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耳鼻科とあんこ

コロナ禍の前から、極力病院へは行かずに健康を維持することに、けっこうこだわっていたつもりだった。

それなのに、あろうことか、これほど感染者数増加に怯える状況にもかかわらず、病院通いをしている。
不調が出ているのは、耳。内耳がむくみ、音がこもっているように感じるのだ。毎日というわけではなく、日によって症状は出たり出なかったり。

医師の話でも、ネットで調べても、原因はストレスや睡眠不足による疲労。現在のわたしの生活を振り返ってみれば、心当たりしかないので、とりあえずは、夜まとまった睡眠がとれない日はなるべく翌日の昼間に仮眠をとるようにして、病院で処方されたむくみをとる漢方薬を飲み、1週間後、病院で聴力が回復しているかどうか検査する。
今週行ったら、先週と反対の耳の聴力が落ちてしまった(先週落ちていた方は回復していた)ため、「漢方はもう少し続けて、一応来週も来てみてください」と言われてしまった。病院は基本的に行きたくないという姿勢につき、なんとか2回でケリをつけるつもりだったのに、3回目も行くのか……その日にたまたま調子が悪くて検査の結果がよくなかったら、どうするんだろう。やだなぁ。

いろいろ読んでいる中学受験本でも、小6の秋から冬、入試時期までの間は、心労から親が体調を崩すケースも多いようだ。
話題になった『下剋上受験』のお父さんはうつ病の薬を飲みながら受験に挑んでいたし、もう一冊、その内容に共感するあまり、最後は本に頬擦りしながらお礼を言いたいほどだった本『偏差値30からの中学受験合格記』の著者・鳥居りんこさんも、長男の受験前は耳鳴りを発症したと書いてあった。
本のなかでりんこさんは、信頼する耳鼻科の先生から「受験が終わったらウソのように治るから楽しみに待ってて」「多いんだよね、この時期、そういうお母さん」とあしらわれていたが、わたしの場合、初めてお世話になる耳鼻科で、その先生に「子どもの中学受験を控えたストレスでしょうか」なんて聞いてみることもできず、言われるままに次回の予約をして、隣の薬局で漢方薬をもらい、せっせと飲み続けている。

体を癒す甘み

さらに、自律神経の乱れを治してリラックスするためにと、医師からカフェイン摂取を禁じられてしまったのだが、これがけっこうつらい。
今、大好きなお酒を絶っていることは以前書いたが、

お酒が飲めなくてもコーヒーがあれば!ってくらいに、コーヒー大好きなのに。でも耳がボワンとふさがっている感じはやっぱり気持ち悪いので、医師からOKが出るまで我慢するしかない。カフェインNGってことは、紅茶も緑茶も飲めないから、もう白湯かハーブティーしかない。なんか妊婦時代を思い出してしまう。

そんななか、いま無性に、もう文字通り、無性に!ってほど、 体が欲しているものが2つある。それが、あんこと柿。

とくにあんこは、ないないづくしでかわいそうなわたしを慰めようと、夫が用事で出かける前に「食べたいもの買ってきてあげるよ。何がいい?」と聞いてくれたので、「うーん、なんか甘いもの。でもクリームとかじゃなくて、和菓子がいいかなぁ」と答えたら、豆大福を買ってきてくれた。それを一口食べた瞬間、「まさしくこれよ、これ! 体がずっと欲していたものは!」とはっきりわかったくらいに、ストライクなのだった。

あんこはもともと好きだけど、いわゆる「あんこ好き」と呼ばれる人みたいに年がら年中食べたいわけでもない。でもなんか、今はとにかく、あんこなんだなぁ。たぶん疲れたり、イライラしたり、それを癒す甘みがあんこなんだろう。
そういえば、産後しばらく実家に帰っていたときに、母が「母乳が出やすくなるから」ってあんこの和菓子をせっせと食べさせてくれたっけ。当時は、「ふーん、そうなんだ」って深く考えもせずに食べていたけれど、あれも疲労回復、滋養強壮のためのあんこだったのか、ということが今わかった。

食欲は体の声


一方、柿はというと。
こちらももともと大好きな果物だけど、今の欲し方は明らかに例年とは違い、やはり、無性に!食べたいのだ。なんでかなと思ったら、柿は利尿作用があり、体のむくみをとる効果が高い。ということは、内耳のむくみという不調を水分を排出することで改善しようとしている、まさに体の声が柿を食べたいという食欲につながっているのではないか、と思い当たった。

まぁでも、泣いても笑ってもあと2ヶ月。
きっと終わったらウソのように元気になるだろうと確信はしていて、今の体の不調は、入試が迫っている以上、それに向けて残された時間で何とかできることはやりたいとがんばっている以上、そしてわたしが更年期に差しかかった女性である以上、どうしようもないわけだ。
それに、いずれこの中学受験を振り返ったとき、その渦中はしんどくても、ジタバタともがいた日々の方がきっと味わい深く、おそらく他人様にとってもおもしろいものだろう(これは中学受験記の本の一読者として思う)。だからこそ、いずれこの日々をまとめるかもしれないときのために備忘録として書いておこうと思ったのであって、ご心配には及ばず、です。

最後に、『偏差値30からの中学受験合格記』について。
刊行された年(2003年)が信じられないくらい、今読んでも圧倒的なリアリティ、普遍的な面白さ。
わたしは幸運にも地元の古本屋さんで見つけることができたのだが、絶版なんてもったいなさすぎる。紙がむずかしいなら電子版でぜひ復刻を!
思うように成績が上がってくれない、いつまでものんきで受験生モードにスイッチが入らない、そんな中学受験生のわが子を相手に悩む親御さんを元気づけてくれる、ありがたい本です。


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