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ニューヨークの街はゴミ箱

挑戦的なタイトルにしてしまったが、先に断っておくと私はニューヨークが好きだ。だが「嫌いなところを一つ挙げてください」と聞かれたら、迷うことなく「ゴミが多いところ」と答える。物価の高さも治安も一旦置いておいて、とりあえず街を綺麗にしろよと言いたい。

とにかくゴミがそこら中に散乱しているのだ。汚いったらありゃしない。食べ残しも、空き缶も、スタバのカップも、よく分からない布切れも、全部堂々と道に捨ててある。シンガポール人の同僚が「ニューヨークはマジでゴミみたいな街だよな」と吐き捨てていたが、確かあの国はゴミのポイ捨てに対して罰金が課されるはずだ。そんな清潔な故郷に比べると、ゴミが占拠するニューヨークの道の光景は地獄のように映ることだろう。私にもそう見える。

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よくある道の光景。ここはゴミ捨て場ではない。写真には写っていないが、10m以内にゴミ箱が2つあった。

安倍元総理じゃないが、日本はとてつもなく美しい国だ。少なくとも物理的には。塵一つ落ちていないとは言わないが、ニューヨークに比べれば無菌室と言って良いと思う。しかも地下鉄サリン事件以降、町中のゴミ箱は限りなく撤去されている。それなのに“ポイ捨てが多いな”と感じたことはほとんどないのだから、日本人は本当に綺麗好きだと感心する。

ニューヨークにはかなり多くのゴミ箱が設置されている。具体的には1ブロックに必ず一つはある。いや、もっとあるだろう。数分歩けば必ずゴミ箱に行き当たるので、食べ歩きや飲み歩きをしていてもゴミの処分に困ることがない。美しい街づくりに大きく貢献し得る素晴らしい仕組みだと思うのだが、不思議なことにあまり役に立っておらず、満杯になっているわけでもないゴミ箱のすぐ横に食べ残しが折り重なっていたりする。ゴミをゴミ箱に入れる能力すら欠如している人が多いのだろうか。まったく理解に苦しむ。

コロナ禍にニューヨークに戻った私は、マンハッタンが以前にも増して薄汚くなったように感じた。実際、コロナの影響でゴミ収集の頻度が減っており、それによってゴミが増えたようだ。今年はかつてないほど清潔にすることが求められているというのに、真逆を行くとは恐れ入る。こんなんだから感染者数が減らないのでは?と嫌味の一つも言いたくなる。

当時家探しをしていた私は、“ゴミが多い”という理由だけでマンハッタンに住む気が一気に失せていた。ゴミが多いと見た目に悪いだけでなく、そこかしこから悪臭がし、ただ歩いているだけで吐き気を催す時がある。特に気温の上がる夏場は最悪で、街中に下水のような匂いが漂っている。申し訳ないがこんなところに住めたもんじゃない。

そう思いブルックリンを候補地に加えたが、なんとブルックリン最大の繁華街であるウィリアムズバーグもコロナ禍にゴミ箱と化していたのだった。ウィリアムズバーグと言えば日本でいう下北沢や表参道のような、とにかく若者向けのお洒落で楽しい街なのだが、以前に比べ明らかに道端のゴミの量が増えていた。マンハッタンは前から汚いなと感じていたが、ウィリアムズバーグはまだそこまで酷くなかったので結構ショックだった。

そんなわけで、結局私は新興住宅街であるロングアイランドシティに住むことに決めた。開発途上の街でまだまだ人が少ないため、比較的道が綺麗なのだ。「これからもっと開発されて便利な街になるから、楽しみにしてて」とアパートの管理会社の人が言っていたが、ゴミが増えるならこれ以上開発なんてされなくていいと内心思っている。

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