ニューヨークのコロナ対策
2020年ほど“未曾有”という言葉がふさわしい年もないだろう。毎年大規模な災害は世界のどこかで必ず起きるものだが、全世界的に経済活動がここまで停滞した例はないのではないか。しかもまだまだ明るい兆しは見えず、この先どうなっていくんだろうと不安しかない。もしかすると、もう二度と自由に海外旅行に行けないかもしれない。過去を羨んで生きていくのは辛いなと思う。
ニュースで散々報道されている通り、アメリカの感染者数は日本とは比較にならないほど多く、原因も分からないままだ。現時点での日本の累計感染者数が16万人である一方、アメリカは既に1,500万人を突破しているのでまったく次元が違う。人口比は1:3くらいなので、アメリカの数字がいかに突き抜けているか分かるだろう。
秋にニューヨークに来てまずはじめに私が感じたことは、“意外とコロナ対策してるんだな”ということだった。失礼ながら、何もしないノーテンキな人が多いのかと勝手に思っていたのだが、それは日本と同じく一部の人だけで、大半の人は非常に気を遣って日常生活を送っているのが現状だ。
まずマスクの着用に関しては日本より厳しい。感覚的には、夏場に東京でマスクをしている人が60〜70%くらいだったが、ニューヨークでは95%以上の人がしている。マスクをしていないと入れない店が多く、これは建前ではなく本当に追い出されてしまう。また、地下鉄とバスでマスクを着用していない人には50ドルの罰金が課される。ちなみにニューヨークの公共交通機関は地下鉄とバスがほぼすべてなので、マスクなしでは移動もままならないということになる。さらにマスクの着用方法も厳しく指導されており、地下鉄には“正しいマスクの着用方法”という注意喚起のポスターがあらゆるところに貼ってある。友人とレストランに行った際、友人が鼻出しマスクをやっていたら「鼻を出さないでください」ときっちり注意されていた。
スーパーなどの小売りでも、入店人数制限や間隔を空けての列並びを普通にやっている。コロナを深刻に捉えている人が多いので、列に並んでいる時に必要以上に間隔を詰めようとすると「後ろに下がってもらえますか」とお願いしてくる人も多い。個人的にはアメリカに来てからのほうが、余程周囲に気を配るようになった。
レストランも通常通りには営業していない。アメリカのレストランにはインドアとアウトドアという二種類が席があり、インドアは屋内の席、アウトドアは屋外の席のことを指すのだが、インドアは9月末まで一切営業を許可されていなかった。しかし、それだと元々アウトドア席を持っていないほとんどのレストランが潰れてしまうため、そのようなレストランも道路を利用して新しく席を作って良いというルールになっている。道路の幅が狭い日本ではなかなか生まれない発想だが、アメリカの道路は比較的広いため写真のように頑張れば路上に席を作ることができる。通行人や車がすぐ横を行き来するため食事に集中できず、正直まったく理想的な食事環境ではないが、デリバリーや持ち帰り以外で営業する方法はこれしかなかったので、多くのレストランはこれで対応していた。ちなみに冬になって寒くなったらどうするつもりなのかとずっと疑問に思っていたが、11月末頃にこの路上席の周りに木の板で続々と壁ができあがり、今は路上に小屋が立ち並ぶという不可思議な光景になっている。
他にも、映画館はニューヨーク市内では未だにクローズしているし、ブロードウェイのショーは来年6月まで再開しないことが決まった。9月末にようやく再開したレストランのインドア席も、今日再び禁止することが発表された。せっかく人生ではじめて異国の地で生活しているが、まったく満喫できていないどころか、ろくに外出もできていないのは残念である。私はまだアメリカの病院かかったことがないため諸々の仕組みがよく分かっておらず、そういう意味でも絶対にコロナにはなりたくないので、しばらく引き篭もり生活が続きそうだ。
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