バーチ(Baci):イタリア土産の定番、ペルジーナ(Perugina)社のベストセラー・チョコレート
1. イタリア版キスチョコともいうべきバーチ
イタリア人は、親しい人に向けたメールや手紙の最後に「タンティ・バーチ」(Tanti baci)という言葉を使う。
日本の敬具にあたる表現で、「沢山のキスを、愛を込めて」というニュアンスを持つ。
イタリア語のバーチ(Baci)という単語は、「キス」を意味する。
そんなバーチという名前がついたチョコレートがイタリアにはある。
キスチョコといえば、アメリカのハーシー社製のキスチョコ(Kisses)が思い浮かぶかもしれないが、それとは別物である。
キスチョコよりだいぶ大きめサイズのバーチは、中を開けると小さなメッセージ(oracolo)が入っており、その歴史は古く1922年に誕生した。
今回のnoteでは、バーチの歴史とフレーバーを紹介をしていきたい。
2. バーチとペルジーナ社の歴史
バーチの製造元、ペルジーナ社(Perugina)は、1907年にペルージャにて創業した。
もともと砂糖菓子の製造所として、フランチェスコ・ブイトーニ(Francesco Buitoni)、レオーネ・アスコリ(Leone Ascoli)、フランチェスコ・アンドレアーニ(Francesco Andreani)、そしてアンニバッレ・スパニョーリ(Annibale Spagnoli)とルイーザ・スパニョーリ(Luisa Spagnoli)夫妻 によって生まれた会社である。
1917年にはカカオパウダーを売り出し、これがヒットしたせいかどうか、1919年にはイタリアでペルジーナ第一号店を出店した。
しかし当時は第一次世界大戦(1914-1918)の影響が色濃く残る時期。
ヨーロッパ全土に甚大な被害を与えたこの戦争により、ペルジーナ社だけではなく、イタリア全土が物資不足に陥っていた。
このような困難な時代の中、創業者の一人ルイーザ・スパニョーリが、自身の名をつけた「タヴォレッタ・ルイーザ」(Tavoletta Luiza; "tavoletta"は小板の意味)を1921年に売り出し、特許を獲得した。
そしてついに翌年の1922年、バーチの原型となる「カッツォット」(Cazzotto)というチョコレートをルイーザが開発した。
イタリアで生産されたヘーゼルナッツ(ノッチョーラ:nocciola)のペーストの上にヘーゼルナッツを一粒のせ、チョコレートでコーティングしたもの、それが「カッツォット」であった。
これは、カカオ豆の不足をイタリア産のヘーゼルナッツで補おうとすることで生み出された工夫である。
ところが、カッツォットとは、イタリア語でゲンコツを意味するため、お客さんは、お店で「ゲンコツをください」(Per favore, un cazzotto?)と言わねばならない。
そこ理由もあってか、1924年にはキスを意味する「バーチ」という名前に変えられ、今に至るまで使われ続けている。
(右半分がバーチ)
大ヒットしたバーチに対し、1927年の新聞は次のように伝えている:
「わずか5年で、ペルジーナ社は、1億個のバーチを売り上げた。そして今日に至るまでその勢いは続いている。」
その後も今にも伝わるペルジーナ社のロングセラー商品であるバナナ・ペルジーナ(Banana Perugina; 1925〜)、リウ(Liù;1939〜)が次々と生まれた。
さらに、世の中に第二次世界大戦の暗い影が忍び寄る中、1939年、ペルジーナ社はニューヨークに店舗をオープンさせ、世界的に有名なチョコレートメーカーへとなっていった。
第二次世界大戦後、イタリアは奇跡の復興を遂げた。
イタリアが好景気に沸く中、1955年、ペルジーナ社は、「贈るだけではなく、(自分も)食べることのできるチョコレート」ということで、大衆に向けた市場を開拓していくことになる。
さらに1968年、バーチに青い星をつけるデザインを採用した。
こうして今も続く銀の生地に青いロゴと星というデザインが完成したわけである。
1988年にはネスレ社の傘下に入るものの、激動の20世紀を歩んだペルジーナ社は、1997年、ペルージャに「ペルジーナ歴史博物館」(il Museo Storico Perugina)をオープンさせた。
2007年、ペルジーナ社創業100周年を記念して工場見学ができる「チョコレートの家」(La Casa del Cioccolato)が設立された。
さらに「チョコレートの学校」(Scuola di Cioccolato)も併設しており、職人からその作り方を習うことができるようになっている。
以上のように、長い歴史を持つペルジーナ社であるが、ここで様々な種類のバーチを見てみよう。
3. バーチのフレーバー紹介
3-1. バーチ(Baci)
現在展開しているフレーバーは次の6種類。
① ミルク(英: ミルク/ 伊:Latte Avvolgente)
②③クラシカルダーク・ルイーザ(伊: Classico Fondente Luisa/ 英: Classico Fondente Luisa)
④限定販売 ルビーカカオ(英・伊:Limited Edition)
⑤ダーク 70% (英: Extra Dark 70%/ 伊: Fondentissimo 70%)
⑥ホワイト (英: White/ 伊: Bianco Armonioso)
一番よく見かけるのは、銀紙に包まれた定番の①だと思われるが、甘いホワイトチョコやミルクチョコから、甘さ控えめカカオたっぷりのダークまで豊富なラインナップである。
またルビーカカオブームに触発されて開発されたルビーカカオ味は、可愛らしい見た目でフルーティーなピンク色のチョコレートでコーティングされた一品である。
3-2. バーチ以外にも気軽に購入できるチョコレート
これらのバーチの他、ペルジーナ社製のタブレットタイプのチョコレートもイタリアのスーパーマーケットや菓子店で購入することができる。
例えば、ダークチョコレートがベースのペルジーナ・ネーロ(Perugina Nero)、ロングセラーのバナナ(Banana)とリウ(Liù)。
ミルクからハイカカオまで様々な種類があるタボロ(Tabolò)。
因みにこのタボロは、小分けになっていて食べやすい薄さのタブレットチョコレートであり、厚みとボリュームがあるタブレットチョコレートが主流のヨーロッパではありがたい存在。
またドライフルーツやナッツがたっぷりのったレ・リチェッテ・クレアティヴェ(Le ricette creative)。
その他、写真には収めていないが、様々な種類のチョコレートがある。
イタリアならではのお土産として、歴史あるメーカーのペルジーナ社のチョコレートを是非お勧めしたい。
ペルジーナ(Perugina)
ペルジーナ社公式HP: perugina.com
ペルジーナ公式Instagram: @perugina
バーチ公式HP: baciperugina.com
バーチ公式Instagram: @baciperugina
チョコレートの家(Casa Cioccolato)
住所: Viale S. Sisto, 207/C, 06132 Loc. San Sisto, Perugia, Italy
開館時間: 9:00-13:00 / 14:00-17:30(月曜から金曜まで)、10:00-16:00(土曜日)
※1月10日から2月4日までの土曜日は閉館。
※6月と7月の月曜の午後は予約のみの受付。
入場料: 9ユーロ(通常料金)、7ユーロ(13歳から17歳まで、65歳以上、10人以上のグループ、お身体の不自由な人の付き添いの方)、4ユーロ(6歳から12歳まで)、無料(5歳とお身体が不自由な方)
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