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初日のカンパイ

アメリカ人の友人との、2週間の日本旅行の様子を書いています。



羽田に到着したのは午後だった。

私の飛行機は1時間近くも遅れたし、サラは私より30分前に着くはずだった。
日本への入国はびっくりするくらい簡単で、あっという間に到着ゲートを出たけど、その時にサラの飛行機も遅れていたことを知ってひと安心。

その20分後には、彼女の変わらない姿を到着ゲートから出てくるのを見つけた。5年ぶりの再会。
おもいっきりハグをした。
喋り出すとキリがない私たちなので、話はこれから2週間、ゆっくりたっぷり喋ろうね、と換金や、携帯WiFi、JRパスをまず受け取りに行った。
私はカリフォルニアから11時間半、サラは乗り継ぎも含めてノースカロライナから18時間の旅だった。
ホテルに着いたら荷物を置いて、二人でゆっくり、日本での初めのカンパイをしたい。それが初日のゴール。

寝っ転がって花見するお地蔵さん達、見つけた。広島・宮島

JRパス引き換えの受付は長い列だった。

桜の時期、円安もあって、海外からの観光客は多いと聞いていたけど、ここでしみじみと実感。
英語だけでなく、スパニッシュ、ジャーマン、フレンチ、様々な言語が聞こえてくる。何を喋っているのかは分からないけれど、その言葉の持つサウンドがあるから。
日本語、ってどんなサウンドなんだろう? 私が日本語を知らなかったら、この言葉はどんな風に聞こえるのだろう、
そう、いつも思う。

さっそくJRパスを使って、モノレールに乗り、東京駅を目指す。

隣に座るサラの仕草や、眼差しが、スローモーションのように動いていくのに、気がついた。
彼女の青い瞳が捉える先を、私も見ていた。
5歳の頃から、行ってみたい、と思っていた日本に今、いる。
彼女にはどんなふうに、ここが映っているのだろう。

川沿いの桜の木々を窓の向こうに見るとき、私はなるべくこの光景が続けばいいのに、と願った。
これからの2週間、この桜の花を、行く先々で何度も見ることになるとは、その時には思わなかった。
今年の桜は早いよ、見逃すかもね、と こちらに来る前に言われていたから。

私たちは、時々、目を合わせて笑みを交わす以外は、ほとんど無言でモノレールに揺られていた。
彼女の中であったかいものが溢れているのが伝わってきた。
「来てよかった。」
そう思った。
そして、その言葉は、この旅が終わる最後まで私の心の中で繰り返された。

ホテルでチェックインを済ませて、再び歩いて東京駅内で食事をしに出掛けたときには、すでに7時半だった。

お互い、飛行機の中でも眠れなかった~と言っていたのに以外と元気。

ぶらぶらと、日本で最初の食事の場所を吟味していたとき、目に留まったのが一夜干しが推しの居酒屋。
次の日からは、東京の友人がセッティングしてくれた、江戸前寿司や、カニすき懐石、加賀懐石のご馳走が待っている。だから、その、気取らない居酒屋の席に座った時、私はサラに言ったのだ。

アメリカ人が、「日本食、大好き!」とか言うでしょう?でもね、スシや、すき焼きや、天ぷらだけを食べて、日本食が好き、って言われるのは、なんかもやっとするのよね。ハレの日の料理だけじゃなくて、ふだんのゴハンこそが日本食よ!

アツく語る私にサラは、

分かった!食は、文化、何でもトライするわよ。

そう言って、私たちは、アジと、イカの一夜干しを前にして、日本で最初のカンパイを生ビールで交わした。
記念すべきモーメントだった。
この日を迎えるために、去年の11月から計画してきたのだから。
いや、実際18年前に出会ったときから、知らないところでこの旅は計画され続けていたのかもしれない、な~んてね。

他に注文したのは、まぐろの山かけ、からしレンコン、出汁巻き玉子、貝の酒蒸し。
酒のツマミにはもってこいの、実は私の好きなものばかり。サラにとっては初めて食べるものばかり。でも、食べることは大好きで、色んな国を旅行してきた彼女の味覚はかなり広いんだな、と改めてこの食事で確信した。(からしレンコンだけはお代わりしなかったけどね)。

この旅で、サラが練習したのは、うどんや蕎麦をすすって食べることや、汁物を直接、お椀から飲むこと。いづれもアメリカではマナー違反だから、初体験なはず。
お箸は練習しても、どうしても使えないのだといつもフォークを頼んだ。
アメリカの日本食レストランでは、フォークがあるのは当たり前だけど、日本では、場所によっては、子供用の小さいフォークしか置いてない。それで上手に食べているのが可笑しかった。

サラが恋したトロロうどん


時差ボケで、きっと私たちは翌朝早く、目が覚める。
6時過ぎには、ホテルを出て、都内のお寺を訪ねることを約束して、それぞれ部屋に戻った。

ビール、美味しかったなぁ。








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