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小泉八雲記念館・小泉八雲旧邸:島根県松江市ゆかりの文人の足跡を辿る旅

今回のnoteでは島根県松江市ゆかりの文人、小泉八雲記念館小泉八雲旧居を紹介していきたい。

なお記念館の方は、ライブラリーとエントランス以外撮影不可だったので、写真は少なめ、公式ホームページの情報を参照しつつ記述を進める。

1. 小泉八雲記念館

1-1. 小泉八雲の生涯
紀行や随筆、民俗学などの分野で様々な作品を残した、島根県松江市ゆかりのラフカディオ・ハーンこと小泉八雲(1850-1904)。

代表作の『怪談』については、一度は目にしたことがある人も多いであろう。

ラフカディオ・ハーンは、イギリス国籍を持ちながらも、当時の日本ではまだ珍しかった国際結婚をし、小泉八雲(以下、八雲と略記)という日本の名前を名乗った。

イギリス国籍を持つと言っても八雲は、アイルランドとギリシアにルーツを持っている上に両親の愛情に飢えた孤独な少年時代を過ごした。

さらに成長してからも目の怪我や、八雲を養育していた親族の破産といった不幸に見舞われた八雲は、心機一転、ジャーナリストととして生計を立てるべく渡米した。

シンシナティやニューオーリンズなどで徐々に分筆家としての腕を磨いていった八雲は、クレオールや日本などの異文化に対して旺盛な好奇心を持つようになっていた。

さらに八雲は、ニューオーリンズで日本文化への造詣を深め、ついに日本に行くことを決意、1890年4月に来日した。

1890年8月、松江の島根県尋常中学校で英語教師として教鞭をとった八雲は、その後も熊本第五高等中学校、神戸クロニクル社と次々と職を得て日本各地を転々とした。

来日から6年が経った1896年には、英文学専門の講師として帝国大学文科大学の教壇に立つようになった八雲。

この頃、日本で家庭を持った八雲は、大学での教職の他にも、文筆家としても翻訳や紀行文など様々なジャンルの著作を生み出した。

ところが1903年、後任を夏目漱石に譲る形で帝国大学を後にした八雲は、翌年の1904年に日本でその生涯を終えた。

1890年より1904年に亡くなるまで松江、熊本、神戸、東京と四つの都市に住んだ八雲。

恵まれない少年時代に左目の失明、さらには赤貧の青年時代と苦労の連続であった八雲にとって、日本は安住の地であったようである。

※参考:「小泉八雲(ラフカディオ・ハーン):Lafcadio Hearn, 1850-1904」『小泉八雲記念館公式ホームページ』



1-2. 小泉八雲記念館の展示:八雲の生涯と作品を行き来する視点

小泉八雲記念館は主に三つのブースから構成されている。

一つ目は、「その眼が見たもの」「その耳が聞いたもの」「その心に響いたもの」というコンセプトのもとに、小泉八雲の生涯を紹介するブース。

二つ目は、八雲の作品や功績を紹介するブース。

三つ目は、特別展のブースである。

記念館の1階にあるこれらの三つのブースは全て撮影禁止だったため、ここでは詳しく紹介できないが、特に小泉八雲の生涯を紹介する一つ目のブースでは、八雲愛用の洋服や鞄、小物なども展示されており、等身大の八雲が伝わってくるような構成であった。


また先に紹介したような苦労の連続であった八雲の幼少期やアメリカでのジャーナリスト時代、さらには来日してからの妻せつとの出会い、家族との団欒も詳しく描かれていた。

そのために、なぜイギリス国籍を持つ小泉八雲が、19世紀末というまだ日本が発展途上であった時期にわざわざ日本にやって来て、日本の風土や伝説をもとに作品を残したのかということを八雲自身の体験や内面から十分に語る展示だと感じた。

作品だけではなく、それを書いた人がどのような経験を経て生きてきたのか、どのような思考の持ち主だったのか。

そのことが分かれば、その作品もより立体的に浮かび上がってくると思ったのであった。

さらに2階へ続く階段を登っていくと、小泉八雲関連の書籍を集めたライブラリーに行き着く。

このライブラリーは撮影OKだったので何枚か写真を撮らせていただいた。

八雲の作品を調べることができる検索サイトも準備されている。

中には20世紀初頭までに刊行されたようなとても古い八雲の著書もあった。

装丁がとても美しい。

これらは館内での閲覧のみのようであるが、八雲のことをもっと知りたければ本を手に取ってみるのがよいであろう。


小泉八雲記念館

住所:〒690-0872 島根県松江市奥谷町322

開館時間:8:30-17:00

入場料:大人410円(20名以上の団体割引320円)、小中学生200円(団地割引160円)

※小泉八雲旧居との二館共通券:大人560円、小中学生280円

※松江城天守・小泉八雲記念館・武家屋敷との三館共通券:大人1100円、小中学生510円

公式ホームページ:hearn-museum-matsue.jp




2.小泉八雲旧居

こちらは小泉八雲記念館に隣接する小泉八雲旧居である。

ここでは写真撮影可能だったので、よく手入れされた日本家屋の写真をふんだんに掲載していきたい。

小泉八雲は、1年3ヶ月ほど松江に滞在した期間のうち、約5ヶ月間をこの家で過ごした。

松江城の付近にはいくつもの伝統的な家屋が残されており、この小泉八雲旧居もその一つである。

英語教師として松江に赴任した小泉八雲は、「武家屋敷に住む」という願望を叶えるべくこの家を家族との住まいに選んだ。

当時、旧松江藩士根岸家がこの家を所有していたが、この家の主人は、たまたまその時、郡長として簸川郡(ひかわぐん、現在の出雲市)に赴任していたため、この家は空き家であった。

また根岸家の人々は、自然の山水をモチーフにこの家の庭を手入れしており、小泉八雲もこの庭に惚れ込んでいたようである。

筆者が訪れたのは11月の晴れた日であったが、ポカポカとした日差しが部屋に降り注ぎ、心地よい空間であった。


また小泉八雲直筆の手紙なども展示されている。

こちらは上のキャプションにあるように160cmと小柄な小泉八雲の体に合わせて作られた机である。

木の窓枠からのぞむ庭の風景はまるで絵画のようである。

小泉八雲はこの家での生活をもとに『知られぬ日本の面影』を執筆した。

日本で育ったわけではない八雲の目には、このように木と紙でできたコンパクトな邸宅は新鮮に映ったのであろう。

晩秋の日差しでちょっと暖かくなった畳の上を歩くのは、なんとも言えず気持ちよかったのであった。


小泉八雲旧居

住所:〒690-0888 島根県松江市北堀町315


開館時間:8:30-18:30

入場料:大人310円(20名以上の団体240円)、小中学生150円(20名以上の団体120円)、外国籍の方210円(大人)・100円(小中学生)

公式ホームページ:matsue-castle.jp


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