忙しさの質
「忙しい」という言葉は、「仕事が充実している」と同義と捉えられることが多くて、とくにフリーランスになってから「もう忙しくて」と言うとたいてい「それはいいことだ」と返されるようになった。
実際に30代前半までは、忙しいかどうかは仕事の混み方次第だった。
でも今は、塾や習い事に通う小学生児童の母親として、また親が高齢になってきたことによっても、わたしの毎日は忙しい。仕事だけ見れば、少なくとも自分のキャパシティにおいては忙しいうちに入らない。そんな程度の仕事量でも、子どもと親のためにバタバタ走り回る時間が加わると、バリバリと自分のやりがいだけで働いていたときに匹敵するほど忙しく感じるし、心配事はもっと多い。同じ「忙しい日々」でも、その質が、今と十余年前ではずいぶん変わったなと思う。
かつては忙しいだけ収入も増えたものだったが、なぜか今はお金にならない、むしろお金が出ていくことばかりで忙しいことにも気づいている。そんな愚痴を家族や友人にもらすと、「じゃあ、昔と今、どっちがしあわせ?」と聞かれる。そんなとき真剣に考えてみると……答えは「今がしあわせ」なのだ、驚いてしまうことに。
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暮らし・仕事・おしゃれ・健康を題材としたエッセイ(平均2000字)が28本入っています。
2021年11月発売のエッセイ集『ただいま見直し中』(技術評論社)に収録されたエッセイの下書きをまとめました。書籍用に改稿する前の、WEB…
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