コヴァ(Cova):ミラノ最古のカフェ、スカラ座との深い関係
1. 1817年創業、ミラノ最古のカフェ・コヴァ(Cova)
モンテナポレオーネ通り(Via Monte Napoleone)に位置するカフェ・コヴァ(Cova)。
2019年秋に日本の銀座と渋谷にも店舗がオープンし話題になったが、その本店は、ここミラノにある。
参考:
コヴァの歴史はとても古く、創業は1817年。
(入り口に施された洒落たロゴ)
おそらくコヴァは、ミラノで一番の老舗カフェ・バールである。
1810年代とは、フランス革命(1790年代)、ヨーロッパの地図を瞬く間に塗り替えたナポレオンの時代(1790年代後半から1800年初頭)、そしてナポレオンの失脚を経て、ヨーロッパ全体でその勢力図を再構成しようとしていた時期である。
ウィーン会議(1814-15年)では、ナポレオン以前の状態に各政体を戻す「国際ルール」が確認されたのであった。
そんながミラノに誕生したのは、そんな激動の時代であった。
創業当初、コヴァはミラノのスカラ座の前に建てられていた。
その頃の様子は、コヴァのコーヒーカップの絵にも描かれている。
マンゾーニ通りから見たスカラ座、馬車や徒歩で移動する人々、そしてその右脇にあるのがコヴァである。
この繊細な絵は、創業当時の19世紀のコヴァとスカラ座を物語るものである。
またコヴァには、19世紀当時より、多くの文化人が通い、社交の場となっていた。
さらにコヴァは、ガリバルディによる国家統一運動(リソルジメント)の機運が1860年代にかけて高まり、ようやくイタリアという「国家」が誕生した瞬間も、スカラ座の側で見つめていたのであった。
2. 第二次世界大戦後、モンテナポレオーネ通りへ移転
ところが第二次世界大戦によって、スカラ座脇の店舗は消失してしまった。
今のモンテナポレオーネ通りに移転したのが1950年、まさにイタリアが戦災から奇跡の復興を遂げた時期である。
さらにコヴァは、1993年、香港進出を皮切りに、ドバイ、モナコ、北京、上海、深圳、台北、台湾などアジアを中心に国際的に店舗を展開するようになった。
(イタリアのバールには大抵シャンデリアとカウンターがセットであるが、コヴァのシャンデリアは特に豪華である)
2013年には、LVMHグループの傘下に入った。
参考:
時代の変化に柔軟に対応してきたコヴァであるが、ミラノの本店は、今もなお、朝のコーヒーから夕方のアペリティーボ、そして美味しいお菓子とイタリアの伝統的な味をそのクラシカルで豪華な空間で提供し続けているのである。
3. 贅沢な空間をリーズナブルに楽しむ方法
すでに東京のコヴァを利用したことがある人は、その値段設定の高さを知っているかもしれないが、ここミラノではリーズナブルにコヴァの味を楽しむことができる(かくいう筆者は、東京のコヴァを利用したことがないがHPでその値段を確認した)。
ミラノのコヴァのテーブル席は、このように落ち着いた雰囲気でとても高級感があるが、実はカウンターでの立ち飲みの場合の料金は意外にも安く設定されているのである。
カウンターでエスプレッソ1杯を頼んだ場合、1.3ユーロ。
カプチーノならば1.8ユーロである。
日本のスターバックスより安いではないかと拍子抜けである。
モンテナポレオーネ通りという立地もあって、このコヴァのカウンターには毎日多くの人々がコーヒーを求めて訪れる。
また一口サイズのパスティチーノ(Pasticcino)は、基本的に1つ1.5ユーロ。
こちらはクリームがたっぷり詰まったローマ発祥のお菓子マリトッツォ(maritozzo)3-4.5ユーロ。
その他、朝食の定番ブリオッシュやクッキーなども揃っている。
秋には季節のお菓子マロングラッセも。
甘いものだけではなく、サンドイッチやパニーニなど軽食やランチになるものもショーケースに並んでいる。
これらのフードもテーブル席で食べると、飲み物と合わせてうっかり10ユーロ以上になってしまうが、カウンター席で頼むと手頃な値段で食べることができる。
立ち飲み・立ち食いは落ち着かないと思うかもしれないが、イタリアには、そのスタイルで朝食や軽めの昼食、さらには夕方のお酒を簡単なおつまみとともに楽しんでいる人が多いのである。
こちらは筆者が2020年10月に食べた一口サイズのモンブラン1.5ユーロとエスプレッソ1.3ユーロ。
さすが一流店のモンブランというだけあって、中に入っているマロングラッセも絞られたマロンクリームも絶品であった。
こちらも筆者が良く頼む生クリームがたっぷり絞られた一口サイズのシュークリーム1.5ユーロ。
ほんの小さなサイズなのだが、ちびちびと生クリームを食べながら苦いエスプレッソを啜るのが良い。
また前のスマホのデータなので画質は良くないが、これらは筆者が今まで食べたコヴァのパスティチーノたち。
一つ1.5ユーロとお手軽なので、毎回試せるのだが、本当良く食べたよねという感じである。
さらにコヴァの店頭のショーウィンドウでは、季節ごとに凝ったお菓子の飾り付けがなされる。
こちらはハロウィンのものであるが、その他、クリスマスやバレンタインなど要チェックである。
その他、コヴァでは、コンフィチュールやチョコレートの詰め合わせなど、お土産用のお菓子も販売されている。
ミラノの伝統的なクリスマス菓子パネットーネは、秋口から店頭に並ぶ。
こちらは思わず撮影したチョコレートの塔。
高級ブティックが立ち並ぶモンテナポレオーネ通りに位置するコヴァは、その扉からして重厚感があり、入るのと躊躇ってしまうかもしれない。
それでも一旦入れば、カメリエーレはにこやかで一流のもてなしをしてくれ、とても和やかな雰囲気が漂っている。
まずは「ウン・エスプレッソ ペル・ファボーレ。ア・バンコーネ。」(Un espresso per favore. A bancone;エスプレッソください、カウンター席で)と一杯1.3ユーロのエスプレッソから試していただきたいカフェである(サービスでチョコレート一枚が付いてくる)。
またコヴァは、2020年11月現在、イートインはできないものの、テイクアウトは対応しているようである。
筆者は、再びこのカウンターが使える日を心待ちにしているのである。
コヴァ(Cova)
住所: Via Monte Napoleone 8, 20121, Milan, Italy
電話: +39 02 7600 5599
営業時間: 7:45-20:30(月曜から土曜日)、9:30-19:30(日曜日)
公式ホームページ: pasticceriacova.com
e-mail: info@covamilano.com
Instagram: @pasticceriacova
(写真・文責:増永菜生 @nao_masunaga)
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