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ニューヨークでネットショッピングしたら3割は盗まれる

Amazonをはじめとしたネットショッピングは、コロナ禍でますます伸びている。多くの業界が業績を落とす中で景気の良い話である。

私も日頃からネットショッピングで日用品から嗜好品までさんざん散財しているが、ニューヨーカーにはこのネットショッピングにまつわる“ある共通の悩み”がある。なんと注文したものが日常的に盗まれるのだ。まったく冗談じゃないが、これが本当の話だから泣ける。

一体誰が盗むのか

そもそもなぜ宅配便が盗まれるのか。それはニューヨークの宅配が、対面で受け渡す仕組みになっていないからである。日本の場合、配達員は毎回チャイムを鳴らし、在宅であればそのまま手渡し、不在であれば不在通知を残すか宅配ボックスに入れるのが一般的だ。従って宅配便が紛失したという話はほとんど聞いたことがない。

アメリカの他の州は知らないが、ニューヨークではそんなご丁寧なことはしてくれない。アパートにコンシェルジェがいない場合、在宅している・していないに関わらず、荷物は一階の適当な場所に適当に置かれているだけである。自分の部屋の前にすら置いてくれない。つまりアパートのすべての部屋宛の荷物が一箇所に置かれ、その中から自分のものを探して持ち帰るシステムなのだ。他人の荷物も取ろうと思えば取れる。

ところでニューヨークの街なかには自動販売機がないが、これは自販機をぶっ壊して中のお金を取る人がいるからである。そんな国で荷物を一箇所に置いておくとどうなるだろうか。もちろん盗まれまくる以外の展開はないに決まっている。

私もマンハッタンに住んでいた時は少なくとも二回やられた。アパートの玄関はオートロックのため、犯人はアパートの住人である可能性が高く、泥棒と同じ家に住んでいるのかと思うと二重にうんざりさせられた。

怪しいのはアパートの住人だけとは限らない。残念ながら日本と比べると配達員の民度も低いため、そもそも配達員に盗まれて、荷物がアパートに到達していない可能性すらある。その前の集荷センターの従業員だって疑わしい。ニューヨークでは、宅配便はすべてのステージをクリアしないと受け取れないゲームなのだ。

奪われた荷物を取り返せ!

そうか、ニューヨークでは宅配便がよくなるんだな、残念! と納得している場合ではない。注文した品が届かないのだから、真正面から苦情を申し入れる必要がある

私も、ある日失われた小バエホイホイを取り戻すためにAmazonに連絡した。小バエホイホイをなんの目的で盗むのかまった理解に苦しむが、犯人は別に小バエホイホイが欲しかったわけではなく、そこにあった荷物を適当に盗んだだけであろう。窃盗が気軽な感じで行われていることにも腹が立つ。

そういうわけでアメリカのAmazonのサイトにあったチャットから通報したのだが、彼らの対応に度肝を抜かれた。チャットはBot(自動応答システム)が対応していたのだが、

Amazon:問い合わせの目的はなんですか?
私:荷物が届かない
Amazon:どうしたいですか?
私:再送して欲しい
Amazon:わかりました。再送手続きを完了しました。お問い合わせありがとうございました。

という僅かなやり取りの末、30秒程度で再送が手配された。なぜ届かないのかとか、本当に届いていないのか確認しろとかそういったやり取りは一切なく、瞬時に再送を決定し会話を終わらせたのだ。物凄い企業である。小バエホイホイは数ドルだったため、Amazonが高価な商品に対しても同様の対応をするとは考えにくいが、単価が安かったとしてもこんなことを日々繰り返していたら相当な損失のはずである。

一節によるとニューヨークにおける宅配便の盗難率は3割を超えるとも言われており、私の同僚も感覚的にそのくらいだと言っていた。Amazon以外の企業にも似たような対応をされたので、どの企業も盗難時の補填は織り込み済みのようだ。商売でこんな費用を計上するのが普通だなんて、まさかそのせいで物価が高いのかと疑いたくなる。

荷物を盗まれない方法

残念ながらそんな素晴らしい方法があるのなら、盗難なんて起きていないというのが実情である。唯一の防衛策は、コンシェルジェが荷物を管理するアパートに住むことだ。私はそのような環境に引っ越してから一度も盗難に遭っていない。アパートによって異なると思うが、うちの場合はコンシェルジェが宅配業業者の荷物を一括で受け取り、番号管理している。自分が荷物を受け取る時は必ずコンシェルジェに手続きをしてもらわないとならないため、コンシェルジェが悪人でない限り荷物が盗難される可能性はほぼゼロになった。

以前のコンシェルジェなしのアパートでは、荷物が置かれていそうな時間帯にいち早く確認に行って自分の分を取るくらいしかできることがなかったので、非常に快適にストレスなく過ごすことができている。

他にも、コンシェルジェのいないアパートに住んでいた私の同僚は「なにを注文してもアパートの奴らに盗まれる」と嘆き、タンスを職場に届けてもらっていた。オフィスから苦労して持って帰るほうが盗まれるよりマシというわけだ。本当に無用の努力をさせられている。

中には泥棒が酷い目に遭うように、自作の仕返しボックスを仕掛けるアメリカのエンジニアもいたりして、その様子を収めた動画が結構面白い。このエンジニアもすごいが、そもそも気軽に盗みを働くヤツがどれだけ多いか、ぜひ見て頂きたいと思う。日本はまだまだ平和だ。


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