験がある。専門学校を出てパティシエとして働いていたが、漠然と海外で生活してみたいと思うようになっていた。なぜお菓子の本場フランスではなくドイツを選んだかというと、ドイツ菓子に惹かれていたからだ。専門時代はフランス菓子の勉強が主だったが、ウィーン菓子やドイツ菓子も習った。その時に食べたドイツ菓子がとても美味しく印象的だった。
当時はケーキ屋巡りも大切な勉強だと言われていたので放課後や休日にケーキ屋を何件もはしごしていた。一日に数件まわるので途中でマクドナルドのポテトをはさみ、気持ち悪くなりながらも若さで乗り切った。大体関東圏で200件は行った。
その中でドイツ菓子の店に行ったことは無かった。ショーケースに並べられているケーキの中にドイツ菓子を見つけることはあっても専門店はなかったのだ。そんな経験があったので「海外生活してみたいし、ドイツのお菓子屋さん行きたいからちょっと行ってみるか」みたいな軽い気持ちで渡独した。
ワーキングホリデービザを使って行くつもりが、私がちんたらしていたせいでビザ申請が間に合わず観光ビザで入国することになった。アメリカ、韓国、グアム、ハワイなど行った経験はあっても一人での海外は初めてで、勿論入国審査で引っかかる。何語で話されても私は日本語しか話せない。中学まで習った英語はなんの役にも立たなかった。私の必死さが伝わったのか無事に入国できて本当に良かった。
海外生活はそんなに華やかなものではない。日本語しかできない私が携帯を買う、銀行口座を開く、住む場所を見つける、交渉する、何もかもが大変であった。そして一番大事なことを皆さんもお気づきだろうか?
そう、私は観光ビザで入国しているんです。そこから役所の外人局に行きビザの申請をするんですが、証明写真を撮るだけでも一苦労ですし、どんなに書類を揃えていても一発でとれるわけもなく出直してこいと帰されます。
渡独して2か月が過ぎ3度目のチャレンジで、なおかつミュンヘンのサッカーチームが勝った翌日朝一番を狙って申請に行きようやくビザを取得した。
語学学校に通っていたので、ドイツ人以外の友達も出来た。アメリカ・オーストラリア・ベトナム・インド・ロシア・ウクライナ・スペイン・イタリア、色んな人種と文化があって世界は成り立っていた。それを肌で感じてきた。みんないい人ばかりで今でもInstagramやFacebookで繋がっている友達もいる。こういった経験も今の私をつくっている。意見が違ってもいい、色んな考えがあるのが当たり前、そこからまた視野を広げて建設的に進めていければいい。娘は自分の意見を言うのが苦手で相手の気持ちを察してしまうので、私は常々「自分の意見を言うことは悪いことではない。あなたはあなたのままで良いんだ」と言っている。
ドイツではミュンヘンを拠点にして生活していた。オーストリア・チェコ・オランダ・ベルギー・イギリス・フランスを旅した。国内も5か所ほど行ったが心残りは国内をもっと旅したかったことだ。
だがそれはまた人生の楽しみにとっておこう。

双葉郡楢葉町、おかしなお菓子屋さんLiebe 横須賀

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